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嵐の前触れ
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カイウスが心配する中、俺は騒ぎのあった教室に戻る事にした。
またなにかあったら、今度は自分でなんとかしようと考えていた。
カイウスの言う通り、俺はローベルトという名前なだけのただのライムだ…悪い事なんて今後もするつもりはない。
一度だけだと分からないだろう、だから何度も言う…分かってくれるまで…
それが俺に出来る唯一の誤解の解き方だって思っている。
教室に入ると、クラスメイト達がいっせいにこちらを見つめた。
俺だけなら気にも止めないだろうが、後ろにカイウスがいるからか注目を集めた。
自分の席に向かおうと歩いていたら、俺を突き飛ばした生徒が前を遮った。
驚いて足を止めると、何を思っているのか…突然俺に向かって頭を下げた。
「悪かった!」
「えっ、あの…」
「俺は騎士を目指す者として、悪の芽は先に潰しといた方がいいって思ってた!でもカイ様に言われて間違いだったって気付かされた!さっきは突き飛ばして悪かった!」
カイウスが言っただけで、ここまで効果があるとは思わなかった。
騎士を目指す者として、カイウスはお手本であり目標だからカイウスの言葉は絶対なのかもしれない。
謝ってくれたから頭を下げるほどではない、顔を上げてほしい。
しゃがんで「頭を上げて、もういいから」と伝えた。
すると、俺にしか聞こえないほど小さな舌打ちが聞こえた。
顔を上げた生徒はさっきの舌打ちを感じさせないほどの笑みを顔に貼り付けていた。
「ありがとう!許してくれるんだね!疑ってごめんね」
「う…ん」
生徒は手を振りながら自分の席に戻っていった。
人の考えている事は、そんなに単純じゃないって事なのかもしれない。
カイウスに「大丈夫か?」と言われたが、舌打ちだけだったし聞き間違いかもしれないからカイウスには言わなかった。
ゆっくりと俺は無害だって言うんだ。
放課後になり、声楽部に行こうと席を立った。
俺がこの学校で唯一の楽しみが歌う場所がある事だ。
友人とはダメになってしまったが、歌う事は止めたくなかった。
カイウスと俺を結びつけてくれた大切な歌だから…
カイウスはもう騎士団長の仕事に向かってしまったから、歌っても届かないのかもしれない。
でも、俺とカイウスは何処かで繋がっている…きっとこの歌が届くと信じている。
音楽室に入ると、先生だけが挨拶してくれて俺も挨拶をした。
口を開いて、歌を音に乗せて奏でると嫌な気持ちが一気に吹き飛んだ。
何処かにいるカイウスにこの愛の歌が届きますように…
外が薄暗くなっているのが窓から見えて、今日の部活は終わった。
暗い廊下を一人で歩いていると、窓の向こう側にまん丸なお月様が顔を出していた。
廊下の明かりがなくても足元を照らしてくれるほどに眩しい。
カイウスも同じものを見ているのかな、早く会いたいな。
歩くスピードがだんだん早くなっていく。
窓の外を見つめながら歩いていたら、月明かりの下にカイウスがいるのを見つけた。
カイウスの青い髪はとても目立つからすぐに分かった。
窓を開けてカイウスを呼ぼうと思っていたが、窓を開けた格好のまま手を止めた。
カイウスは一人じゃなかった。
ここからは遠すぎて会話までは聞こえないが、カイウスと女の子が二人いた。
その二人は俺のよく知る人物だった。
一人はヒロインのマリーだ、私服なのか可愛い花柄のワンピースを着ていて女の子らしいゆるふわ系の雰囲気だ。
もう一人は対照的で、黒い服を着てさらさらの黒髪ロングが風に揺れている…俺の妹のサクヤだ。
もしかしてこれって修羅場ってやつなのか?
