332 / 419
第10話
しおりを挟む
東がビッ、とステンドグラスを指差す。その背面から明るい光が差し込んできて、正面から顔を照らしたが、瞬きもせずに一息に声を荒げた。
「過去を遡れば、テメエはいつも高みの見物をしてやがる!神だぁ?だったら降りてきてみろや糞野郎!人間のことなんざ、生まれた瞬間から、ゆっくりと死に向かう家畜だとでも思ってんだろ!ようやく血にまみれて、こっちと同じになったんだ......奇跡のひとつでも起こして証明してみろや!」
肩で荒い息を繰り返しながら捲し立てた東は、一呼吸いれて、だらんと腕を下げた。その先には、もう、囁くような唸りもあげようもないほどの損害がある安部の首があった。
額から溢れだした脳の一部を掌で掬い上げ、それを口へと運んでいく。グチャグチャと下品に歯で擂り潰し、空っぽになった頭蓋を一気に噛み砕いていく姿は、二人が使徒と呼ぶ者達と瓜二つだ。
「善と悪、それが揃って初めて人間、それなら、俺達は人を超越した完璧な人間だ......俺達だからこそ、成し遂げられる。以前は何になるかが重要だったが、今は誰になるかだ。分かってくれるだろ安倍さん、俺達だからこそ......」
安部の頭部は、目に見えて小さくなっていく。そして、最後に残った耳を拾い上げ、顎をあげてから口に運ぶと、眼を閉じて味わい、喉を細かく上下させ、満足気に吐息を洩らして言った。
「この世界の神になれる。そうだろう、安倍さん……?だからよお、テメエは、もう用無しだよ……神様」
最後の手向けとばかりに、中指をステンドグラスに向けて立てた東は、嫌な事を思い出したと舌を打ち、眉を寄せて不機嫌さを滲ませながら、カソックを翻す。
「邦子、置いてっちまうぞ……早く来いよ」
短い返事のあと、重厚な扉が横倒しなっているのを発見する。さきほど訪れた使徒の一団が破壊したのだろう。
その木製の扉を踏みつけ、東は小倉の市内を見渡す。
血と煙と呻き声、それらが小倉駅方面から響いてきていることに気づき、三日月形に口角をひりあげた。
「さぁ......選別の時間だ......ひゃーーははははは!」
目に入る情報は、その量を増していくと、単純な暴力の数を増やしていく。この九州地方も含めた日本は、あまりにも優しすぎた為に極端な暴力に弱い、そんな内面が見え隠れしている。
東は、そんな世界に負けることはない強い人間を探し出す為に、新たな一歩を踏み出す。
時計の長針は、朝の九時、太陽が真上に昇り始めた時刻だった。
「過去を遡れば、テメエはいつも高みの見物をしてやがる!神だぁ?だったら降りてきてみろや糞野郎!人間のことなんざ、生まれた瞬間から、ゆっくりと死に向かう家畜だとでも思ってんだろ!ようやく血にまみれて、こっちと同じになったんだ......奇跡のひとつでも起こして証明してみろや!」
肩で荒い息を繰り返しながら捲し立てた東は、一呼吸いれて、だらんと腕を下げた。その先には、もう、囁くような唸りもあげようもないほどの損害がある安部の首があった。
額から溢れだした脳の一部を掌で掬い上げ、それを口へと運んでいく。グチャグチャと下品に歯で擂り潰し、空っぽになった頭蓋を一気に噛み砕いていく姿は、二人が使徒と呼ぶ者達と瓜二つだ。
「善と悪、それが揃って初めて人間、それなら、俺達は人を超越した完璧な人間だ......俺達だからこそ、成し遂げられる。以前は何になるかが重要だったが、今は誰になるかだ。分かってくれるだろ安倍さん、俺達だからこそ......」
安部の頭部は、目に見えて小さくなっていく。そして、最後に残った耳を拾い上げ、顎をあげてから口に運ぶと、眼を閉じて味わい、喉を細かく上下させ、満足気に吐息を洩らして言った。
「この世界の神になれる。そうだろう、安倍さん……?だからよお、テメエは、もう用無しだよ……神様」
最後の手向けとばかりに、中指をステンドグラスに向けて立てた東は、嫌な事を思い出したと舌を打ち、眉を寄せて不機嫌さを滲ませながら、カソックを翻す。
「邦子、置いてっちまうぞ……早く来いよ」
短い返事のあと、重厚な扉が横倒しなっているのを発見する。さきほど訪れた使徒の一団が破壊したのだろう。
その木製の扉を踏みつけ、東は小倉の市内を見渡す。
血と煙と呻き声、それらが小倉駅方面から響いてきていることに気づき、三日月形に口角をひりあげた。
「さぁ......選別の時間だ......ひゃーーははははは!」
目に入る情報は、その量を増していくと、単純な暴力の数を増やしていく。この九州地方も含めた日本は、あまりにも優しすぎた為に極端な暴力に弱い、そんな内面が見え隠れしている。
東は、そんな世界に負けることはない強い人間を探し出す為に、新たな一歩を踏み出す。
時計の長針は、朝の九時、太陽が真上に昇り始めた時刻だった。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
【完結】わたしの娘を返してっ!
月白ヤトヒコ
ホラー
妻と離縁した。
学生時代に一目惚れをして、自ら望んだ妻だった。
病弱だった、妹のように可愛がっていたイトコが亡くなったりと不幸なことはあったが、彼女と結婚できた。
しかし、妻は子供が生まれると、段々おかしくなって行った。
妻も娘を可愛がっていた筈なのに――――
病弱な娘を育てるうち、育児ノイローゼになったのか、段々と娘に当たり散らすようになった。そんな妻に耐え切れず、俺は妻と別れることにした。
それから何年も経ち、妻の残した日記を読むと――――
俺が悪かったっ!?
だから、頼むからっ……
俺の娘を返してくれっ!?
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味が分かると怖い話(自作)
雅内
ホラー
2ch大好きの根暗なわたくしが、下手の横好きで書き連ねていくだけの”意味が分かると怖い話”でございます。
コピペではなくオリジナルとなりますので、あまり難しくなく且つ、不快な内容になるかもしれませんが、何卒ご了承くださいませ。
追記:感想ありがとうございます。
追加で順次解説を記述していきたいと思います。解釈の一つとしてお読みいただけますと幸いです。
(いいね🧡 + リツイート🔁)× 1分しか生きられない呪い
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ホラー
――1日生き残る為に必要な数は1,440個。アナタは呪いから逃げ切れるか?
Twitterに潜むその『呪い』に罹った人間は、(いいね🧡 + リツイート🔁)× 1分までしか生きられない。
1日生き延びるのに必要ないいね🧡の数は、実に1,440個。
呪いに罹った※※高校2年4組の生徒たちが次々と悲惨な怪死を遂げていく中、主人公の少年・物部かるたは『呪い』から逃げ切れるのか?
承認欲求 = 生存欲求。いいね🧡の為なら何だってやる。
血迷った少年少女たちが繰り広げる、哀れで滑稽な悲劇をどうぞご覧あれ。
夜通しアンアン
戸影絵麻
ホラー
ある日、僕の前に忽然と姿を現した謎の美少女、アンアン。魔界から家出してきた王女と名乗るその少女は、強引に僕の家に住みついてしまう。アンアンを我が物にせんと、次から次へと現れる悪魔たちに、町は大混乱。僕は、ご先祖様から授かったなけなしの”超能力”で、アンアンとともに魔界の貴族たちからの侵略に立ち向かうのだったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる