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背中の怪我
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「これ、奥のテーブルに運んでくれ!」
「はい!」
クマさんに言われて美味しそうな料理を乗せたトレイで運ぶ。
今日は特に忙しくて、いつもより動き回っていた。
ズキッと背中に鋭い痛みが走ったが、我慢して仕事を続けた。
そして、ピークは過ぎ去り…誰も居なくなった食堂のテーブルを拭いていた。
クマさんが「今日はもう上がっていいぞ」と言われて、後ろを振り返った。
気が緩んでいたのか、背中の痛みに思わず体がよろけた。
もう帰るだけだし、心配掛けないように笑いたかったが苦笑いになってしまった。
「おい大丈夫か?凄い汗じゃないか」
「へ、いき…で…」
「ちょっとすまんな」
クマさんが申し訳なさそうにそう言って、服を掴まれてたくし上げられた。
俺は見ていないから分からないが、背中を見たクマさんは一言も喋らない。
なにか言ってくれないと不安なんだけど、どうなってるんだ?
背中を見ようとすると、背中が痛くなるから見れない。
クマさんに無言で担がれて、そのまま食堂を後にした。
外は暗いけど、外灯が明るいからかなり恥ずかしい格好だ。
クマさんは騎士団の兵舎の前までやって来た。
兵舎の入り口は普通の騎士団員用に作られているからクマさんの身長では入れない。
「誰かいないか!!」
「あれクマじゃん、珍しい…何の用?」
「彼の手当を頼みたい、凄い怪我なんだ」
クマさんの声に出てきた騎士に、そう言った。
そこまで酷い状態なのか、カイウスに知られたらまた力が暴走してしまうかもしれない。
クマさんにカイウスには言わないでとお願いしてみたが、カイウスに言わないなら俺の家族に連絡すると言ってきた。
クマさんからしたら当然だと思うが、どちらも嫌だ。
家族になんて言ったら、俺がローベルトの子供だとバレてしまう。
そしたら、バイトも辞めなくてはならなくなる。
困って、黙っているとクマさんに降ろされた。
「ライム、お前は見ていないからそんな事を言えるんだ…とりあえずカイ様には言わなくてはいけない、それは分かってくれ」
「……はい、心配掛けてごめんなさい」
「謝る必要はない、ライム…俺はお前を息子のように思ってるんだから」
クマさんにポンポンと頭を撫でられて、その優しさに微笑んだ。
クマさんが本当のお父さんだったらよかったのにな。
騎士団員が「医務室に案内するから、ついてこい」と言われた。
クマさんにお礼を言って頭を下げて、兵舎の中に入った。
よく見たらこの騎士団員…ハイドレイだ、まさかまた会うなんて思わなかった。
クマさんが内緒に出来ないほどの怪我か…気になる。
医務室のドアを叩いて、ハイドレイが先に入って俺も後から医務室に入る。
独特な薬品のにおいに頭がクラクラしながら椅子に座る白衣の男の人を見た。
メガネを掛けていて、腰まで長い髪を一つに束ねているとても色気がある先生だ。
攻略キャラクターではないが、この先生はマリーが怪我をしてここの医務室に運ばれた時に知り合うんだっけ。
ヒロインにセクハラをして、カイウスやハイドレイに危険人物だと思われている。
攻略キャラクターじゃないのに存在感があり、覚えていた。
「今日はもう営業時間外だよ」
「そんなのねぇだろ!友達が怪我したんだよ、見てくれ先生!お願いだ!」
「うるせぇ!帰れ!…はぁ、女の子ならまだしも野郎に時間取られるなんてゴメンだ!」
「カイ様の知り合いみたいなんだよ、頼む先生!!」
その言葉を聞いてため息を吐いて、俺を不満そうに睨んでいた。
不真面目だけは、腕だけは確かで街からスカウトして騎士団専用の医師となったフレイ先生だ。
女好きだからなのか、営業時間は真面目だけど時間外に怪我をするとこうして断られてしまう事がある。
だから営業時間外に重症にならないように皆気を付けている。
夜に見回りもするのに、それでいいのかと思ったが騎士団員が医者がいるからとあまり無茶しなくなったからとハイドレイが説明していた。
自分で治せるカイウスは無茶ばかりしてしまうんだけどね。
椅子に座り、怪我がある背中が見えるように服をたくし上げた。
「………」
「うわっ、なんだこれ…ひでぇ」
フレイ先生とハイドレイの顔が歪むほど酷いらしい。
怖いけど「どうなってるんだ?」と聞いてみた。
背中に刺激を与えないように見る事は出来ないか確認していたらハイドレイに見ない方がいいと言われた。
そんなにグロいのか、フレイ先生に消毒液を染み込ませた清潔な布で傷口に触れられる。
「ひっ!んんっ、いたっ…あぐっ」
「おい!男のくせに変な声を出すな!」
フレイ先生に怒られても、痛くて声が我慢出来ない。
口元を押さえながら、涙を流して痛みに我慢する。
何故か目の前にいるハイドレイがジッと俺の顔を見ているのが気まずいんだけど…
フレイ先生は「弱いくせに営業時間外に無茶をするからこうなるんだ!今日は特別に見てやるが今後はないと思えよ!」と言った。
フレイ先生は男に厳しいと思っていたが、意外と優しいんだな。
痛みから目を背くためにそんな事を考えていた。
やっと激痛の消毒を終えて、包帯を巻かれる。
「騎士のくせに、女みたいに細い体してるからこんな怪我をするんだ!」と怒られてしまった。
騎士じゃないけど、怪我の理由を言いたくなくて黙っている事にした。
ぐっと腰を引かれて、顔が至近距離で近付く。
手当のためでお互いそういうつもりはないが、ビックリして顔を逸らす。
その時、ドアが叩かれて中にカイウスが入ってきた。
「はい!」
クマさんに言われて美味しそうな料理を乗せたトレイで運ぶ。
今日は特に忙しくて、いつもより動き回っていた。
ズキッと背中に鋭い痛みが走ったが、我慢して仕事を続けた。
そして、ピークは過ぎ去り…誰も居なくなった食堂のテーブルを拭いていた。
クマさんが「今日はもう上がっていいぞ」と言われて、後ろを振り返った。
気が緩んでいたのか、背中の痛みに思わず体がよろけた。
もう帰るだけだし、心配掛けないように笑いたかったが苦笑いになってしまった。
「おい大丈夫か?凄い汗じゃないか」
「へ、いき…で…」
「ちょっとすまんな」
クマさんが申し訳なさそうにそう言って、服を掴まれてたくし上げられた。
俺は見ていないから分からないが、背中を見たクマさんは一言も喋らない。
なにか言ってくれないと不安なんだけど、どうなってるんだ?
背中を見ようとすると、背中が痛くなるから見れない。
クマさんに無言で担がれて、そのまま食堂を後にした。
外は暗いけど、外灯が明るいからかなり恥ずかしい格好だ。
クマさんは騎士団の兵舎の前までやって来た。
兵舎の入り口は普通の騎士団員用に作られているからクマさんの身長では入れない。
「誰かいないか!!」
「あれクマじゃん、珍しい…何の用?」
「彼の手当を頼みたい、凄い怪我なんだ」
クマさんの声に出てきた騎士に、そう言った。
そこまで酷い状態なのか、カイウスに知られたらまた力が暴走してしまうかもしれない。
クマさんにカイウスには言わないでとお願いしてみたが、カイウスに言わないなら俺の家族に連絡すると言ってきた。
クマさんからしたら当然だと思うが、どちらも嫌だ。
家族になんて言ったら、俺がローベルトの子供だとバレてしまう。
そしたら、バイトも辞めなくてはならなくなる。
困って、黙っているとクマさんに降ろされた。
「ライム、お前は見ていないからそんな事を言えるんだ…とりあえずカイ様には言わなくてはいけない、それは分かってくれ」
「……はい、心配掛けてごめんなさい」
「謝る必要はない、ライム…俺はお前を息子のように思ってるんだから」
クマさんにポンポンと頭を撫でられて、その優しさに微笑んだ。
クマさんが本当のお父さんだったらよかったのにな。
騎士団員が「医務室に案内するから、ついてこい」と言われた。
クマさんにお礼を言って頭を下げて、兵舎の中に入った。
よく見たらこの騎士団員…ハイドレイだ、まさかまた会うなんて思わなかった。
クマさんが内緒に出来ないほどの怪我か…気になる。
医務室のドアを叩いて、ハイドレイが先に入って俺も後から医務室に入る。
独特な薬品のにおいに頭がクラクラしながら椅子に座る白衣の男の人を見た。
メガネを掛けていて、腰まで長い髪を一つに束ねているとても色気がある先生だ。
攻略キャラクターではないが、この先生はマリーが怪我をしてここの医務室に運ばれた時に知り合うんだっけ。
ヒロインにセクハラをして、カイウスやハイドレイに危険人物だと思われている。
攻略キャラクターじゃないのに存在感があり、覚えていた。
「今日はもう営業時間外だよ」
「そんなのねぇだろ!友達が怪我したんだよ、見てくれ先生!お願いだ!」
「うるせぇ!帰れ!…はぁ、女の子ならまだしも野郎に時間取られるなんてゴメンだ!」
「カイ様の知り合いみたいなんだよ、頼む先生!!」
その言葉を聞いてため息を吐いて、俺を不満そうに睨んでいた。
不真面目だけは、腕だけは確かで街からスカウトして騎士団専用の医師となったフレイ先生だ。
女好きだからなのか、営業時間は真面目だけど時間外に怪我をするとこうして断られてしまう事がある。
だから営業時間外に重症にならないように皆気を付けている。
夜に見回りもするのに、それでいいのかと思ったが騎士団員が医者がいるからとあまり無茶しなくなったからとハイドレイが説明していた。
自分で治せるカイウスは無茶ばかりしてしまうんだけどね。
椅子に座り、怪我がある背中が見えるように服をたくし上げた。
「………」
「うわっ、なんだこれ…ひでぇ」
フレイ先生とハイドレイの顔が歪むほど酷いらしい。
怖いけど「どうなってるんだ?」と聞いてみた。
背中に刺激を与えないように見る事は出来ないか確認していたらハイドレイに見ない方がいいと言われた。
そんなにグロいのか、フレイ先生に消毒液を染み込ませた清潔な布で傷口に触れられる。
「ひっ!んんっ、いたっ…あぐっ」
「おい!男のくせに変な声を出すな!」
フレイ先生に怒られても、痛くて声が我慢出来ない。
口元を押さえながら、涙を流して痛みに我慢する。
何故か目の前にいるハイドレイがジッと俺の顔を見ているのが気まずいんだけど…
フレイ先生は「弱いくせに営業時間外に無茶をするからこうなるんだ!今日は特別に見てやるが今後はないと思えよ!」と言った。
フレイ先生は男に厳しいと思っていたが、意外と優しいんだな。
痛みから目を背くためにそんな事を考えていた。
やっと激痛の消毒を終えて、包帯を巻かれる。
「騎士のくせに、女みたいに細い体してるからこんな怪我をするんだ!」と怒られてしまった。
騎士じゃないけど、怪我の理由を言いたくなくて黙っている事にした。
ぐっと腰を引かれて、顔が至近距離で近付く。
手当のためでお互いそういうつもりはないが、ビックリして顔を逸らす。
その時、ドアが叩かれて中にカイウスが入ってきた。
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