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3章 魔獣と神々

41.ここほれワンワン

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「……まさか……素材解体が本当に効果があったとは……」

 魔物にされていた人たちなのだろう。倒れている人々を見つめ、ミカエルが呟く。
 あのあと、本当にスキルは効いてしまい、魔物はあっという間に素材に分解され、元の人間に戻ったのだ。
 かなりの人数が魔物化されていたらしく、ザッと200人くらいの人々が所狭しと倒れていた。

「レクター様!!全員息があります!
 王も王妃様もご無事です!」

 と、セバスが王と王妃らしき女性を助け起こす。

「二人のおかげで助かった。礼を言わせてくれ。

 ええっと
 ……そういえば二人とも名を聞いていなかった」

 言って、レクターがカンナとミカエルを見つめるのだった。


 ▲△▲△▲△

「……どうやら、レクターやセバスの話を総合すると、この世界は我達の知る世界から300年後の世界らしいな」

 ミカエルがレクターの部下達が用意したキャンプの火の横でまるまりながらカンナに言う。
 カンナはそんなミカエルを椅子がわりにしてちょこんと座っていた。

「……困りました。帰ることできるのかなぁ……」

 慌ただしく、野営の準備をしている、元王族やその王族に仕えていた兵士たちを見つめ、カンナがため息をつく。
 いきなり異世界に来てしまったなどと言われても実感はわかないが、なんとなく自分たちがあまりいい状況にいないことは想像がついた。

「さぁな。皆目見当もつかぬ。
 こんな時、我マスターがいれば……何とかしてくれそうな気もするのだが」

 と、ミカエル。

「確かに、猫さんならなんとかしちゃいそうですね。
 むしろ張り切りそうなイメージです」

 と、微笑んだ。カンナの知り合いの猫なら、こういった状況でも、なんとなく解決をしてしまいそうなイメージがある。

「猫さん、今頃ゲームで待ってるかな……どうしましょう。悪いことしたな……」

 ミカエルにぼふっと頭をうずめ、カンナがつぶやいた。
 実際、猫は同じ日に異世界に召喚されていたため、彼女の心配するような事はないのだが……もちろん彼女がそれを知る由もない。


「にしても、少し手伝ったほうがいいかな?」

 と、カンナは野営の準備をする貴族や王族を視て呟く。
 魔物にされていたせいで、彼らはものすごく体力を消耗して憔悴していたが、カンナの回復魔法とアイテムボックスから出した食事で大部回復した。
 ご飯などだしたときには皆に美味しい美味しいと泣いて喜ばれたほどである。

 彼らもまさか元に戻れるとは思っていなかったのだろう。

 それからは、これ以上お手を煩わせたくないと、カンナ達は座っているように言われたのだが……
 
 彼らは身一つで森に放りだされたわけで、野営の準備などといっても焚き火用の蒔きを用意するのが精一杯らしい。

「これ以上関わるのはあまり関心せぬな。
 そもそも彼らはこの世界では国を追われた身だ。
 あまり肩入れすれば、我らも狙われる事になる。
 
 今夜中にここをこっそり抜け出す方が賢いと思うが」

 ミカエルが言えば

「えええ!?ミカエルって意外と現実主義なんですね!
 私の想像の中のミカエルなら、助けるワン!!って言ってそうなイメージだったのに!?」

 と、ショックを受けるカンナ。

「お主は我をどういうイメージで見てたのだ……」

「はい!頑張るワン!助けるわん!ここほれわんわん!っていう、萌キャラのイメージでした!」

 にっこり言うカンナ。
 ミカエルは大きくため息をつく、

 どこからどう見てもリアル狼のような風貌の自分をそんな萌キャラとしてみれるのか。

「いま、すぐにそのイメージを訂正しておくことだ。
 にしても、これからも、こやつらに関わる気ではあるまいな?

 セルレーンを乗取ったプレイヤーと合間見えることになるぞ?
 マスターの猫まっしぐら様ならともかく、お前ではプレイヤーと戦うのは難しいだろう」

「うーーん。でもこのまま見捨てるのは酷いような気がします。
 せめて彼らの安全が確保されるまで送って行くことくらいはできませんか?」

「……他国に逃げるということか」

「はい、先ほどレクターさんとセバスさんが言っていました。
 国境を超えれば、エルフの大賢者コロネ・ファンバードがプレイヤーから解放した国に行けるって!」

「……確かに言ってはいたが……これだけの大人数が国境を超えようとすればすぐに見つかってしまうのでは?
 確かこの森を抜けた先は大平原だ。
 見張りにすぐ見つかるぞ」

「そこはミカエルさんのモフモフでなんとか!?」

「……恐ろしく無責任な作戦だな。
 それは単に我に丸なげしているだけであろう。
 相手のプレイヤーが同じ守護天使もちだった場合我だけでは部が悪すぎる」

「えーーと、それじゃああれです!
 姿を隠すポーションを作りましょう!!」

「あれはドラゴンの血が必要だろう。
 マスターがいなければ材料がそろえられぬ」

「え、えーーと。それじゃあ私とミカエルが先に隣の国に行ってコロネさんに頼みましょう!」

 ぽんっと手を叩いてナイスアイディアと言わんばかりにカンナが言うと、ミカエルは大きくため息をつき

「なぜそのエルフの大賢者が主の頼みを聞いてくれると思っているのだ?」

 と、呆れたように言う。

「でも、コロネ・ファンバードさんって言えば、昔ゲームで好感度を最大まであげてますから。
 もしかしたらお願いを聞いてくれるかも?」

 と考えるポーズでカンナ。

「ほぅ。好感度など上げる事ができたのか。それは知らなかった」

 言ってミカエルは目を細める。
 まぁ、コロネが言うことを聞いてくれるかどうかは別にしても、この危険な集団と一緒にいるよりは大分マシだろう。
 隣の国に行ったあと、なんだかんだと理由をつけてカンナに諦めさせればいい。

「わかった。では、それでいくぞ。
 今すぐにでも発とう」

 ミカエルが立ち上がると

「いえ、まだですよ?
 皆さんの安全を確保していかないと」

 カンナは首を横にふった。

「ちょっとレクターさんとセバスさんに事情を説明してきますね!」
 
 と、小走りに駆けていくのだった。
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