141 / 299
助けるために
しおりを挟む
俺とリーズナに真っ暗な影が重なっていき、リーズナを守るように抱きしめる。
今ならまだ間に合う、リーズナをカイウスのところに運ばないと…
でも、目の前の鎧の男が簡単に見逃してくれるとは思わない。
鎧の男は手に持っていた血に濡れた銀色の大剣を振り上げていた
リーズナの傷に触れないように押して抜け出した。
そしてすぐに鎧の男に向かって全身を使って突進した。
怪我をしているリーズナを置いていけない、リーズナを運べる時間稼ぎになればそれでいい。
倒れさせる勢いだったのに、よろける事もしていなくて俺を見下ろしていた。
その瞬間、鎧の男は急に発光して震えていた。
その発光は電流のようだけど、鎧の男に触れている俺には電気は流れていない。
かなり強い電流だというのに、震える手で俺を掴もうと伸ばしている。
でも、筋肉が言う事を聞かないのか俺を掴めずにいた。
今のうちにリーズナを運ぼうと思って鎧の男から離れた。
その時電流が消えてしまい、俺の首を掴んだがまた電気が流れた。
まさか、この電流は俺から流れているのか?なんでいきなり…
リーズナに触れている時はなんて事はないのに、もしかしてこの力はカイウスの…
イヤーカフに少し痛みが走り、指で触れると少し温かかった。
鎧の男は諦めず、俺の首を掴んだままだが電流で指先に力が入っていない。
もう一度突進すれば、動きを止められるけどリーズナをこれ以上放っておくわけにはいかない。
普通人は痛みを感じると、攻撃に躊躇する筈だ。
なのに、まるで痛みを感じないかのような動きだ。
見た目からも強い電流だと分かるのに、いったいこの人は…なんなんだ?
兜の向こうで、真っ赤に光る瞳が冷たく俺を見ていた。
鎧の男が俺を離さなかった手が少し離れた瞬間、さっきまでびくともしなかった体が吹き飛ばされた。
後ろを振り返ると、リーズナを抱えているカイウスがいた。
「カイウス!ごめん、リーズナが…」
「ライムが無事ならそれでいい、それより遅くなって…ごめっ…ぐっ」
「どうしたの!?」
カイウスは俺にもたれかかってきて、苦しげに呻き声を上げていた。
汗を掻いていて、普通じゃないとカイウスを抱きしめた。
カイウスは腹部を押さえていて、そこはリーズナにあった傷と同じ場所だった。
リーズナの傷がそのままカイウスの傷になっているのかもしれない。
リーズナが目を覚さないほどの酷い怪我だ、カイウスも気絶したいほど痛いのだろう。
カイウスに触れても電気は流れない、やっぱり未来のカイウスがもらったイヤーカフが俺を守ってくれたんだ。
今、カイウスと移動するのは難しい…カイウスとの関係を知られるよりカイウスとリーズナの治療が大切だ。
宮殿を思い浮かべていると、カイウスに胸を押された。
突然の事で後ろに下がって、カイウスの名を呼んだ。
しかしカイウスは俺の方を一度も見る事はなかった。
リーズナがカイウスの腕の中から消えるのが見えた。
カイウスの中に入ったというより、光になって消えてしまったかのような不安が残った。
カイウスに腕を伸ばすが、カイウスは腰に下げていた剣を引き抜いて視界からいなくなってしまった。
そのまま穴の中に入ったように、視界が遠ざかる。
瞬きを一つすると、そこにあったのはさっきまでいた宮殿だった。
俺を助けるためにカイウスが宮殿の中に入れたんだ。
今、カイウスは鎧の男と戦っている…酷い怪我をしているのに…
今宮殿から出たらカイウスに迷惑が掛かる、でも今のままだとまたカイウスが…
宮殿の中でなにか出来ないだろうかと一つ一つ探す。
武器がないか探して、探して…何も見つけられなかった。
さすがに料理に使う包丁を持っても仕方ない事くらい分かる。
ちゃんとしたものでないと、止める事が出来ない。
カイウスを助けたいなら確実に助けられるものじゃないといけない。
ここの主はカイウスで、カイウスはそんなものがなくても戦えるから当然と言われたら当然だ。
でも、なにか一つくらいは武器がほしかった…諦めるのはまだ早い。
もう一度、俺は戦いたい…カイウスを今助けられるのは俺しかいないんだ。
「力を貸してくれ、カイウス…」
イヤーカフに触れると、指先になにかが引っかかった。
細いもののようなそれを引っ張ると、イヤーカフが外れた。
それを見てびっくりしたが、俺は希望をイヤーカフに託す事にした。
俺を動かす強さはカイウスを守るためそれだけだ。
宮殿から離れて湖に近付くと、精霊達が湖に集まっていた。
湖に映るのはカイウスと鎧の男の姿で、剣を重ねていた。
カイウスが持っているのは普通の剣だから、鎧の男が持つ大剣と比べれば小さく見える。
しかし、押しているのはカイウスの方で鎧の人物は後ろに下がっていた。
それでもカイウスの傷は癒えず、地面を赤く染めていた。
カイウスが押していても、このままだとカイウスの方が死んでしまう。
