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第7話
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「おい、なんの騒ぎだよ。加奈子が起きちまったろうが」
祐介が寝ていた隣の部屋から彰一と加奈子が顔を出し、不安そうに表情を陰らせていた。
祐介は、加奈子に見せるように、首を振る。
「分からない......少なくとも、あの異常者達じゃなさそうだけど......」
彰一は、その言葉を聞くと、身を翻して部屋に戻り、祐介と同じスタンドライトを手にして現れた。
祐介と頷き合って、ジリジリと、廊下に敷かれた絨毯を削るような足取りで進んでいきながら、彰一が小声で訊いた。
「物音以外に、何かあったか?」
「ああ、誰かの怒鳴り声がした」
廊下を抜けた一向は、受付フロアに出た。どうやら、一階にいたようだ。パネルに表示された部屋の番号を押して、入室する流れをとる、少し古いタイプのホテルだ。その鍵を受けとる皿が割れている。パネルも、あちこちが破損していた。床に散らばった破片も、汚れや踏まれた跡が目立たたず、真新しさから、物音の原因はこれだろうと、祐介は結論付けた。だが、肝心の声の主がいない。
「おい......あれ、みろよ」
彰一が指差したのは、ホテルの出入り口に当たる自動扉だった。
こういったホテル特有の薄暗い駐車場内において、不自然な二つの光線が、自動扉の前を横切っている。
「......車かな?」
阿里沙は鬼胎を隠すように加奈子を抱き締めながら、細い声音で囁いた。
なんとか、聞き取れた祐介は、自らの唇へ、ぴん、と立てた人差し指を当てる。
「少し待ってろ」
短く三人を止めると、祐介は生唾を呑んだ。仲間がいることで安心したのだろう、先程とは違い空気が喉を通る。
自動扉は、電源が切られており、開かなくなっていたが、扉の下部にある鍵も開いたままになっている。ガラスが割れていないのは、誰かがここを抜けた証だ。仮に平和な時間であっても、男女数人が潜む場所に鍵を掛けない筈がない。
祐介は、屈んで自動扉を両側に開いた。両扉をスライドさせると、侵入してきた生温い風と雨音が、底気味悪い心持ちを、更に煽りたてる。
「こんだけ言っても、まだ分からないのかよ!真一!」
突然の大声に、心臓が飛びだすのではないか、という程に驚いた祐介は、同時に声が出てしまい、駐車場にある二つの影が一斉に振り返った。
いや、一人はトラックに乗り込む寸前だったのだろう、片足が、まだタラップに乗っている。それを制するようにトラックの正面で両腕を広げた男と裕介の距離があり、車のライトを背中に受けているので顔は分からない。だが、声の調子から、バツが悪そうだ。
トラックを停めていた男が祐介へと手を差し出して言った。
「ああ、起きたのか、えっと......確か、上野祐介だったかな?」
祐介が寝ていた隣の部屋から彰一と加奈子が顔を出し、不安そうに表情を陰らせていた。
祐介は、加奈子に見せるように、首を振る。
「分からない......少なくとも、あの異常者達じゃなさそうだけど......」
彰一は、その言葉を聞くと、身を翻して部屋に戻り、祐介と同じスタンドライトを手にして現れた。
祐介と頷き合って、ジリジリと、廊下に敷かれた絨毯を削るような足取りで進んでいきながら、彰一が小声で訊いた。
「物音以外に、何かあったか?」
「ああ、誰かの怒鳴り声がした」
廊下を抜けた一向は、受付フロアに出た。どうやら、一階にいたようだ。パネルに表示された部屋の番号を押して、入室する流れをとる、少し古いタイプのホテルだ。その鍵を受けとる皿が割れている。パネルも、あちこちが破損していた。床に散らばった破片も、汚れや踏まれた跡が目立たたず、真新しさから、物音の原因はこれだろうと、祐介は結論付けた。だが、肝心の声の主がいない。
「おい......あれ、みろよ」
彰一が指差したのは、ホテルの出入り口に当たる自動扉だった。
こういったホテル特有の薄暗い駐車場内において、不自然な二つの光線が、自動扉の前を横切っている。
「......車かな?」
阿里沙は鬼胎を隠すように加奈子を抱き締めながら、細い声音で囁いた。
なんとか、聞き取れた祐介は、自らの唇へ、ぴん、と立てた人差し指を当てる。
「少し待ってろ」
短く三人を止めると、祐介は生唾を呑んだ。仲間がいることで安心したのだろう、先程とは違い空気が喉を通る。
自動扉は、電源が切られており、開かなくなっていたが、扉の下部にある鍵も開いたままになっている。ガラスが割れていないのは、誰かがここを抜けた証だ。仮に平和な時間であっても、男女数人が潜む場所に鍵を掛けない筈がない。
祐介は、屈んで自動扉を両側に開いた。両扉をスライドさせると、侵入してきた生温い風と雨音が、底気味悪い心持ちを、更に煽りたてる。
「こんだけ言っても、まだ分からないのかよ!真一!」
突然の大声に、心臓が飛びだすのではないか、という程に驚いた祐介は、同時に声が出てしまい、駐車場にある二つの影が一斉に振り返った。
いや、一人はトラックに乗り込む寸前だったのだろう、片足が、まだタラップに乗っている。それを制するようにトラックの正面で両腕を広げた男と裕介の距離があり、車のライトを背中に受けているので顔は分からない。だが、声の調子から、バツが悪そうだ。
トラックを停めていた男が祐介へと手を差し出して言った。
「ああ、起きたのか、えっと......確か、上野祐介だったかな?」
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