カイウスはゲームと違い俺と恋人同士になったけど、マリーとサクヤはゲーム通りカイウスが好きなのだろう。
サクヤはカイウスに触れようと近付くが、カイウスがサクヤから距離を取っている。
カイウスが避けるから、マリーの傍に近付く事になりサクヤは今度はマリーに近付いた。
マリーの肩を思いっきり押すと、バランスを崩したマリーはなにかを掴もうと両手を伸ばすが何も掴めず空振りだった。
でもカイウスがマリーの肩を掴んで支えたから転ばずにすんだ。
でもそれが余計にサクヤの怒りを買い、サクヤは何かを言って走って去っていった。
マリーは慌ててカイウスから離れて頭を下げて謝っていた。
いったいどんな状況か、本当に分からない…なんでサクヤがいたんだろ。
マリーとカイウスは帰る場所が同じだから一緒に帰っていった。
こうして見ると本当にお似合いだな、俺とは違ってどっから見てもカップルだ。
いや、カイウスは俺を選んでくれたんだ…俺がカイウスの隣に並んでも恥ずかしくない人間になるんだ。
窓を見るとカイウスとマリーが見えてしまうから、窓を見るのをやめて歩き出した。
今日の夕飯は何を作ろうかと考えながら…
またなにかあったら、今度は自分でなんとかしようと考えていた。
カイウスの言う通り、俺はローベルトという名前なだけのただのライムだ…悪い事なんて今後もするつもりはない。
一度だけだと分からないだろう、だから何度も言う…分かってくれるまで…
それが俺に出来る唯一の誤解の解き方だって思っている。
教室に入ると、クラスメイト達がいっせいにこちらを見つめた。
俺だけなら気にも止めないだろうが、後ろにカイウスがいるからか注目を集めた。
自分の席に向かおうと歩いていたら、俺を突き飛ばした生徒が前を遮った。
驚いて足を止めると、何を思っているのか…突然俺に向かって頭を下げた。
「悪かった!」
「えっ、あの…」
「俺は騎士を目指す者として、悪の芽は先に潰しといた方がいいって思ってた!でもカイ様に言われて間違いだったって気付かされた!さっきは突き飛ばして悪かった!」
カイウスが言っただけで、ここまで効果があるとは思わなかった。
騎士を目指す者として、カイウスはお手本であり目標だからカイウスの言葉は絶対なのかもしれない。
謝ってくれたから頭を下げるほどではない、顔を上げてほしい。
しゃがんで「頭を上げて、もういいから」と伝えた。
すると、俺にしか聞こえないほど小さな舌打ちが聞こえた。
顔を上げた生徒はさっきの舌打ちを感じさせないほどの笑みを顔に貼り付けていた。
「ありがとう!許してくれるんだね!疑ってごめんね」
「う…ん」
生徒は手を振りながら自分の席に戻っていった。
人の考えている事は、そんなに単純じゃないって事なのかもしれない。
カイウスに「大丈夫か?」と言われたが、舌打ちだけだったし聞き間違いかもしれないからカイウスには言わなかった。
ゆっくりと俺は無害だって言うんだ。
放課後になり、声楽部に行こうと席を立った。
俺がこの学校で唯一の楽しみが歌う場所がある事だ。
友人とはダメになってしまったが、歌う事は止めたくなかった。
カイウスと俺を結びつけてくれた大切な歌だから…
カイウスはもう騎士団長の仕事に向かってしまったから、歌っても届かないのかもしれない。
でも、俺とカイウスは何処かで繋がっている…きっとこの歌が届くと信じている。
音楽室に入ると、先生だけが挨拶してくれて俺も挨拶をした。
口を開いて、歌を音に乗せて奏でると嫌な気持ちが一気に吹き飛んだ。
何処かにいるカイウスにこの愛の歌が届きますように…
外が薄暗くなっているのが窓から見えて、今日の部活は終わった。
暗い廊下を一人で歩いていると、窓の向こう側にまん丸なお月様が顔を出していた。
廊下の明かりがなくても足元を照らしてくれるほどに眩しい。
カイウスも同じものを見ているのかな、早く会いたいな。
歩くスピードがだんだん早くなっていく。
窓の外を見つめながら歩いていたら、月明かりの下にカイウスがいるのを見つけた。
カイウスの青い髪はとても目立つからすぐに分かった。
窓を開けてカイウスを呼ぼうと思っていたが、窓を開けた格好のまま手を止めた。
カイウスは一人じゃなかった。
ここからは遠すぎて会話までは聞こえないが、カイウスと女の子が二人いた。
その二人は俺のよく知る人物だった。
一人はヒロインのマリーだ、私服なのか可愛い花柄のワンピースを着ていて女の子らしいゆるふわ系の雰囲気だ。
もう一人は対照的で、黒い服を着てさらさらの黒髪ロングが風に揺れている…俺の妹のサクヤだ。
もしかしてこれって修羅場ってやつなのか?
カイウスはゲームと違い俺と恋人同士になったけど、マリーとサクヤはゲーム通りカイウスが好きなのだろう。
サクヤはカイウスに触れようと近付くが、カイウスがサクヤから距離を取っている。
カイウスが避けるから、マリーの傍に近付く事になりサクヤは今度はマリーに近付いた。
マリーの肩を思いっきり押すと、バランスを崩したマリーはなにかを掴もうと両手を伸ばすが何も掴めず空振りだった。
でもカイウスがマリーの肩を掴んで支えたから転ばずにすんだ。
でもそれが余計にサクヤの怒りを買い、サクヤは何かを言って走って去っていった。
マリーは慌ててカイウスから離れて頭を下げて謝っていた。
いったいどんな状況か、本当に分からない…なんでサクヤがいたんだろ。
マリーとカイウスは帰る場所が同じだから一緒に帰っていった。
こうして見ると本当にお似合いだな、俺とは違ってどっから見てもカップルだ。
いや、カイウスは俺を選んでくれたんだ…俺がカイウスの隣に並んでも恥ずかしくない人間になるんだ。
窓を見るとカイウスとマリーが見えてしまうから、窓を見るのをやめて歩き出した。
今日の夕飯は何を作ろうかと考えながら…
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