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42話 笑み

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「お帰りなさいセレス。怪我はない?病気は大丈夫だった?
 可愛い愛しいセレス会いたかったわ」

 と、城につくなり母に抱きしめられました。

 こんにちは。
 お城に戻ると家族そろっての大歓迎に感動してしまい、涙を抑えるのに必死なセレスティア・ラル・シャンデール(10歳)です。
 母に抱きしめられて、兄sと父にもお帰りとナデナデされます。

 なんでしょう。この絵にかいたような幸せ家族の図は。
 フレンド達との時間も楽しく貴重ですが家族との時間も大好きです。
 離れていた間寂しくて泣きそうだったこともあったのは内緒です。

 ご飯の時に友達が出来たのも報告したいと思います。

 そして抱きしめられて気づきます。
 母のお腹が少し大きいです。

 ――そういえば、ゲーム中で母は妊娠していました。
 臨月でもう少しで生まれるというところで――魔族の襲撃にあって殺されてしまうのです。
 その時お腹を貫かれ、裏ダンジョンではBOSS化して「お腹の赤ちゃんはどこ?私の可愛い坊やを奪ったのはあなた達?」とお腹に穴をあけた状態で勇者一行に襲い掛かってきたはずでした。

「お母様、お腹……」

 私が聞けば、母はくすっと笑い

「もうすぐセレスもお姉ちゃんね?」

 と、にっこり笑ってくれます。

 お姉ちゃん……なんて甘美な響きなのでしょう。
 兄sのように下の子を可愛がれるいい姉になれると嬉しいです。
 というか、可愛がりたいです。
 赤子の時の記憶があるのですから、赤ちゃんの気持ちがわかる私だから出来る事もあるでしょう。
 今から生まれるのがとても楽しみであります。

 絶対ゲームのような未来にはさせません。
 もう少し家族に強力な結界を張っておいたほうがいいかもしれません。
 ばれない程度に聖都にも結界を張っておきましょう。

 母に許しを得てお腹をなでながら思うのです。
 この世界では絶対この子は無事に生まれてくるようにと。
 お姉ちゃんが絶対守ってみせますからね。元気に育ってください。


■□■


「――で。いつになったらお嬢様に力を隠していることを聞くのですか!?」

 家族団らんの時間が終わり、子供たちが寝静まった頃。
 シャティルの執務室で、セディスが興奮した面持ちで聞けば

「うん?聞く必要あるかい?」

 と、シャティルが答えた。
 セレスの可愛い寝顔を見に行くんだとごねるシャティルを無理やりセディスが執務室に連れ込んだのである。

「や、あるでじょう!?
 絶対あるでしょう!?
 堕天使を一撃で倒すなんておそらく陛下と同レベルかそれ以上ですよ!???
 その他もろもろいろいろひっくるめて聞く必要があるでしょう!?」

「うーん。君の言いたい事もわかるんだけどね。
 でも、一歳から周りにレベルをあわせて力を隠していたのを見ると、セレスはあまりその事に触れてほしくないんじゃないかな。
 普通でありたいと願うから、高レベルなのを隠していたわけだからね」

「触れてほしくないから放置しておけるレベルじゃないですっ!??
 古代の魔道具の仕組みまで理解しているのですよっ!!
 スクロール複製機が製造できるレベルでですっ!!
 どれだけ国の発展に役立つか考えればわかりますよね!?
 記憶を覗く魔道具を使ってでも陛下は知っておくべきでしょう!?」

 セディスが叫びながら言えば、シャティルは椅子に座ったまま、セディスを上目遣いに見つめて来る。

「……?
 な、なんですか?」

「君今、スペシャルナイトのランクはSだっけ?」

「はい。そうです」

「じゃあ僕の権限でSSまで引き上げるよ。
 機密情報もランクSSまで閲覧できるようになる」

「それが今の話と何の関係が?」

「……うん?あるよ?
 SS-6625を閲覧してみるといい。
 それでもその意見が変わらないなら……」

「変わらないなら?」

「セレスの護衛からは外れてもらうよ。君もその方がいいだろう?」

 と、微笑むシャティルの顔はいつもの笑みだが……シャティルとは子供の時からの長い付き合いだからこそわかる。
 きっと心では笑ってはいないのだろう。彼の笑いは一種の仮面だ。
 自分の気持ちを隠すための。
 まったく、親子ともども苦労させられる、と、セディスはため息をつくのだった。
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