瞳を閉じて、強く強く願った。
カイウスのところに俺を連れて行ってください。
未来のカイウスが俺に残してくれたものを握りしめた。
今ならまだ間に合う、リーズナをカイウスのところに運ばないと…
でも、目の前の鎧の男が簡単に見逃してくれるとは思わない。
鎧の男は手に持っていた血に濡れた銀色の大剣を振り上げていた
リーズナの傷に触れないように押して抜け出した。
そしてすぐに鎧の男に向かって全身を使って突進した。
怪我をしているリーズナを置いていけない、リーズナを運べる時間稼ぎになればそれでいい。
倒れさせる勢いだったのに、よろける事もしていなくて俺を見下ろしていた。
その瞬間、鎧の男は急に発光して震えていた。
その発光は電流のようだけど、鎧の男に触れている俺には電気は流れていない。
かなり強い電流だというのに、震える手で俺を掴もうと伸ばしている。
でも、筋肉が言う事を聞かないのか俺を掴めずにいた。
今のうちにリーズナを運ぼうと思って鎧の男から離れた。
その時電流が消えてしまい、俺の首を掴んだがまた電気が流れた。
まさか、この電流は俺から流れているのか?なんでいきなり…
リーズナに触れている時はなんて事はないのに、もしかしてこの力はカイウスの…
イヤーカフに少し痛みが走り、指で触れると少し温かかった。
鎧の男は諦めず、俺の首を掴んだままだが電流で指先に力が入っていない。
もう一度突進すれば、動きを止められるけどリーズナをこれ以上放っておくわけにはいかない。
普通人は痛みを感じると、攻撃に躊躇する筈だ。
なのに、まるで痛みを感じないかのような動きだ。
見た目からも強い電流だと分かるのに、いったいこの人は…なんなんだ?
兜の向こうで、真っ赤に光る瞳が冷たく俺を見ていた。
鎧の男が俺を離さなかった手が少し離れた瞬間、さっきまでびくともしなかった体が吹き飛ばされた。
後ろを振り返ると、リーズナを抱えているカイウスがいた。
「カイウス!ごめん、リーズナが…」
「ライムが無事ならそれでいい、それより遅くなって…ごめっ…ぐっ」
「どうしたの!?」
カイウスは俺にもたれかかってきて、苦しげに呻き声を上げていた。
汗を掻いていて、普通じゃないとカイウスを抱きしめた。
カイウスは腹部を押さえていて、そこはリーズナにあった傷と同じ場所だった。
リーズナの傷がそのままカイウスの傷になっているのかもしれない。
リーズナが目を覚さないほどの酷い怪我だ、カイウスも気絶したいほど痛いのだろう。
カイウスに触れても電気は流れない、やっぱり未来のカイウスがもらったイヤーカフが俺を守ってくれたんだ。
今、カイウスと移動するのは難しい…カイウスとの関係を知られるよりカイウスとリーズナの治療が大切だ。
宮殿を思い浮かべていると、カイウスに胸を押された。
突然の事で後ろに下がって、カイウスの名を呼んだ。
しかしカイウスは俺の方を一度も見る事はなかった。
リーズナがカイウスの腕の中から消えるのが見えた。
カイウスの中に入ったというより、光になって消えてしまったかのような不安が残った。
カイウスに腕を伸ばすが、カイウスは腰に下げていた剣を引き抜いて視界からいなくなってしまった。
そのまま穴の中に入ったように、視界が遠ざかる。
瞬きを一つすると、そこにあったのはさっきまでいた宮殿だった。
俺を助けるためにカイウスが宮殿の中に入れたんだ。
今、カイウスは鎧の男と戦っている…酷い怪我をしているのに…
今宮殿から出たらカイウスに迷惑が掛かる、でも今のままだとまたカイウスが…
宮殿の中でなにか出来ないだろうかと一つ一つ探す。
武器がないか探して、探して…何も見つけられなかった。
さすがに料理に使う包丁を持っても仕方ない事くらい分かる。
ちゃんとしたものでないと、止める事が出来ない。
カイウスを助けたいなら確実に助けられるものじゃないといけない。
ここの主はカイウスで、カイウスはそんなものがなくても戦えるから当然と言われたら当然だ。
でも、なにか一つくらいは武器がほしかった…諦めるのはまだ早い。
もう一度、俺は戦いたい…カイウスを今助けられるのは俺しかいないんだ。
「力を貸してくれ、カイウス…」
イヤーカフに触れると、指先になにかが引っかかった。
細いもののようなそれを引っ張ると、イヤーカフが外れた。
それを見てびっくりしたが、俺は希望をイヤーカフに託す事にした。
俺を動かす強さはカイウスを守るためそれだけだ。
宮殿から離れて湖に近付くと、精霊達が湖に集まっていた。
湖に映るのはカイウスと鎧の男の姿で、剣を重ねていた。
カイウスが持っているのは普通の剣だから、鎧の男が持つ大剣と比べれば小さく見える。
しかし、押しているのはカイウスの方で鎧の人物は後ろに下がっていた。
それでもカイウスの傷は癒えず、地面を赤く染めていた。
カイウスが押していても、このままだとカイウスの方が死んでしまう。
