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3章 魔獣と神々

44.戦いの終わり

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「猫さんっ!!」

 女神を倒し、地上に舞い降りれば、カンナちゃんが嬉しそうに私に駆け寄ってくる。

「カンナちゃん、よかった怪我はないか?」

 私が尋ねれば、カンナちゃんは嬉しそうに微笑んで

「はい!ミカエルが守ってくれましたから」

 とニコニコ顔で微笑んだ。

 ちなみにミカエルは…というと新たに仲間になったアルファーとレイスリーネ、ザンダグロムに先輩風をふかせながら、挨拶をしていた。
 ゲーム時代に一番最初に手に入れたS級守護天使なだけあって、ミカエル的には自分が一番上なのだろう。
 てか魔王みたいな口調だなミカエル。
 ってきり私は「ミカエルだワン!」とか言ってるようなキャラだと思っていたのに。

「ネコっ!!無事でよかった!!」

 飛び降りてきたリリもそのまま私に抱きついてきた。
 
「あー、今回はちょっとやばかったよね。技とかスキルがうまく作動しなかったし」

「でもネコならきっと大丈夫!ネコ強い!」

 と、ニコニコのリリ。
 正直今回は私はあまり活躍できてなかった。
 最後倒したの魔王だし。
 それでもリリちゃんは相変わらず私を過大評価してくれるらしい。

 そしてリリは隣にいたカンナちゃんの存在に気づいたのか

「ネコ、この人が?」

「そう、よく話してたカンナちゃん」
 
 言ってカンナちゃんをリリに紹介すれば、リリが宜しくねと笑顔で挨拶する。
 カンナちゃんも宜しくリリちゃんと、二人で仲良く握手し、おしゃべりがはじまった。
 というか、リリがいかにカンナちゃんの料理が好きかを熱く語っているだけなのだが。

 微笑ましいなと思いつつ、私が視線を魔王へとやれば

「礼を言おう、猫まっしぐら。
 神々は復活をはたした。お前のおかげだ」

 言って、ふよふよと浮いていた状態から大地に降りてくる。

「んー。私だけじゃなくてみんなのおかげだろ?魔王も含め。
 リリもカンナちゃんもアルファーもレイスリーネもザンダグロムもミカエルもここにいない皆も。
 きっと誰か一人でもいなかったら出来なかったと思うし」

 言って肩を竦めれば、魔王にお前らしいなと苦笑いを浮かべられる。

「にしても、魔王は大丈夫なのか?
 ここに来る前は今にも死にそうだったのに」

「この世界を維持するために力を取られる状態からは解放されたからな」

 と微笑んだ。うん。普通に微笑めばこいつまじコロネだわ。
 身長と髪型は違うが顔はまんまコロネだし。
 にしても……

「所で――コロネがいないみたいだけど」

「残念か?」

 魔王に意地悪げに聞かれて、私は口ごもる。

「どういう意味だよ」

「そのままの意味だが」
 
 と、魔王。くっそまさかこいつ、精神世界であったこと見てるわけじゃないよな!?
 あ、でもみてたら外に出た時のやりとりがおかしいわけで。
 ここは強気にいかないとバレる。

「まさか魔王まで恋仲とかいうつもりじゃないだろうな?
 コロネが私大好きなのはシステムのせいなんだからな?」

 そう。コロネが私を好きなのはシステムのせいであって素ではない。
 いくら私が好きだといっても、コロネの本心がわからないのだから、恋仲とはいえないだろう。
 正直、システムに縛られているコロネに告白するのは違うと思う。
 だからこそあの告白は……いけなかったと思う。
 アルファーの記憶を見て、システムに縛られているというのがどんなに残酷な事か知っているし。

 もし、仮に、付き合ったあと、システムから解放されて実は本心は好きじゃなかったなんて事になったらコロネに申し訳なさすぎる。

 私の言葉に魔王はため息をついた。

「あんな無駄なシステム、一番最初に力の供給をやめていたに決まっているだろう。
 あれが、お前の前でああなのは、最初はシステムのせいだったのは認めるが……後半は素だ」

 ………。

 …………。

 …………。

「えええええ!?ってどこらへんから供給やめてた!?」


「………本人の名誉のために言わないでおこう……あんなものでも私の半身だしな」

 魔王が目頭を抑えながら

「システムでおかしくなっているうちに、そのテンションが身についてしまったのだろう。
 あとはシステムが働いてるという本人の思い込みもあるかもしれぬ。
 ………。
 …………。
 言っておくが!?私のオリジナルはあんなキャラではなかったからな!?」

