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過去編・獣の魔物
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カイウスはこの森を誰よりも知っているが、突然現れた崖の下までは分からない。
精霊の気配を頼りに進んでいて、また目の前の茂みが揺れた。
俺達は足を止めて、目の前の茂みにいる者を警戒した。
でも、なかなか正体を出そうとしない…相手も俺達を警戒しているようだ。
カイトだけが何も分からず、前に出ようとしてカイウスが腕を掴んで引っ張った。
すると、ギリギリの距離でカイトの前をなにが横切った。
短い悲鳴を上げたカイトは、地面に尻餅をついた。
目の前に現れたのは、全身真っ黒な毛並みの虎だった。
でも、俺には虎の周りに黒いオーラのようなものが見える。
俺が見えるならカイウスにも見えるだろう…でも、きっとカイトは見えない。
この虎はゲームでも出てきた、精霊が闇に堕ちた時に変形する魔物というやつだ。
普通の人には普通の動物や別の生き物に見えているだろう。
禍々しい魔物に見えるのは、精霊が見える者のみだ。
この魔物は神とは全く関係なく、ずっと精霊の森に住み着いている。
人にも危害を加えているからカイウスは精霊の森まで足を運んで退治しているとゲームで説明されていた。
カイウスは炎を手に纏わせて、魔物に向かった。
カイウスの腕を振り上げて、炎が魔物に向かって襲った。
魔物はまだ子供だったのか、襲ってくるわけでもなく慌てて逃げていった。
退治をしに来たわけではないから、これ以上追いかける事はしなかった。
カイウスがカイトに腕を伸ばすと、またボーッとしていたカイトが我に返りカイウスの腕を振り払って自分で立ち上がった。
「………」
「行けますか?」
「……あぁ」
カイトがフラフラとした足取りで前を歩いていく。
カイウスをライバル視しているから、カイウスの手は借りたくないのだろう。
いつもはお喋りなカイトだが、とても大人しかった。
なにか考え事をしているようで邪魔をしないように俺達も黙って歩き出した。
しばらくしたら、森を抜けて街までやって来た。
空はだんだん明るくなり、店の準備をする人がいた。
俺はいないから、カイウスとカイトだけが歩いているように見えるだろう。
カイウスとカイトに挨拶をする人を見て、カイトの顔がみるみる変わるのが分かった。
騎士と王族なら、当然王族の方に敬意を払うだろう。
でも、国民達が敬意を払っているのはカイウスの方だ。
カイトには、ただ普通に挨拶しているだけでカイウスにはいろいろと話していた。
カイトは俺達を置いて、一人で城に向かって歩いていった。
カイトがカイウスを嫌いな理由…カイウスが神の子だから、自分がカイウスより下に見えるんだと思っているんだろう。
カイウスは神の子以外にも、人望がある…力もある…カイウスは肩書きだけで尊敬されているわけではない。
今のカイトがそう言ったわけではないが、あの表情からすると…心配だ。
カイウスはこの時代のカイウスではないから、戸惑っていた。
今のカイウスとばったり会うかもしれないから、カイウスの腕を引っ張った。
カイウスはそれに気付いて、話を切り上げた。
カイウスと一緒にカイトを追いかけていき、カイトがそこにいた。
「………」
「カイト様、一人では危ないですよ」
「平気だ、俺を誘拐しても誰も気にしないからな」
ちょっと拗ねている感じだな、カイトは不満そうだった。
カイトが城の中に入っていくのを送り届けて、俺達は歩き出した。
そういえば、カイウスは未来の人なのに皆カイウスの事見えてるのはなんでだろう。
カイくんの時も、街を歩いていたら子供達に可愛がられていた。
カイウスをジッと見つめていて、目が合って微笑まれた。
顔が熱くなり、フードを深く被って下を向く。
恥ずかしい、カイウスの微笑みは見慣れているが何度見ても美しい。
「どうかしたのか?ライム」
「あっ、そうだった…なんで皆カイウスが見えるの?」
「俺に力があるから、周りも影響しているんだろう」
「そうなんだ」
そしてカイウスと一緒に湖に戻ってきて、一緒に座った。
そよ風が髪を揺らして、湖が少し波打った。
朝早い時間は湖には誰もいなくて、静寂した世界が見える。
カイウスが「ライム」と声を出したから、カイウスの方に目線を向けた。
俺の姿を見て、頬に触れ…安心したような顔をしていた。
恋人が居なくなった世界…それはとても辛く寂しいものなのだろう。
俺もカイウスが眠りについた時、怖かった。
