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カイウスの話27

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俺の中のなにかが芽生えてきた。

その正体が分からないまま、ライムには内緒にした。
余計な心配を掛けたくない、これは俺自身で解決するべき問題だ。

ライムには笑っていてほしい、それは表でも裏でも揺るがない気持ちだ。

ただ、それ以外の感情が俺を押さえ込もうとしている。

それは、破壊という感情だ。

ライムが一番、ライムしかいらない気持ちは何一つ変わっていない。
ただ、その中でライムを壊したい…壊されたいと思ってしまう。
ライムの笑顔に救われたのに、それを歪ませたくなる。

精霊は大切な存在感だと表は言う、守るべき国民と同じだと…
でも俺はそこまでではない、精霊とライム…どちらかを助けなくてはいけないと言われたら迷いなくライムを助ける、それは表でも同じだ。

でもあの感情は精霊に思考が偏りすぎている。
ライムより自分の激情を優先して突っ走っていた。

ライムには内緒にしていたが、ずっと心の中で見ていた…ライムと俺を…
ライムが不安そうな顔をさせる自分自身が許せなかった。

これも俺の感情なんだと思いたくない、俺はライムを守るためなら全てを消し去っても構わない。
精霊王とかそんなのどうでもいい、表のように上辺だけの正義なんて口にする性格ではない。

俺が出てくる時は、ライムの中の力を暴走させて表が弱った時に出てくる事が出来る。
でも、今出ているカイウスは俺よりも遥かに力が強い危険な存在だ。

だから、出て行きたくても出てくる事が出来なかった。

ライムに名前を呼ばれてやっと出る事は出来た。
表の俺はまだ力が戻っていないのか、心の奥底で眠っている。

俺が全てのカイウスの代わりにライムを守るから一生出てこなくていい。

でも…あの感情は、いつかライムを悲しませてしまう。
そうなる前に、俺は自分の手で…

剣と剣がぶつかり合う音が響いた。

俺の剣はローベルト家の何処かに置いてあるから今は何もない。
だから、氷の剣で目の前の男と戦う。

相手は大剣だけど、俺も常に魔力を送っているから簡単に壊れないようにしている。
人間相手に時間を掛けるつもりはない。
ライムを早くこんなところから連れ出さないと…

先にコイツを殺しとくんだった。
あの暴走は俺でもコントロールが出来なくて、この男を殺すより力を抑える事に集中していた。
そのせいで、また俺達の前を遮りやがって…

この男から精霊のにおいがする、やはり薬を使っているのか。
力が強くなったり、痛みを感じないのはそのせいだろう。

人間が扱えるものではないのに、神は何を考えている。
ライムをここから連れ出しても宮殿に行けなくては意味がない。
宮殿も安全ではないとしても、ここよりはマシだ。

そして、宮殿の門を塞ぐ事が出来るのは…

避けて男の大剣が地面に突き刺さった。
俺は男の首元に剣を当てた。
恐怖も感じないコイツには、それも無意味だという事は分かっている。

男はやはりすぐに動き出そうとして、剣を振り回している。
力任せの動きに見えて、確実に俺の首を狙っている。

羽根を動かして飛ぶと、男の手では届かなくなった。

この男は普通の人間だがこの場にいる兵士の誰よりも強いと思った。
手に力を込めて、男に向かって無数の氷の槍を出した。
誰よりも強くても、俺にとっては脆い人間とそう変わらない。

槍が男に向かって突き刺さり、その場に大量の血が噴き出ていた。
鎧をきていても、俺の魔力には通じない。
ライムにとって危険な存在は俺が消し去る。

だからライムは俺だけを見ていればいいんだ、俺はずっとよそ見なんかしないから…

地面に足を付けると、耳障りな悲鳴が聞こえた。
そんなに怖いんならそこで見ていろ、俺は用事があるんだ…間違っても邪魔はするなよ。

ライムに近付いて、結界を解くと小さく座り込むライムがいた。
肩が震えている、怖い思いをさせてしまったな。
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