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第14話
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「阿里沙は違う意見か?」
「ううん、そんなことないよ。ただ、どこにいるのかなって」
浩太が彰一に一声掛けてから煙草とライターを投げ渡して言った。
「くぐもったような音だったし......距離があることは間違いないんだけどな」
「浩太さんは、心当たりあります?」
祐介の問いに浩太は首を振った。
「三ヶ森のサンリブはどうですかね?」
「距離が離れてないぜ。ここからなら車ですぐだ」
阿里沙は発言を一蹴されるや否や、頬を膨らまして真一を睨みつけた。
「じゃあ、真一さんはどこだと思うんですか?」
「いや......ほら、俺はもともと小倉の人間だから......」
阿里沙の勢いに圧され、たじろいだ真一も、これといった場所を特定できてはいない。
揃って首を捻る中、あっ、と頓狂な声をあげたのは祐介だ。全員の視線が集中する。
「そういえば、一件ある......」
「どこだ?」
浩太の声に、祐介は正解か分からないけれど、と保険をかけて言った。
「希望ヶ丘に登校する途中に通谷っていう筑豊電鉄の駅があるんですけど、確か、その駅の側に大型のマーケットがあります」
「あ!中間市のショッパーズモール!」
ピン、と阿里沙が右手を掲げた。彰一も紫煙の奥で短く頷く。
「確かにあったな......滅多に行かないから忘れてた。で、どうするよ浩太さん」
険しい表情で彰一が言った。どんな危険が待ち受けているのか分からない場所に、わざわざ行く必要があるのか疑問に思っている証拠だろう。
警察署の時と同様、生きた人間が集まる場所には死者も集う。それも、大規模なモールにだ。
一体、どれだけの死者が集結しているのだろうか。想像すればするほど不安は膨らんでいく。再び訪れた沈黙を破ったのは真一だった。
「引き際を明確にしておこうぜ......」
引き際、と眉を寄せた彰一に被せて真一は続ける。
「そう、引き際だぜ。どうなったら退却する?」
真一が浩太に尋ねる。判断を任された浩太は、腕を組んで思考を巡らせる。
「......トラックに先頭を走ってもらって、死者に囲まれそうになったら撤退しよう」
「人数は?」
彰一が叩み掛けるように鋭く訊いた。
「......トラックは十人、軽は五人が限度だろうな」
提案を終えた浩太は、全員を見回す。彰一は、今なお深く眉間に皺を寄せているが、呆れたとばかりに溜め息を吐いた。
「......分かった。俺一人が反論しても無駄だろうし、もともとは達也って人を探すことがメインだったしな」
彰一は祐介の肩を叩くと、しっかりな、と耳打ちする。浩太が締めくくりのように声を張った。
「よし!じゃあ、お前らに銃の扱いを教えてから出発だ!」
「ううん、そんなことないよ。ただ、どこにいるのかなって」
浩太が彰一に一声掛けてから煙草とライターを投げ渡して言った。
「くぐもったような音だったし......距離があることは間違いないんだけどな」
「浩太さんは、心当たりあります?」
祐介の問いに浩太は首を振った。
「三ヶ森のサンリブはどうですかね?」
「距離が離れてないぜ。ここからなら車ですぐだ」
阿里沙は発言を一蹴されるや否や、頬を膨らまして真一を睨みつけた。
「じゃあ、真一さんはどこだと思うんですか?」
「いや......ほら、俺はもともと小倉の人間だから......」
阿里沙の勢いに圧され、たじろいだ真一も、これといった場所を特定できてはいない。
揃って首を捻る中、あっ、と頓狂な声をあげたのは祐介だ。全員の視線が集中する。
「そういえば、一件ある......」
「どこだ?」
浩太の声に、祐介は正解か分からないけれど、と保険をかけて言った。
「希望ヶ丘に登校する途中に通谷っていう筑豊電鉄の駅があるんですけど、確か、その駅の側に大型のマーケットがあります」
「あ!中間市のショッパーズモール!」
ピン、と阿里沙が右手を掲げた。彰一も紫煙の奥で短く頷く。
「確かにあったな......滅多に行かないから忘れてた。で、どうするよ浩太さん」
険しい表情で彰一が言った。どんな危険が待ち受けているのか分からない場所に、わざわざ行く必要があるのか疑問に思っている証拠だろう。
警察署の時と同様、生きた人間が集まる場所には死者も集う。それも、大規模なモールにだ。
一体、どれだけの死者が集結しているのだろうか。想像すればするほど不安は膨らんでいく。再び訪れた沈黙を破ったのは真一だった。
「引き際を明確にしておこうぜ......」
引き際、と眉を寄せた彰一に被せて真一は続ける。
「そう、引き際だぜ。どうなったら退却する?」
真一が浩太に尋ねる。判断を任された浩太は、腕を組んで思考を巡らせる。
「......トラックに先頭を走ってもらって、死者に囲まれそうになったら撤退しよう」
「人数は?」
彰一が叩み掛けるように鋭く訊いた。
「......トラックは十人、軽は五人が限度だろうな」
提案を終えた浩太は、全員を見回す。彰一は、今なお深く眉間に皺を寄せているが、呆れたとばかりに溜め息を吐いた。
「......分かった。俺一人が反論しても無駄だろうし、もともとは達也って人を探すことがメインだったしな」
彰一は祐介の肩を叩くと、しっかりな、と耳打ちする。浩太が締めくくりのように声を張った。
「よし!じゃあ、お前らに銃の扱いを教えてから出発だ!」
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