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僕達の異世界生活

異世界に転生したら、なんかみんないか。 

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 みんなで円になって砂に文字を書く。

「しかし、あれだけの事故にあったのにまた全員出会えるなんて奇跡ってやつかな?」

「身体はこんなんだけどね」

 父さんの言葉に香奈が返す。

「でも、この身体もそんなに悪いものでもないよ? お腹は減らないし、再生力もすごいし、エネルギー源はあの太陽っぽいやつみたいだし」

「それ自分で調べたのか? すごいな!」

 父さんが珍しく僕を褒める。照れ臭くなった僕は、顔を触手で触りながら、

「そういう父さんだってこの住処の秘密を自分で見つけたんでしょ? そっちの方がすごいよ」

 父さんの石を投げ捨てるあの行動は、この場所の秘密を知らなければ出来ない行動だった。
 つまり、父さんはこの場所で少なくとも何度か実験を行っていた筈なのだ。たった一人で。

「まぁ、時間は結構あったからな。それに他にやることもなかったし」

「それでもすごいと思うよ。たった一日かそこらでこの場所の機能を暴いたんだから」

 父さんは、少し考えるように時間をあける。

「一日じゃないぞ? 少なくとも、あの太陽が百回以上は昇ったり沈んだりを繰り返していた筈だ」

 え? どういうことだ? 僕が目を覚ましてからまだ太陽は一度しか沈んでいない筈だ。しかし、父さんは太陽が百回以上沈んだという。

「この髭だって、最初はなかったけど暫くしたらいつのまにか伸びてきたんだしな」

 父さんが、いつも通り適当なことを言っているんじゃないとしたら、僕達と父さんがこの世界にきた時期がズレているということになる。
 というか、その髭、元から生えてたわけじゃないってことは、僕にも生えるのか?
 嫌だなぁ。普通に嫌。

「えっじゃあ、その髭あたしにも生えるの? 嫌なんだけど‼︎」

 香奈が愕然とした様子を見せる。

「そういえば、あっちの洞窟に石像みたいなのがあったけど、もしかしてあれって父さんが作ったの?」

「いや、知らんが? 私はこの場所から殆ど動いてないぞ? 外は危ないし」

 なんか引きこもりみたいなこと言い出した。いや、確かに黒い影がいるから危ないんだけどさぁ。
 冒険心ってものはないのだろうが。

「冒険は少年少女の特権なんだよ。大人は自然と安定を求めるようになるんだ」

 なぁ母さん。と同意を求める父さん。

「ーーーーーーえぇ。そうですね」

 母さんがキョドりながら同意する。
 そういえば、母さん見つけた時、岩場に挟まってたけど、あれって冒険してたら出られなくなったとかだったのだろうか。
 この母親なら、ありうる。

 母さんをじーっと見ていると、話題を逸らすように、

「しかし、あなた達の見た目どう考えてもアレですね」

 と言い出す。

 僕達はお互いを見回すと、頷き合う。

「なんていうか」

「そうだね」

 そして、全員がその言葉に「」をつける。

「「「「みんないか!」」」」
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