上 下
44 / 85
世界終わろう委員会

流星群 

しおりを挟む
 重い自転車のペダルを踏み抜く。

 緩い坂道を登ると、街の明かりはもう殆ど届かず、真っ暗な闇が僕達の行先に広がりはじめた。

 自転車のライトが、前を進む尾張さんを照らす。
 その姿は、薄ら透けて見えた。見間違いだろうか。目をこする。

 次に目を開いた時、空に広がる満天の星空が目に入った。

 それは、街中では決して見れない。煌々と輝く光の海のようで、今にもこぼれ落ちそうだった。

「紀美丹君そろそろよ」

 せっかく用意したテントだったが、どうやら設営している時間はないようだった。

 今にもこぼれ落ちそうだった星空に、一筋の光が線を描いた。

 尾張さんが自転車をこいでいた足を止める。

 それに合わせて、僕も足を止め、濡れたアスファルトを踏む。

 辿り着いたのは、周囲を森に囲まれた棚田だった。既に稲の収穫が終えられた棚田には昨日の雨で水たまりが出来ていた。

 尾張さんは、自転車をガードレールに立てかけて、棚田の畝に降りていく。

「尾張さん?」

「こっち」

 疑問に思いながら、尾張さんの後を追う。

 畝に降りた尾張さんの隣にたつ。

「紀美丹君来たわ。流星群が!」

 尾張さんに促され、空を見上げる。そこに映された光景に僕は言葉を失った。

 あふれそうな満天の星の海から、一つまた一つと流星がこぼれ落ちる。

 それは、時を経るごとに数を増やしていた。
 やがて、星空全体が今にも降ってくるのではないかと錯覚させるほどの量の星が流れ始めた。

「願い事しましょうか? 紀美丹君」

 尾張さんがぽそりと零した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...