感染

saijya

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第6話

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    見慣れた景色の筈が、どこか異世界にでも迷い混んだ気分だった。巨大なパチンコ店、歩きなれたアーケード、行き着けだったラーメン屋、全てが反転したように、街そのものが、静寂の中に屹立しているみたいだった。
    靉靆とした街中を歩き回る暴徒の数は、ここにきて一気に増えてきた。トラックが脇を抜ける際に、飛び掛かろうとしてくる。浩太が、ややスピードをあげてやり過ごしていく中、黒崎の大型図書館前の交差点で、真一は緊張した声で言った。

「浩太、気づいてるか?」

「ああ、分かってる。奴等が集まっているってことだろ?」

 真一は首を横に振った。

「違うぜ。奴等が向かってる方向には何がある?」

 方向、とオウム返した浩太は、暴徒の歩みを注意深く眺めた。こちらに気付いていない先頭集団は、ただただ真っ直ぐに足を進めており、その先で国道二百号線の大きな交差点が見えている。まばらに散らばっていた暴徒達は、人数をそこで急激に増加していた。
    車内で、浩太が唇を噛む。

「ああ、理解できた。そういう意味か......」

 ぐっ、とハンドルを強く握り締める。この交差点の先にあるのは、八幡西警察署だ。暴徒達は、揃ってそこに向かっている。
    つまりは、間違いなく、警察署になにかがあるのだろう。そして、暴徒の目的はただひとつ。喉を鳴らす浩太に、真一が小銃の安全装置を外しながら頷いて訊いた。

「外れだったか?」

「いいや、大当たりだ」

 すっ、と持ち上がった浩太の指先は、八幡西警察署の二階を指していた。
 窓から身をのりだし、危険を省みずに大声で叫ぶ人影がある。浩太達よりも年下だろうか、張りのある声が響いている。

「達也、少し荒れそうだが大丈夫か?」

 真一が小窓を開けると、達也は既に荷台の最奥、運転席側で準備を終えていた。暴徒に乗り込まれる可能性を考慮してか、かき集めたように達也の周辺には銃が転がっている。

「おう、いつでもいける」

 達也の声に、浩太が頷いて、自身を奮い立たせるように威勢よく叫んだ。

「絶対に助け出す!いくぞ!」

 三人の重なった声に呼応するかのように、トラックはそのスピードをあげた。八幡西警察署まで、残り数メートルだ。
 トラックの音に反応した暴徒の集団が、八幡西警察署の破壊された門から飛び出してくる。その光景は、さながら蟻の巣穴のようだった。割れたフロントガラスから、鼻をつんざく腐臭が漂ってくる。一体、どれだけの人数が、警察署内にいるのだろうか。
    真一の89式小銃が唸りをあげた
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