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少女怒る
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少女は目を見開いた。
見知らぬ天井で目を覚ましたサクヤは、お手洗いを探して城の中を歩きまわり、大きな部屋の扉の前で漏れ聞こえてくる会話に誘われてその扉を開いた。
その部屋の光景は、幼女の脳内キャパシティを上回り、その灰色の脳細胞を容易に焼き切った。目の前に広がっていたのは、見知らぬ女性を抱きとめるアルフォードの姿だった。
「アル、くん? その女、誰?」
「サク⁉︎ どうしてここに?」
アルフォードは、驚いたような表情を浮かべながらも、女性の腰から手を退けることはしない。
「これは、困りましたねアルフォード様」
「リズ? 何を言っているんですか?」
リズと呼ばれた女性は、サクヤをジッと見つめると棒読みで状況を説明し始める。
「サクヤ様。落ち着いてください。私は、アルフォード様の浮気相手などではありません。ただの昔からの幼馴染みのメイドです。アルフォード様が別室にお水を持ってきて欲しいという言い訳じみた要求をしてきたので、仕方なくお持ちしたのです。そして、部屋に入った私がカーペットの裾に足をとられて転びそうになったところをアルフォード様が抱きとめて下さったのです。けして、これから卑猥な事を始めるとか、実は昔からそういう関係だったとか、そんな事は一切ありません。ですから、安心してその扉を閉じてお部屋にお戻りください」
「リズさーん⁉︎ 状況説明ありがとうございます? ですが! その棒読みと、後から付け足した一切必要がなかった情報は何ですか⁉︎」
「アルくんの、浮気者ー‼︎‼︎‼︎」
少女は扉を勢いよく閉めると、廊下を走り出した。
「サクーッ⁉︎ 待ってください‼︎ 誤解です‼︎」
アルフォードは、走り去る少女に向けて手を伸ばすが届かない。
「前途多難ですね。アルフォード様」
棒読みで渇いた笑いを溢すリズの腰からアルフォードが手を離すと、リズは綺麗に受け身をとりさっと体勢を立て直す。
「リズ。どういうつもりですか?」
「恋は障害が多いほど燃えるものですよアルフォード様?」
リズは、悪びれもせずにそう言いながら、服のホコリを払う。
「それに、私としてはいきなり現れた正妻に一発かましておいた方がよろしいかと思いまして」
「正妻って。ーーそもそも私は、愛人を持つつもりは・・・・・・」
目を逸らすアルフォードにリズが微笑みながら一礼する。
「一国の王子として多くの色を知り、見聞を深めることは重要かと思われます。それが回り回ってこの国の為です」
「色欲に溺れた過去の王たちの末路は大体破滅だったと思うのですが?」
「それぐらいの事は飲み干せるような器を持ってくださいという話です」
アルフォードは、ため息を吐くとこの話は終わりだとばかりに目を逸らす。昔からリズに口論で勝てた事はない。
「そんなことより、追いかけなくてもよろしいのですか?」
「どの口が言ってるんですか」
「この麗しい口ですがなにか?」
アルフォードは口を噤むと、扉を開きサクヤの後を追いかける。
見知らぬ天井で目を覚ましたサクヤは、お手洗いを探して城の中を歩きまわり、大きな部屋の扉の前で漏れ聞こえてくる会話に誘われてその扉を開いた。
その部屋の光景は、幼女の脳内キャパシティを上回り、その灰色の脳細胞を容易に焼き切った。目の前に広がっていたのは、見知らぬ女性を抱きとめるアルフォードの姿だった。
「アル、くん? その女、誰?」
「サク⁉︎ どうしてここに?」
アルフォードは、驚いたような表情を浮かべながらも、女性の腰から手を退けることはしない。
「これは、困りましたねアルフォード様」
「リズ? 何を言っているんですか?」
リズと呼ばれた女性は、サクヤをジッと見つめると棒読みで状況を説明し始める。
「サクヤ様。落ち着いてください。私は、アルフォード様の浮気相手などではありません。ただの昔からの幼馴染みのメイドです。アルフォード様が別室にお水を持ってきて欲しいという言い訳じみた要求をしてきたので、仕方なくお持ちしたのです。そして、部屋に入った私がカーペットの裾に足をとられて転びそうになったところをアルフォード様が抱きとめて下さったのです。けして、これから卑猥な事を始めるとか、実は昔からそういう関係だったとか、そんな事は一切ありません。ですから、安心してその扉を閉じてお部屋にお戻りください」
「リズさーん⁉︎ 状況説明ありがとうございます? ですが! その棒読みと、後から付け足した一切必要がなかった情報は何ですか⁉︎」
「アルくんの、浮気者ー‼︎‼︎‼︎」
少女は扉を勢いよく閉めると、廊下を走り出した。
「サクーッ⁉︎ 待ってください‼︎ 誤解です‼︎」
アルフォードは、走り去る少女に向けて手を伸ばすが届かない。
「前途多難ですね。アルフォード様」
棒読みで渇いた笑いを溢すリズの腰からアルフォードが手を離すと、リズは綺麗に受け身をとりさっと体勢を立て直す。
「リズ。どういうつもりですか?」
「恋は障害が多いほど燃えるものですよアルフォード様?」
リズは、悪びれもせずにそう言いながら、服のホコリを払う。
「それに、私としてはいきなり現れた正妻に一発かましておいた方がよろしいかと思いまして」
「正妻って。ーーそもそも私は、愛人を持つつもりは・・・・・・」
目を逸らすアルフォードにリズが微笑みながら一礼する。
「一国の王子として多くの色を知り、見聞を深めることは重要かと思われます。それが回り回ってこの国の為です」
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「そんなことより、追いかけなくてもよろしいのですか?」
「どの口が言ってるんですか」
「この麗しい口ですがなにか?」
アルフォードは口を噤むと、扉を開きサクヤの後を追いかける。
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