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クッキング

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「ぎゃっ!!」

「ごめんなさい!お怪我はありませんか?」

「…だ、大丈夫です…私もよそ見していたので」

黒いローブを見にまとっていた大きいメガネの少年が笑い、本を拾っていた。
俺もしゃがんで本を拾い、その本をジッと見つめる。

少年に本を返すと頭を下げていた。
同じ歳っぽいけど、クラスメイトの中にはいなかった。

一人で借りたのか、かなりの量の本があった。
ジャンルも様々で恋愛小説から難しい辞書まで様々だ。

「あの、この本に興味がおありですか?」

「…え?」

少年は床に本を置いて、俺がさっき見ていた本を取り出した。
それは『初心者でも簡単!お手軽家庭レシピ』という本だった。

生前の時でも料理をした事がなくて、初心者でも出来る料理から始めたいと思っていた。
まさにぴったりの本でつい見てしまっていた。

でも少年が借りようとしていた本ではなかったのか?
少年は俺にどうぞと本を差し出していた。

「あの、でもこれ貴方が借りようとした本じゃ」

「え?いえいえ、これが私の仕事なので」

「…仕事?もしかして司書さん?」

「はい!カナデと申します、よろしくお願いします」

まさか同じ歳だと思ったら司書さんだったなんて驚きだ。

司書さんなら欲しい本を利用者に貸し出すのが仕事だから料理本を受け取った。

司書さんの話を聞くともう大人のようで、カナデさんと呼ぶ事にした。
カナデさんに本の貸し出しの許可をもらい、料理本をカバンに入れて図書館を後にした。

そして作ろうと思っている料理の材料をメモした紙を持ち買い出しに行こうとしたら黒子達に出会った。

あれからいろいろあり、今ようやく俺の初めての調理が始まる。
キッチンに置くと万が一汚れたら大変だからテーブルに本を置いて目当ての料理のページを開いたままにする。

調味料と食材をキッチンに並べて、包丁を手にした。
調味料や調理器具は備え付けられたものがあるから食材だけの出費で抑えられた。
一口サイズに野菜や肉を切り、鍋に本で書かれた調味料の量を入れる。

これで合っているか不安になりながら、野菜や肉を鍋の中に入れる。

蓋をして、よく味を染み込ませたら完成だ。
待っている間、料理本を眺めた。

「うーん、これは美味しそうだなぁ…あ、これなんていいかも」

そこまで考えて、自分のために料理を学んでるんじゃない事を思い出した。
俺の飯はただのついでだ。

そろそろ完成かなと、時計を見つめてキッチンに戻る。
そして味見をして、初めてにしては不味くはない……美味いかと言われたら微妙だけど…

美味しく作れるにはかなり練習しなきゃなと思いながら、一人で食事をした。
食べ終わり、外ががやがやと騒がしくて食器を洗った手を止めてベランダに向かった。

目の前はカイウスの屋敷だから、右側を見ると城下町が見える。
城下町は準備で大忙しだった。
そういえばカイウスの騎士団長就任パレードが始まるからだろう。
俺も見に行こうかな、ゲームでは見ていたが実際にも見たい。

カイウスの晴れ舞台を想像しながらキッチンに戻った。
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