 と、後半は語気を強めていう。

 うん、あれと同じにされたくないというのはなんとなくわかる。
 ってことは、コロネが私を好きだといってくれてるのは本心なわけか!?
 やばい、嬉しいかもしれない。どうしよう。
 い、いやいやいや。まだ安心できない。思い込みで好きなのかもしれない。
 つい顔にでそうになるのを私は慌てて手で隠す。

「て、てか、何であんな無駄なシステム組み込んだんだ?」

 慌てて私が話題をそらせば

「知らぬ。ゲームに関しては無知だったため、知の神のいいなりで作ったものだ。
 あの頃は神を疑うなどという事は考えもしなかった。神の言うことは絶対だったのだ。
 今思えば間抜けすぎる話だ。神などろくな奴がいたためしがない。
 お前も神など信じるな。まともなのはごく一部の神のみだ。あとは使えぬ」

 と、ため息をついた。
 どうやら知の神とやらにいろいろ嫌な目にあわされたらしい。

「さて、お前はどうする?」

 急に魔王の声のトーンが変わる。
 うん。なんだまだ一戦あるとかじゃないよな。

「どうするって何がだ?」

 私が言えば魔王は数秒沈黙したあと

「いや、心当たりがないならいい」

 と、目を背けた。

 あー、ひょっとして。

「人間の魂を吸った事を私が何か言うと思ったわけか」

 と、魔王に問えば、魔王が苦笑いする。
 まぁ、確かに気持ちがいいものではない。
 赤ん坊とかも魂をすわれちゃっているし、転生すらできないとか可哀相だと思う。
 けど、やるしかなかったという事情もわかるんだよね。
 魔王コロネは本来信仰を集めて力を蓄えなきゃいけないところを、魔王を吸収したせいで信仰されると弱体化してしまうという何義な身体だ。
 そのせいで、他の神々よりかなり長い時間をかけないと力を蓄える事ができない。

 眠って力を蓄えようとしたら、エルギフォスが何故か覚醒していて身体を自由に使ってしまい、気づいた時にはクリファ達双子を復活させていた。
 魔王コロネが目を覚ましたのは、私たちがエルフの隠れ家で、コロネがシステム復元のために魂を引っ張られたあの時なのだ。

 ゲーム化後、本来眠らせておくはずだった世界をエルギフォスが無自覚に審判の御子の力で覚醒させてしまい、好き勝手に荒し回っていた。
 そのため世界を維持できるだけの力が魔王コロネには残っていなかったのだ。
 そこで、一かばちかで、私たちにかけたのである。
 異界の神々を倒し、神々を復活させてくれるのを。

 しかし、異界の神々にレベル化を適応させるためには力が足りず、仕方なしに魂を力に変換した。
 魔王城の一件も、魔族の力をそのまま吸収するための芝居だったわけで。
 クリファに気取られないように、私達の魂を吸い取るふりをして、魔族の魂を吸い取ったのだ。

 もしスパーリングフィールドを展開していなかったら、何故か魂を吸い取れなかった✩というオチになったらしい。

「別に自分がどうこう言える立場じゃないだろ。理由があったわけだし。
 なんだか皆勘違いしてるけど、別に私は正義の味方じゃない。
 まぁ、仲間が魂吸われたとかだったら怒ったろうけど」

 ワシワシと頭をかきながら言う。
 元々人間領を救うのだってリリやコロネが安心して暮らしていけるためだし。

 それに――あの国を選んだ理由もなんとなくわかる。
 異界の神々に従って、エルフに悪逆非道を率先して実行したのがあの国なのだ。

 まだあの世界で赤ん坊だった子達も……将来、神の兵士としてエルフ達に非道の限りをつくした。

 どうもコロネ達と意識を共有していたせいか、可哀相とは思えないんだよね。
 過去のエルフ達にしたことを思えば当然とさえ思ってしまう。
 あんまり褒められたことではないけれど。

 
「そうか」

 私が言えば魔王は背を向けた。

「行くのか?」

「ああ、やらねばならぬ事が多いのでな。
 またいつ他の世界の神々が攻めてくるかわからない」

「えええ。またこのまま戦いとかマジ勘弁」

 私の言葉に魔王がやれやれとため息をついた。

 ……はて?何かまずいことを言っただろうか。

「何だよ?」

 と私が言えば

「頼んでもいないのに、また首を突っ込むつもりなのがお前らしいと思ってな」

 と、魔王は苦笑いを浮かべ――急に真面目な表情になる。

「……どうした?」

 私が不思議に思って聞けば

「私の半身の方が倒れた」

 と、真顔で告げるのだった。
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