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3.貴方に愛を

1.告白

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「神官長!!助けに参りました!!」

 洞窟内の何やら怪しげな祭壇にローブでぐるぐる巻にされた状態で、ゴブリン達に祀られている神官長に私は何度目になるかわからないセリフを吐いた。

「レイナっ!!」

 神官長が私の姿を見つけ声をあげた。

 ここはゴブリンの住む洞窟。
 実質神官長の次の地位にある聖女様が気まぐれで『ピクニックに行きましょう』と提案し、神官長と聖女様はピクニックにでかけたのです。
 そして聖女様が神官長と二人きりになりたいと駄々をこね――二人きりにしてみれば、案の定誘拐された次第で。

 せめてピクニックに付いて来れればこれほど、救出が遅くなることもなかったのですが。
 私はどうやら神官長大好きな聖女様に敵視されているらしく、護衛のメンバーから外されていました。

 私がゴブリンの巣に到着したころには、神官長は変な格好をさせられてゴブリンに祀られていたわけでして。

 ゴブリン達も私に気づいたのか、私の方に視線を向けて―― 一斉に逃げ出した。
 はい。地味に失礼な。
 まぁ実力差がわかったということはそこそこ知能のあるゴブリンの集団だったのでしょう。

 ああ。でもあれですよね。神官長を変な格好に着替えさせたと言うことは、裸を見たということですよね。
 はい、許せませんね。ゴブリンごときが生意気な。
 物凄く個人的な理由ですが殲滅しておきましょう。

 私はそのまま構えると――拳を突き出した。
 物凄い風圧がゴブリンたちを襲い……彼らはそのまま粉々になりそのまま空気に飛び散る。
 一瞬でその場にいたゴブリン達は消滅しました。

 神官長が祭壇から呆れた顔で見ていますが……気付かなかった事にしておきましょう。

「大丈夫ですか?神官長?」

 私がローブを解きながら聞くと

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。
 それで、あの、アンテローゼは無事なんでしょうか!?」

 よほど心配していたのか食い気味に聞いてくる。
 ……はい。まぁ、心優しい方ですから、聖女様の心配をするのはわかるんですよ?
 でも理解できると気持ちは別物といいましょうか。

「はい。ご無事ですよ?神官長様が命懸けで守りましたから。
 フランツ達に保護されています」 

「あ、あのレイナ……何か怒っていますか?」

 わざと様付けで呼んでみれば気づいたのか、神官長がおずおずと聞いてくる。

「はい。怒っていますよ?反対しましたよね?
 絶対誘拐されるからやめておいたほうがいいと言いましたよね?
 実際こうして誘拐されましたよね?」

 私の言葉に神官長はシュンとした表情になると

「はい、すみません。浅はかでした」

 と、私に謝る。ああ、その顔がまた可愛いのがむかつきます。

「大体、神官長は聖女様に甘すぎるのです。
 何故彼女の我侭をそのまま聞いてしまわれるのです?
 あれですか。幼女趣味なのでしょうか?」

「ち、違います!あれはまだ17歳ですよ!?
 まだ10代の少女です!
 子供です!!そのような対象ではありません!」

「聖女様はそうは思っていらっしゃらないようですが?
 毎日あれだけ結婚してくれとアピールしているのに、神官長も気づいてないわけではないでしょう?」

「あ、あれは父親と結婚したいという子供と同じレベルといいますか……。
 あの子は私と同じで、力があるという理由だけで赤ん坊の頃には親と引き離されましたから……」

 言って少し悲しそうな顔になる。
 ええ、わかりますよ。神官長も聖女様もその特別な力故、すぐに神殿に保護され、厳しい教育をうけていたと。
 自分と同じような境遇に同情してしまって、彼女には甘いというのもわかります。
 でも、ムカツクものは仕方ありません。
 恐らく、この気持ちが嫉妬しているという気持ちなのでしょう。

「そうでしょうか?男性は若い方がいいと聞きますし。
 神官長も若い女性が好きなのかと」

「ですから、違います!!
 ……ああ、どうしたら、わかっていただけるのでしょうか!?」

 あわあわと慌てだし、ため息をついたあと――
 何かを決意したような表情になり

「――レイナ。茶化さないで聞いてください」
 
 真剣な眼差しで見つめてくる。思わずドキリするがもちろん顔にはださない。
 顔を真っ赤にしながらも、神官長は私の両肩に手を置いて

「私が好きなのはレイナあな……」

 神官長がいいかけたその瞬間

「神官長様っ!!助けにまいりましたわっ!!」

 ばばーんっと、洞窟の入口で、聖女様が叫んだ。
 
 固まる神官長と私。

 何故か聖女様はたくさんの花束をもって、その場に駆けつけたのである。
 ああ――まったくこのお方は。
 何故こうも大事な場面で、現れるのでしょうか?

「あ、アンテローゼ……」

 神官長も同じ感想だったらしく引きつった笑顔で、神官長が聖女様の名を呼ぶのだった。

 そして、このあとも何度か神官長はプロポーズしてくれようとはするのですが、何故か毎回聖女様の妨害を受ける事になるのですが――それはまた別の話です。


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