もう覚めないんじゃないかって…自分の無力さが嫌だった。
だから俺はカイウスを助けるためにここにいる。
精霊の気配を頼りに進んでいて、また目の前の茂みが揺れた。
俺達は足を止めて、目の前の茂みにいる者を警戒した。
でも、なかなか正体を出そうとしない…相手も俺達を警戒しているようだ。
カイトだけが何も分からず、前に出ようとしてカイウスが腕を掴んで引っ張った。
すると、ギリギリの距離でカイトの前をなにが横切った。
短い悲鳴を上げたカイトは、地面に尻餅をついた。
目の前に現れたのは、全身真っ黒な毛並みの虎だった。
でも、俺には虎の周りに黒いオーラのようなものが見える。
俺が見えるならカイウスにも見えるだろう…でも、きっとカイトは見えない。
この虎はゲームでも出てきた、精霊が闇に堕ちた時に変形する魔物というやつだ。
普通の人には普通の動物や別の生き物に見えているだろう。
禍々しい魔物に見えるのは、精霊が見える者のみだ。
この魔物は神とは全く関係なく、ずっと精霊の森に住み着いている。
人にも危害を加えているからカイウスは精霊の森まで足を運んで退治しているとゲームで説明されていた。
カイウスは炎を手に纏わせて、魔物に向かった。
カイウスの腕を振り上げて、炎が魔物に向かって襲った。
魔物はまだ子供だったのか、襲ってくるわけでもなく慌てて逃げていった。
退治をしに来たわけではないから、これ以上追いかける事はしなかった。
カイウスがカイトに腕を伸ばすと、またボーッとしていたカイトが我に返りカイウスの腕を振り払って自分で立ち上がった。
「………」
「行けますか?」
「……あぁ」
カイトがフラフラとした足取りで前を歩いていく。
カイウスをライバル視しているから、カイウスの手は借りたくないのだろう。
いつもはお喋りなカイトだが、とても大人しかった。
なにか考え事をしているようで邪魔をしないように俺達も黙って歩き出した。
しばらくしたら、森を抜けて街までやって来た。
空はだんだん明るくなり、店の準備をする人がいた。
俺はいないから、カイウスとカイトだけが歩いているように見えるだろう。
カイウスとカイトに挨拶をする人を見て、カイトの顔がみるみる変わるのが分かった。
騎士と王族なら、当然王族の方に敬意を払うだろう。
でも、国民達が敬意を払っているのはカイウスの方だ。
カイトには、ただ普通に挨拶しているだけでカイウスにはいろいろと話していた。
カイトは俺達を置いて、一人で城に向かって歩いていった。
カイトがカイウスを嫌いな理由…カイウスが神の子だから、自分がカイウスより下に見えるんだと思っているんだろう。
カイウスは神の子以外にも、人望がある…力もある…カイウスは肩書きだけで尊敬されているわけではない。
今のカイトがそう言ったわけではないが、あの表情からすると…心配だ。
カイウスはこの時代のカイウスではないから、戸惑っていた。
今のカイウスとばったり会うかもしれないから、カイウスの腕を引っ張った。
カイウスはそれに気付いて、話を切り上げた。
カイウスと一緒にカイトを追いかけていき、カイトがそこにいた。
「………」
「カイト様、一人では危ないですよ」
「平気だ、俺を誘拐しても誰も気にしないからな」
ちょっと拗ねている感じだな、カイトは不満そうだった。
カイトが城の中に入っていくのを送り届けて、俺達は歩き出した。
そういえば、カイウスは未来の人なのに皆カイウスの事見えてるのはなんでだろう。
カイくんの時も、街を歩いていたら子供達に可愛がられていた。
カイウスをジッと見つめていて、目が合って微笑まれた。
顔が熱くなり、フードを深く被って下を向く。
恥ずかしい、カイウスの微笑みは見慣れているが何度見ても美しい。
「どうかしたのか?ライム」
「あっ、そうだった…なんで皆カイウスが見えるの?」
「俺に力があるから、周りも影響しているんだろう」
「そうなんだ」
そしてカイウスと一緒に湖に戻ってきて、一緒に座った。
そよ風が髪を揺らして、湖が少し波打った。
朝早い時間は湖には誰もいなくて、静寂した世界が見える。
カイウスが「ライム」と声を出したから、カイウスの方に目線を向けた。
俺の姿を見て、頬に触れ…安心したような顔をしていた。
恋人が居なくなった世界…それはとても辛く寂しいものなのだろう。
俺もカイウスが眠りについた時、怖かった。
もう覚めないんじゃないかって…自分の無力さが嫌だった。
だから俺はカイウスを助けるためにここにいる。
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