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9話 滅びの未来(でも滅ばない)

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「……それでは行ってきます」
 
 学園サラディウスの校門。
 電車の中ですっかりアリーシャと仲良くなった、セレスとアリーシャに挨拶され、

「行ってらしゃい。気を付けて。たまには手紙をだすんだ。いいね?」

 と、父がセレスに言えば、セレスはこくんと頷いた。
 まだアリーシャが一生懸命しゃべり、セレスがこくこくと頷いている程度の関係だが、セレスの嬉しそうな顔を見れば、友達が出来て嬉しいのだろうというのは推測できた。
 表情をあまり変える子ではないのだが、嬉しいと少しだけ目元がほころぶ。

 長年一緒だった親だからこそ見分けられる程度の違い。

「本当によろしかったのですか。陛下」

 嬉しそうにアリーシャと手をつないで学園の門をくぐっていくセレスとアリーシャを見送っていれば、後ろから魔法で姿を隠していた部下、宮廷魔術師でスペシャルナイトのセディスに声をかけられた。

「前にも言ったはずだよ。僕はあの子の最初の我がままは、よほどの事がない限りかなえてあげる予定だと」

 と、気心の知れた部下にウィンクをしてシャティルは姿を本来の姿に戻す。
 一緒に汽車に乗り込んでいたのは偽父に変装したシャティルだ。
 セレスに内緒で変装して電車に一緒に乗り込んでいたのである。

 セレスは生まれた時から……妙に悟ったような行動をとる子だった。
 聞き分けがよく、わがままを言わない。
 言われた事はそれが使命なのかと何でもこなしてしまった。

 女の子は聞き分けがいいとよく聞くが、それでもセレスは物分かりがよすぎた。
 そして無口で感情を表に出すことがない。

 だからこそ、最初の我がままは何でも聞いてあげようと心に決めていたが--。

「流石に平民を装って魔術学校に行きたいは驚いたけれどね」

 と、ため息をつく。

「陛下はお子様たちに甘すぎます」

 セディスが言えば、シャティルはふふっと笑って

「だって仕方ないじゃないか、みんな可愛いのだから。
 親が甘えさせてあげられる間は甘えさせてやるべきだろう」

 と、微笑んだ。

 どうか、君の未来に幸あらんことを――。

 光の女神より告げられた滅びの予言。

 魔王が復活し、人類はすべて滅ぶだろう。それも遠くない未来に。
 
 避けられぬ滅びの未来。ならせめて――子ども達には平和な間だけでも自由を。

 シャティルは目を細め心に誓う。
 魔王の復活により、訪れる混沌の世界を食い止めると。

 もちろん、自分の娘が0歳児時点で魔王を撲滅している事実など知ることもなく。

「さぁ、僕は行こうかな。子どもの未来は大人が守らないとね。
 君は引き続きセレスを頼むよ?」

 そう言って歩き出す。魔王復活を阻止する方法を探すために。

 もちろん、自分の娘が0歳児時点で魔王を撲滅している事実など知ることもなく。(大事な事なので二回言いました)
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