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気持ちの葛藤

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「フレイザ、その子供と一緒に離れていろ」

「分かりました」

少年に目隠しして、見せないようにしていたチャラエルフは俺達から距離を取る。

狭い空間で魔力を放つわけにもいかず、シリウスは魔法で剣を出現させた。
俺はシリウスのに援護をしつつ、他の奴を確実に仕留める。

シリウスがエルフとオーク達に近付いて、俺は銃を放った。

確実に一体一体仕留めていくシリウスの剣さばきはとても綺麗なものだった。
俺も負けじと、こちらに近付いてくる相手…シリウスに近付く相手を撃つ。

騒ぎを聞きつけたのか、あちこちの方向から足音が聞こえた。
これではキリがない、なにがあるか分からない…体力は温存しといた方がいい。

ここで足止めされるわけにはいかず、強行突破をする事にした。

目の前にいる敵だけを何とかして、俺達が開いた道をチャラエルフ達が通っていく。
それを繰り返していたら、出口らしき場所に到着した。

出口には俺達が通ってきた道があり、そこをくぐり抜けると景色が変わった。

最後にくぐったチャラエルフは、入り口を塞ぎ…追っ手が来なくなり安心感で地面に座った。
チャラエルフはこの門を作る準備をしてたんだな。

水を差し出されて、ありがたく受け取りカップに口を付ける。
…あれ?シリウス達は右に固まっている…でも水は左からもらった。

まさか敵のエルフも門を通って待ち伏せしていたのではないかと冷や汗が流れる。
有り得なくはない、あの門は誰でも入れるんだから…

横を恐る恐る見ると、飲んでいた水が変なところに入って噎せた。
そっと後ろからシリウスが背中を撫でてくれて安心した。
なんでこんなところにいるんだ?ビックリした。

ゲームで俺の仲間になる、エルフの子がいる。
なんでここに……そういえばシリウスの事を恨んでいるキャラだったな。

まさか、ここで戦う気じゃないだろうな……さすがにゲームで仲間になる子と戦うのは両親が…

「…兄さん」

「さっき散々話しただろ?」

チャラエルフを兄さんと呼んでいる、この二人兄弟だったのか?
確かに似ていると思っていたが、そういう話はなかった。

リンリンはシリウスを見つめていて、俺はとっさにシリウスとリンリンの前に出た。
シリウスを守る必要はないんだが、身体が勝手に動いていた。

リンリンの動きを見ていたら、突然頭を下げてきた。

呆然とリンリンを見ると、リンリンはチラッとチャラエルフを見ていた。

言いにくそうな顔をしているが、チャラエルフはさっさと言えと手を振っていた。

「……その、さっきは勘違いして…ごめんなさい」

「別にいい、恨まれてもどうでもいい」

「どうでもいいって、私は殺そうとして」

「だからなんだ、魔物同士の戦争など珍しくもない」

シリウスはそう言って、俺を後ろから抱きしめていた。
こんな真剣な話をしてるのに何をしてるんだと呆れる。

リンリンは俺を通して後ろのシリウスを見つめていた。
俺が仲間になっていなくても、彼女がエルフの長から逃れられたなら良かった。

なんかリンリンの目がキラキラしているような気がするが、気のせいだよな…多分。
男に抱きついている魔王でいいのか?分からない。

シリウスの話によると、リンリンが門の向こう側にいて誰も入ってこないように見張っていたらしい。
そうだったのか、俺もリンリンにありがとうとお礼を言った。

リンリンは俺をチラッと見て、冷めた目を向けられた。

「……俺、嫌われるような事したのかな」

「どうした?レイン」

「いや、何でもない」

なんでこうも綺麗にヒロイン達に嫌われているのか…まさか、呪われてるのか?

苦笑いしながら、仕方ないと思う事にしてシリウスから離れた。
これからどうするか、不安そうにしている少年の目線に合うようにしゃがんだ。

エルフの街に帰っても、彼には身寄りがないし…あの騒ぎの中戻せない。
俺の村に連れて行ってもいいけど、人間の中にいるとこの子もストレスを感じる。

耳が尖っているだけで、受け入れられない人もいる。

だとしたら、やっぱり人間の中より同じ魔物の中の方がこの子も安心出来るだろう。

「…シリウス」

「あぁ、分かってる」

シリウスの方を見ると、シリウスはチャラエルフに目線を向けていた。

チャラエルフは俺と同じようにしゃがんで少年と目線を合わせた。

そして、優しく「一緒に来るか?」と語りかけていた。

確かに同じエルフ族といた方が、彼の気持ちは穏やかになる。
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