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歯車が噛み合わない

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 草原をチキンが走る。羽を毟られ頭を落とされながらも、懸命に生きるチキンを追う人影が四つ。

「ミリア! そっち行ったぞ!」

「気絶してます‼︎ なんでですか⁉︎ まだ何もしてないのに‼︎」

 人影は三つになった。
 気絶したミリアにノーヘッドチキンの鉤爪が迫る。
 間一髪のところで、ユキがノーヘッドチキンの僅かに残った首を掴む。

「やった‼︎ やっと一匹捕まえた‼︎ーーってやってられるか‼︎」

 小一時間かけて、捕獲したノーヘッドチキンは一匹のみだった。

 顔合わせを兼ねて簡単な依頼を受けようと、ノーヘッドチキンの捕獲に再挑戦したアスハ達だったが、その成果は芳しくない。

 危険はほぼ無い依頼ではあるが、野生のノーヘッドチキンを素手で捕獲するのはかなり骨が折れた。
 ミリアがいつのまにか気絶しているのはいつも通りであったが、アスハの体調も万全ではない。
 そして、ラプティにも問題があった。

「魔法で奴らを麻痺させて動きを止めます‼︎ パラライズショック‼︎」

「ラプティ⁉︎ まて! それはチキンじゃない‼︎」

 ユキが麻痺魔法を受けてビクンッと一度震えるとそのまま倒れて動かなくなる。
 そして、倒れたユキにノーヘッドチキンが群がり、集団で踏みつけはじめる。

「ユキー⁉︎ ラプティ‼︎ 味方を攻撃するな⁉︎」

「? そんなことするわけないじゃないですか? 私をなんだと思っているんですか‼︎ 失礼な‼︎ パラライズショック‼︎」

「イギっ⁉︎」

 ラプティの麻痺魔法を受けたアスハは、一度ビクンッと震えると地面に倒れる。

 先程から何度も繰り返された光景であった。

「パラライズショック‼︎ くっ⁉︎ 素早い‼︎ アスハ‼︎ どこへ行ったんですか⁉︎ 早く奴らを捕まえてください‼︎ 逃げられてしまいます‼︎」

 草むらに突っ伏しているアスハは痺れる舌で反論しようとするがそれは叶わない。
 
「ーーなんだこの状況」

 気絶から目を覚ましたミリアが倒れ伏したアスハとユキ、所構わずパラライズショックを撃ちまくるラプティ。逃げまどうチキンをぼーっと見つめながら呟く。
 その音に反応したラプティが、パラライズショックを放つ。

「そこにもいましたか! パラライズショック‼︎」

「は?」

 ミリアが、ラプティの凶行に間の抜けた声を出すと同時に、その小さな身体に魔法が直撃する。
 それを視界の端で捉えたアスハが、呻き声をあげる。

「?」

 ミリアは、体についた葉っぱを払うと、何事もなかったように、ラプティに向かって歩いていく。

 外れたのか? アスハの胸中を疑問が埋め尽くす。
 徐々に身体の痺れがとれていく。アスハが何とか身体を起こした時、ミリアがラプティの背後に立っていた。

「なにすんだ‼︎ 駄ピンク‼︎」

 その掛け声とともにバックドロップを喰らわせる。

「⁉︎ グエッ⁉︎」

 ラプティが突然の背後からの強襲に意識を失う。そして、バックドロップを喰らわせたミリアも、意識を失ったラプティの下敷きになり気絶した。

 ノーヘッドチキンがそんな二人に向かって群がり、脚で踏みつけ始める。

「ーーなんだこれ」

 呆然と現状を確認すると、アスハは草むらに仰向けに寝転がる。

「ーーおそらあおい・・・・・・」

 暫く現実逃避していたアスハの顔を何かが覗き込む。

「ーーあの、大丈夫?」

 風鈴が鳴ったようにか細く、しかしよく通る声だった。
 真っ黒な長髪を風に靡かせながら、その少女は倒れるアスハを拾った木の棒でつつく。

「ーー誰?」

 アスハの口からこぼれた呟きに、黒髪の少女はビクッと震えるとオドオドと話しだす。

「あっ、えっと、わ、我が名はフィア‼︎ 天に選ばれし最強の調教師にして、魔物を統べるもの‼︎」

 アスハは考えるのをやめた。

「ーーおそらあおい・・・・・・」

「えっ⁉︎ あの、ちょっと! 無視しないで⁉︎」

 フィアは涙目でアスハの身体を揺らす。

 また、変なのが現れた。
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