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3章 魔獣と神々

29. VS魔王

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 扉を開けば、そこはいかにも魔王との対決の間です!
 といわんばかりの部屋だった。

 床はガラスのように透けており、その下にはまるで宇宙を思わせる景色が広がっている。
 部屋の中は円上になっており、野球のスタジアム並みに広い。

 その周りには青い球体がぷかぷかと5ヶ所、まるで五芒星を描くかのように浮いている。

 そんな部屋の真ん中で、全身黒づくめの中二病をそそる外見重視の鎧をきた口元だけ見えるマスクをかぶった男がプカプカと宙に浮いていた。

 まぁ、見かけからあれが魔王なのだろう。
 鑑定すればレベルは1300。魔王エルギフォスと表示される。

「よく来たな。プレイヤー達よ。
 ゲームであれば何か口上を言うところだが、生憎そういった趣味はない。
 さっさとはじめようじゃないか」

 いつかリリとこっそり覗いた異界の女神たちので聞いた低い声の男。
 こいつが魔王で間違いないだろう。

「不親切だな。魔王だったら世界はいまこういう状態だ~とか説明してくれるもんじゃないのか」

 と、私が言えば、問答無用で技をぶっぱなしてくる。

 うおぉ!?

 こいつマジ容赦ねぇ。
 慌てて技をよけれ皆、各自行動に移った。

 sionはそのまま硬質化。

 守護天使とコロネとリリは、球体の破壊。
 sionの設定集で画像だけ見たが、恐らくあの球体を壊さないと魔王にダメージが通らないとかそういう仕組みなんだろう。
 魔王が私達の動きを読んだか、瞬間移動のできないレイスリーネに狙いを定め襲いかかるが


 がしぃんっ!!

 魔王の鎌を私がそのまま瞬間移動で受け止める。

「お前の相手はこの私なんだが。無視しないでくれるかな?」

 私がにんまりと笑顔で言えば、魔王の口元がにやりと歪む。

「なるほど。ではまずは目障りなお前からだ」

 言って、魔王と私の鎌の応酬がはじまるのだった。


 ▲△▲


 魔王は――はっきり言って強かった。
 ここに来る前にエルフの神殿で即席でコロネに習った魔力の動きで相手の動きを読む方法を習得してなかったら、ひょっとしたら負けていたかもしれない。
 鎌なのに動きが読めないのだ。

 というのも、時と場合によって鎌の形状を自由自在に変えてくる。
 まぁ、やりにくいったらありゃしない。

 受け止めようにも、形状をかえられてスカするとか普通にあるのだ。
 動きを予期して身体の一部を硬質化してなかったら今頃私はまっぷたつだったろう。
 私は一度瞬間移動で間合いを確保し速攻で鎌からダガーに武器を持ち替えた。
 同じ鎌だと分が悪すぎる。

 そして何よりこちらはダメージが通らない。
 おそらく、セギュウム戦と同じなのだろう。
 あの球体を壊さなければ魔王は倒せない。
 だから魔王はいつでも逃げられたのに決戦の場をこの場所から移さなかったのだ。
 私の予測通りならその無敵効果はこのステージでしか効かないのだろう。

 最初に球体を破壊したのは高火力のレイスリーネだった。
 本来なら守護天使は武器のランクは固定なのだがレイスリーネの武器も、冗談でギャンブラーのスキルをつかったら何故かランクをかえることができた。
 そしてまさかのSSR武器なのである。
 名実ともにレイスリーネちゃんは我パーティー、一番の高火力キャラだ。

 ちなみにA武器だったザンダグロムもギャンブラーを使いSS武器になった。

 ファルティナとアルファーは下手をするとAランク武器になってしまう恐れがあるのでいじってない。

 レイスリーネは破壊を確認するとコロネとリリの補助に向かう。
 あの二人はレベルが足りなくて破壊できないだろうし。

 オーブが破壊されたことで、魔王に一瞬焦りが生まれるが、まだ破壊されたオーブは一個。
 それほどダメージは通らないだろう。
 全力をだすのは全員揃ってからでいい。

 小回りのきくダガーで魔王の攻撃をいなしつつ、私と魔王の攻防は続いていた。
 あちらが何か技を使おうとする素振りをみせればこまめに攻撃して全部ふさいでみせる。

 私の役目は時間を稼ぐ事。
 ダメージを当てることは考慮にいれていないので幾分楽だが、それでも結構きつい。
 魔王の実力はアルファー以上。
 一人で倒せと言われたら恐らく無理だろう。

 アルファーも球体の破壊を終了し、チラリと私の方を確認したが、どうやら他の人の補助に向かうらしい。
 賢明な判断である。
 正直アルファーがこの戦いに入ってこれる隙がないのだ。
 二人で攻撃しようものなら、魔王は恐らく、私とアルファーがおたがいの攻撃が当たらないように躊躇した隙をついて大技を放ってくるだろう。
 確かにパーティー効果でお互いダメージが当たらないのはわかっていても、相手に攻撃があたることをどうしても躊躇してしまう。
 それにダメージにならないにしてもお互いがお互いを邪魔してしまう可能性もあるのだ。
 あとでもうちょっとアルファー達と連携で闘う訓練をしたほうがいいのかもしれない。

 そして――

 パシィィィィン!!!

 やたら派手な音をたてて、最後の球体が破壊される。
 うっしゃぁぁぁこれで魔王へダメージが通るはず。

 私が微笑んだその瞬間。

 魔王がにやりと邪悪な笑を浮かべ

「なかなかどうして。もう少し楽しむつもりだったが……やや分が悪いらしい」

 言った途端。

 私達の足元が急に眩く光はじめた。

「この光は!!!猫様っ!!魂を吸収する魔方陣ですっ!!!!」

 コロネが叫んだその瞬間。
 私達は――あっけなく魔法陣の光に呑み込まれてしまうのだった。
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