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甘い罠

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隙を見て、口に真っ赤なケーキを押し込まれた。
俺は白目を向いて、そのまま椅子ごと倒れた。

帰ってきても地獄とか、俺は何処にいたら安全なのか分からなくなる。

「うーん、うーん…ケーキは甘いのが…」

嫌な夢を見たような気がして、目を開いたら口のヒリヒリからして夢オチではない事が分かって泣いた。
すぐ横にある窓を見ると、外はとても暗かった。

ベッドで寝ている、確か俺は激辛攻撃で即死した筈だ。
フローネとカウが運んでくれたんだと思い、上半身を起こすと頭や背中やあちこちが痛かった。
……運んだんじゃなくて、引きずったんだろうな。

フローネは両親と住んでいるからもう帰ったのだろう。
俺はベッドを背にして座って寝るカウの肩を揺すった。
カウは、唸りながら細い目で俺を見て目を擦っていた。

「あ…おはよう」

「いやまだ夜だ」

「あ、そうなんだ……寝ちゃってた」

「それよりカウ」

「名前呼んでくれるなんて嬉しいなー…あ、お礼なんていいよ!一番弟子としてレインが起きるまで傍にいるのは当たり前だから!」

「………いや、帰れよ」

カウはボケーッとした顔で俺を見ていて、目を瞑った。
俺はカウの襟を掴んで入り口まで引きずった。
最後まで抵抗していて「一緒に住むんだ!」と怖い事を言っていた。
なんで俺がお前なんかと住まないといけないんだよ!

追い出して、ドアを硬く閉めて…再びベッドで横になった。
こっちはまだ寝足りないっていうのに誰かが居たら気が散るだろ。

いざ目を閉じて、しばらくしてふと目を開けた。

起きた時は眠かったのに、全然寝れなくなった。
よく眠れる方法はあるが、どうしようか考える。

下半身を見ても、まだ反応はない…どんなに興奮していてもあの激辛地獄を前にしたら縮こまってしまうだろう……別にあの時興奮してたわけじゃないけど…

一発抜けばぐっすり眠れる、触っていれば興奮するかな。

ズボンの前をくつろげて、下着を引っ張るとしょげてるものが出てきた。
可哀想に、今元気にしてやるからな…とくだらない事を考えながら軽く触る。

いつも一人でする時、生前に見た大人のDVDを思い出していた。
なんかエロゲーを思い出すと、この現実にいる人達だから罪悪感でイマイチ興奮しない。

だったら自分の現実とは無縁の世界を思い出して抜く方がいい。

この世界にはエロ本も映像を映すものもないからな。
もう慣れたけど、この時はやっぱり不便に感じる。

性行為の本はあるが、昔の春画みたいなイラストでさすがに興奮しなかった。
あれで興奮するのはかなりの上級者だと俺は思う……この世界では普通なのかもしれないけど…

ふにふにと柔らかいものに触れて、必死に勃させる。
頭の中では柔らかい胸や腰などを想像すると少し反応する。
男優の手が腰を撫でていて、その動きに声を漏らす。

男優の顔なんて正直覚えていないし、興味がない。
……だったのに、何故か男優の顔が脳内に焼き付いている。

それはどう見ても、あの魔王とそっくりだった。
いや、いやいや…そんなわけがない!あんな顔現実に居てたまるか!!

これはトラウマか?俺の毎日の癒しの楽しみも奪うのか!?

女優の顔や体を想像してたのに、ぼやけてきた。
こんなんじゃ、抜くどころか萎えてしまうじゃないか!

そう、思っていたのに…俺の下半身は硬くなっていた。
え……自分の体なのに理解出来ない…なんだこれは……

さっきまで柔らかかったのに、先走りで濡れていた。

違う、アイツを想像して勃ったわけじゃない……女優を想像して、そうだ…女優だ。
俺は魔王の存在に打ち勝つように、必死に女優を想像した。

『もうこんなに濡らしたのか?悪い子だな』

喋るな喋るな、今集中してるんだからちょっと黙れ。

脳内の魔王にそう言うが、俺の脳内なのに魔王は好き勝手動いている。
いや、男優を想像していたから魔王の姿の男優なんだろうけど俺の脳内だから魔王で……なんかわけが分からなくなってきた。

言葉が男優の言葉でそのまま魔王の声で聞こえるから余計に嫌だ。

女優の体がぼやけたままだから、まるで俺にしているみたいじゃないか。

『…やらしい、俺に何をされたくて想像してたんだ?』

「しっ、てない…するわけっ…ん」
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