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一難去ってまた一難

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 目を覚ますと、知らない天井だった。

 身体を起こし周囲を見回すとどうやら牢の中にいるようだった。

「ーー夢か」

 アスハは、目を瞑った。

「アスハ⁉︎ アスハ‼︎ 起きてください‼︎ 現実逃避してる場合じゃないですよ‼︎」

 ラプティが隣の牢の中で必死にアスハを呼ぶ。
 雑音がうるさいな。と寝言を言いながら、アスハは寝返りを打つ。

「アスハ‼︎ このままだと私たち死刑ですよ‼︎ 死刑‼︎」

「いや、なんでだよ‼︎」

 アスハは勢いよく身体を起こすと、隣の牢にむけて叫ぶ。

「ーーていうかここどこ⁉︎ なんで俺こんなところにいんの⁉︎」

 アスハは、意識を失う直前の出来事を思い出そうとする。

「ーーたしか、魔王の側近にいきなり襲われて、それをカッコよく返り討ちにした俺は、王様になって多種族ハーレムを築いて綺麗な嫁さんと幸せなキスをして何不自由なく暮らしていたはず?ーーまさか、反乱を起こされたのか? おのれ魔王‼︎」

「九割違いますよ⁉︎ なんですかそれ⁉︎ 夢の話ですか?ーー強化魔法の影響でラリったアスハはそのまま意識失ったんですよ!ーーくっ‼︎ あの時、そこの金髪ロリが足さえ引っ張らなければ・・・・・・」

 ラプティは壁を向いて横になっている金髪の少女をジトッとした目で睨む。

「私は悪くないぞ。そもそもこーなったのはどこぞのピンクの悪魔とか呼ばれてる奴の悪評のせいだ」

「私がいったい何をしたというんですか‼︎ ちょっと角刈りに魔法放ったくらいで別に悪いことなんかしてませんよ‼︎」

「ーーあれは致命的でした」

 青い髪のメイド服姿の女性は、体育座りをしながらボソッと呟く。

「ちょっ、ちょっと待て? 結局なんで俺たちは牢に入れられてるんだ?ーーやっぱり魔王に捕まったのか?」

「いえ、王国軍に捕まりました」

「なんでだよ‼︎」

 ラプティは落ち込んだ表情をしながら事情の説明を始める。

「私の立てた『マリベル花火作戦』は九割成功していました。おかげで私たちにはあの爆発での怪我人はいませんでした。ーーでも・・・・・・」

「でも?」

「お前がマリベル花火を吹っ飛ばした方向にあいつの屋敷があったんだ」

 金髪の少女は身体を起こすと話を引き取る。

「ーーアリアの奴はあれでしつこいからなぁ」

「どういうことだよミリア?ーーアリアってアリアさんか? アリアさんの屋敷に何が?」

「全壊した」

「⁉︎ーーじゃあアリアさんは?」

 ミリアはため息をつきながら話の顛末を語る。

「残念ながら・・・・・・」

「ーーそんな⁉︎」

「無傷だ」

「無傷かよ‼︎」

 ミリアは至極残念そうに頬杖をつく。

「つまり、こういうことなのか?ーーよく覚えていないが、俺が吹っ飛ばしたマリベル花火がアリアさんの屋敷を破壊した結果、俺たちは魔王軍ではなく、王国軍に捕まって牢屋に入れられたと?」

「ついでに言うと、私たちには魔王軍の疑いもかかっている」

「は⁉︎ なんで⁉︎」

「そこの『ピンクの悪魔(笑)』とユキとお前の行動のせいだが?」

 ラプティとユキがサッと顔を逸らす。

「いや待て‼︎ 俺がいったい何をしたと⁉︎」

「ーー酔った勢いで角刈りに喧嘩吹っかけたり、他の冒険者にメンチ切ったり。まぁ、とどめはアリアの屋敷爆破した事だが?」

 アスハはサッと目を逸らす。
 ミリアはジト目で三人を見ながら、話を続ける。

「ーーそれが数日前の話だ。お前はずっと寝てたからな。ーーそして、今日は裁判の日だ」

 ミリアが話を締めるのを聞いていたのか、牢の外に人影が現れる。
 その人影はスーツとネクタイを着こなしカツカツと石畳を鳴らしながら、牢越しにアスハに顔を見せる。

「弁護人を努めさせていただきます。ムノーナと申します。よろしくお願いします」


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