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世界終わろう委員会
成仏したはず
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「ーー尾張さんは、消えてしまいました」
椎堂さんの質問に答える。
「もう、心残りはない?」
「ーー心残りですか? それはーー無いと言えば嘘になりますね。でも、もうそれを果たすことはそもそも出来ないですから」
僕のその諦観にも似た発言に、椎堂さんは、
「そう」
とだけ相槌を打つと、座っていた来客用の椅子から立ち上がり、
「じゃあ、もう自分を許してあげよう?」
と、呟くと、僕の頭を包むように抱きしめる。
「っ椎堂さん⁉︎」
「紀美丹君はよく頑張ったよ? 尾張さんの為にできるだけの事をしてあげた。だからもう、自分を責めなくてもいいんだよ?」
僕が自分を責めている?
そんなこと。そんなことは、あるのかもしれない。ーーいや、ずっとそうだった。あの日尾張さんを一人で帰したりしなければ。僕がちゃんと家まで送っていれば。尾張さんと水城の間に何があったのかもっと早く気付いていたら。ーーきっと尾張さんが水城に殺されることはなかった。
だからあの日。ーー尾張さんの幽霊に出会った日。僕は彼女が怖かった。彼女に責められるのが怖かった。ーーだけど、それでも彼女が好きだったから。彼女にできるだけの事をしてあげたかった。
彼女が、死んでからの僕たちとの時間が彼女の慰めになったのなら。
尾張さんが満足して成仏できたなら。僕は、自分を許しても良いのだろうか。ーー許すことが出来るのだろうか?
「僕はーー僕を許してもいいんでしょうか? 尾張さんは僕を許してくれるでしょうか?」
その声に応えたのは、椎堂さんではなかった。
「そもそも。私、別に紀美丹君のこと恨んでないのだけれど?」
開かれたドアの前に立っていたのは、消えたはずの尾張さんだった。
「それより、目の前でいちゃつくのやめてもらっていいかしら」
椎堂さんの質問に答える。
「もう、心残りはない?」
「ーー心残りですか? それはーー無いと言えば嘘になりますね。でも、もうそれを果たすことはそもそも出来ないですから」
僕のその諦観にも似た発言に、椎堂さんは、
「そう」
とだけ相槌を打つと、座っていた来客用の椅子から立ち上がり、
「じゃあ、もう自分を許してあげよう?」
と、呟くと、僕の頭を包むように抱きしめる。
「っ椎堂さん⁉︎」
「紀美丹君はよく頑張ったよ? 尾張さんの為にできるだけの事をしてあげた。だからもう、自分を責めなくてもいいんだよ?」
僕が自分を責めている?
そんなこと。そんなことは、あるのかもしれない。ーーいや、ずっとそうだった。あの日尾張さんを一人で帰したりしなければ。僕がちゃんと家まで送っていれば。尾張さんと水城の間に何があったのかもっと早く気付いていたら。ーーきっと尾張さんが水城に殺されることはなかった。
だからあの日。ーー尾張さんの幽霊に出会った日。僕は彼女が怖かった。彼女に責められるのが怖かった。ーーだけど、それでも彼女が好きだったから。彼女にできるだけの事をしてあげたかった。
彼女が、死んでからの僕たちとの時間が彼女の慰めになったのなら。
尾張さんが満足して成仏できたなら。僕は、自分を許しても良いのだろうか。ーー許すことが出来るのだろうか?
「僕はーー僕を許してもいいんでしょうか? 尾張さんは僕を許してくれるでしょうか?」
その声に応えたのは、椎堂さんではなかった。
「そもそも。私、別に紀美丹君のこと恨んでないのだけれど?」
開かれたドアの前に立っていたのは、消えたはずの尾張さんだった。
「それより、目の前でいちゃつくのやめてもらっていいかしら」
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