瞳を閉じて、強く強く願った。
カイウスのところに俺を連れて行ってください。
未来のカイウスが俺に残してくれたものを握りしめた。
104
お気に入りに追加
8,081
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
嫌われてたはずなのに本読んでたらなんか美形伴侶に溺愛されてます 執着の騎士団長と言語オタクの俺
野良猫のらん
BL
「本を読むのに忙しいから」
自分の伴侶フランソワの言葉を聞いた騎士団長エルムートは己の耳を疑った。
伴侶は着飾ることにしか興味のない上っ面だけの人間だったはずだからだ。
彼は顔を合わせる度にあのアクセサリーが欲しいだのあの毛皮が欲しいだの言ってくる。
だから、嫌味に到底読めないだろう古代語の書物を贈ったのだ。
それが本を読むのに忙しいだと?
愛のない結婚だったはずなのに、突如として変貌したフランソワにエルムートはだんだんと惹かれていく。
まさかフランソワが言語オタクとしての前世の記憶に目覚めているとも知らずに。
※R-18シーンの含まれる話には*マークを付けます。
書籍化決定! 2023/2/13刊行予定!
役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました
綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜
【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】
*真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息
「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」
婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。
(……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!)
悪役令息、ダリル・コッドは知っている。
この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。
ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。
最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。
そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。
そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。
(もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!)
学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。
そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……――
元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。
【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします
七夜かなた
BL
前世はブラック企業に過労死するまで働かされていた一宮沙織は、読んでいたTL小説「放蕩貴族は月の乙女を愛して止まない」の悪役令息ギャレット=モヒナートに転生してしまった。
よりによってヒロインでもなく、ヒロインを虐め、彼女に惚れているギャレットの義兄ジュストに殺されてしまう悪役令息に転生するなんて。
お金持ちの息子に生まれ変わったのはいいけど、モブでもいいから長生きしたい
最後にはギャレットを殺した罪に問われ、牢獄で死んでしまう。
小説の中では当て馬で不憫だったジュスト。
当て馬はどうしようもなくても、不憫さは何とか出来ないか。
小説を読んでいて、ハッピーエンドの主人公たちの影で不幸になった彼のことが気になっていた。
それならヒロインを虐めず、義兄を褒め称え、悪意がないことを証明すればいいのでは?
そして義兄を慕う義弟を演じるうちに、彼の自分に向ける視線が何だか熱っぽくなってきた。
ゆるっとした世界観です。
身体的接触はありますが、濡れ場は濃厚にはならない筈…
タイトルもしかしたら途中で変更するかも
イラストは紺田様に有償で依頼しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる