異世界に転生したら、なんかみんないた。

僕達の異世界生活

なんかみんないた

　花子のその日本語に反応したのは、僕だけではなかった。

　僕にくっついていたプニ男と長老も落ち着きなく騒ぎ出す。
　僕もはやる気持ちを抑えて、慎重に言葉を選び砂に文字を綴る。

「もしかして、あなたも日本人だったんですか？　花子さん？」

　それを見た花子は、触手で砂をなぞりはじめる。

「花子って誰よ！　私は香奈よ！　鈴木香奈！」

「失礼しました。鈴木さん。どうもはじめまして。奇遇ですね。僕の妹も鈴木香奈って言うんです」

　まさか、妹と同姓同名の人が同じ軟体生物になってるなんてなぁ。びっくりしたなぁ。

「いや、その反応はおかしい」

　僕達の会話に長老が割って入る。

「えぇ！？　もしかして、長老も日本人なんですか⁉︎」

「まさかボスも⁉︎」

「長老とかボスとかなに言ってるか知らんけど、私は鈴木悟と言います。多分、君らの父親です」

　長老が、いきなり父親です。宣言をしてくる。

「いやいや、ありえないでしょ。僕の父親が髭の軟体生物なわけがない！」

「ありえないよねー。お兄ちゃん」

　どうやら鈴木さんとは気が合うようだ。流石、妹と同じ名前なだけはある。いつのまにかお兄ちゃん呼びになっているし。

「いや、君らもう半分認めてるよね？　接し方がいつも通りだもん。私が父親だって気づいた上でその態度になってるよね？」

「「ちょっとなに言ってるかわかんない」」

　僕の書いた言葉に鈴木さんが「」を付け足す。

「あんまりお父さんをからかうものではありませんよ？」

　僕達の様子を見守っていたプニ男が口を挟んでくる。

「プニ男！　もしかしたらと思っていたけど、あなたも日本人だったんですね！」

「確かにわたしは日本人ですし、さらに言えば、恐らくあなたの母親の鈴木葵ですが。プニ男などという珍妙な名前になった覚えはありません」

　この話し方、覚えがあるなぁ。

「もしかして、母さん？」

「お母さんなの？」

　僕と妹の反応を見たプニ男改め母さんは、ニッコリと笑う（笑っているのか？　これは？　）と触手を広げる。

　僕達は母さんの触手に飛び込んでいく。
　ドチュッと水っぽい音がした。

「なぁ。私の時と反応違いすぎないか？」

　長老改め父さんが砂に何か書いているようだったが、今はそれどころではないのでスルーした。