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第12話
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「うあ、うあ……うああああああああ!」
同時に東は大声で喚いた。
こんな高さから落ちたら自分でも、どうなるか分からない。眼前に突き出された「恐怖」が、輪郭をぼやかしてきていた「死」を意識させた。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、誰か、誰か助けて!誰か!
声も出せなくなった。ただ、急速に地面が近付いてきているのだけは分かる。
誰か!助けて!お願いだ!安部さん!この手をとって、俺を救いだしてくれ!
気圧の変化が明確に伝わってくる。もう地面はすぐそこにまで迫ってきているのだろう。けれど、伸ばし続けた掌を掴んでくれる者は誰もいない。それも当然だ。東は地面に触れる寸前に呟いた。
「あぁ……そっか……安部さんは……もういないんだった……俺が喰っちまったんだった……けどな、覚えとけ、命は巡るんだ……どんなことがあろうともなぁ」
東の眼界で夜に映えるであろう鮮やかな紅色が一気に広がり、それを最後に、東は意識を手放した。
※※※ ※※※
破壊されたフェンスから顔を出していた浩太は、遥か下方で赤い火花のようなものが散ったのを見届けて、大きく息を吐き出した。
きっとこれで良かったのだろう、そうに違いないと言い聞かせてはいるが、どうにも心の霞が払い難い。どれだけの変質をもったとしても、東とて人間の一人であった事実はある。できることなら、違う結末も迎えられたのではないだろうか。そこまで考えた浩太は、首を振って気持ちを切り替えた。今は、とにかく次の行動へ移るべきだ。
浩太は落下した東から目を切り離し、未だ倒れたままの達也に声を掛ける。
「よお……生きてるか?」
達也は浅く息を継ぎながら言った。
「……この状態を……生きてるって言うならな……」
「……そんだけ喋れりゃ上等だな」
浩太が達也へ手を伸ばせば、弱々しくも握り返す。引き上げる途中、二人のもとに田辺が駆け寄り、達也の腕を肩に回して立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫とは言いづれえな……まあ、生きてるだけでも儲けもんだ」
達也の軽口を流した浩太は、懸念が残る扉へと目を向ける。蝶番がさきほどよりも大きく歪んでおり、一刻の猶予もないようだった。
浩太は、裕介達を一瞥し、首だけでヘリコプターへ乗るように指示を送った。
「急げ!早く!」
平山の声と共にエンジンが唸りをあげ、プロペラが回り始める。機体を持ち上げる為の、けたたましい音が響く中、浩太は真一の首を一瞥し簡単な敬礼を送った。時間が迫ってさえいなければと渋面しかけたが、相棒にそんな面は見せられない。
同時に東は大声で喚いた。
こんな高さから落ちたら自分でも、どうなるか分からない。眼前に突き出された「恐怖」が、輪郭をぼやかしてきていた「死」を意識させた。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、誰か、誰か助けて!誰か!
声も出せなくなった。ただ、急速に地面が近付いてきているのだけは分かる。
誰か!助けて!お願いだ!安部さん!この手をとって、俺を救いだしてくれ!
気圧の変化が明確に伝わってくる。もう地面はすぐそこにまで迫ってきているのだろう。けれど、伸ばし続けた掌を掴んでくれる者は誰もいない。それも当然だ。東は地面に触れる寸前に呟いた。
「あぁ……そっか……安部さんは……もういないんだった……俺が喰っちまったんだった……けどな、覚えとけ、命は巡るんだ……どんなことがあろうともなぁ」
東の眼界で夜に映えるであろう鮮やかな紅色が一気に広がり、それを最後に、東は意識を手放した。
※※※ ※※※
破壊されたフェンスから顔を出していた浩太は、遥か下方で赤い火花のようなものが散ったのを見届けて、大きく息を吐き出した。
きっとこれで良かったのだろう、そうに違いないと言い聞かせてはいるが、どうにも心の霞が払い難い。どれだけの変質をもったとしても、東とて人間の一人であった事実はある。できることなら、違う結末も迎えられたのではないだろうか。そこまで考えた浩太は、首を振って気持ちを切り替えた。今は、とにかく次の行動へ移るべきだ。
浩太は落下した東から目を切り離し、未だ倒れたままの達也に声を掛ける。
「よお……生きてるか?」
達也は浅く息を継ぎながら言った。
「……この状態を……生きてるって言うならな……」
「……そんだけ喋れりゃ上等だな」
浩太が達也へ手を伸ばせば、弱々しくも握り返す。引き上げる途中、二人のもとに田辺が駆け寄り、達也の腕を肩に回して立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫とは言いづれえな……まあ、生きてるだけでも儲けもんだ」
達也の軽口を流した浩太は、懸念が残る扉へと目を向ける。蝶番がさきほどよりも大きく歪んでおり、一刻の猶予もないようだった。
浩太は、裕介達を一瞥し、首だけでヘリコプターへ乗るように指示を送った。
「急げ!早く!」
平山の声と共にエンジンが唸りをあげ、プロペラが回り始める。機体を持ち上げる為の、けたたましい音が響く中、浩太は真一の首を一瞥し簡単な敬礼を送った。時間が迫ってさえいなければと渋面しかけたが、相棒にそんな面は見せられない。
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