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3章 魔獣と神々

26. 決戦覚悟

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 聖都市グレンダーク

 人間領でもっとも神々への信仰が厚く、聖なる国家を名乗っているだけあって神々の加護をうけていた国であった。
 既にプレイヤーの手に落ち、テイマーの男性が支配していた地区だったはずなのだが……。


「密偵の話によると、都市は一夜にして滅びたそうです。
 突然地響きが鳴り響き、宿で寝ていたはずの密偵は城壁の外に追い出され、眩い光が城塞都市を包んだと。

 そして、光が収まり中に入れば……城壁の中にいた人間も支配していたはずのプレイヤーも死に絶えていたとのことです」

 
 神殿の会議室で、私・コロネ・リリ・守護天使4人・リュートにクランベールにsion。
 そして騎士達の何人かで私たちは話し合いをしていた。

 今後の方針を決めるためだ。

 コロネの話に皆固まる。
 つまる所一夜にして国が滅んだのだ。
 一瞬で。

「今から急いで駆けつければ生き返らせる事はできるのか?」

 私の問いにコロネが首を横にふり

「あの地を支配していたプレイヤーは二人でした。
 一人はその光で死に絶えたのですが、もう一人は密偵と同じく城外に出されていまして。
 その者が復活の呪文を使ったのですが生き返りませんでした」

「それはつまり……」

「はい。恐らく、以前魔族がエルフ領で使った、魂を吸収する魔方陣だったのではないかと」

 私の言葉にコロネが頷く。

「そんな!おかしいだろ!
 魔族は3体全部倒したはず!!!
 まさか他の地区の結界が破れたのか!?」

 私が叫べばコロネは首を横にふり

「他の地区の結界は破れていないのを鑑定のスキルをもつエルフが確認しました」

「じゃあ、どうして!!」

「何者かがセズベルクのように遠隔で操られていた可能性もあります。
 問題は魂を吸収した魔王が復活する可能性があるということです。
 いま北方のマゼウス大陸に住むエルフ達は緊急で魔方陣を使って他の地区に避難させています。
 避難が終わり次第、転移の魔法陣も閉じる予定です」

「そこまでしているということは、もう復活は間違いないとみてるのか?」

「はい。3万人の住む巨大都市です。
 神々があの状態の今、それだけの魂が捧げられた事を考えれば、魔王が結界を破る力を得るには十分かと」

 私の問いにコロネが頷く。

「……ただ、気になる事があります」

「気になる事?」

「生き残りが居たことです。
 私の密偵と、そして生き残ったプレイヤー。
 彼らの共通点は種族はエルフということ以外なにもありません」

「人間にしかきかない魔方陣だったとか?」

「城内の家畜やモンスターなども一緒に魂を抜かれていました。
 魔法陣の性質上、エルフだけを外したのは意図しなければ無理かと思われます」

「……犯人はエルフかもしれないってことか?」

「はい。可能性は高いと思われます。セズベルクの他に、まだ操られていたエルフがいるのかもしれません。
 私と猫様の結界ではエルフはこの地に入れてしまいます。
 もし犯人がエルフなら……このエルフの地も危険ということになります」

「ああ、くそっ。
 異界の神様がきて大変だって時期になんでまたこんな事に」

「前回の騒動の時に、魔方陣が作動しないように結界をはりましたが、もし魔法陣に魔王レベルの魔族が関わっているとすれば、私の結界など簡単に破られてしまうでしょう」

「わかった。もう面倒だ。こうなったら根本から叩く。魔王を倒そう」

 私がぽりぽり頭をかきながら言えば、皆が一斉に無言になる。

 ――うん。何かまずいことを言っただろうか。

「魔王を倒すとあっさり宣言なされるところが流石猫様といいましょうか」

 と、コロネ。

「魔王を倒すなら聖剣を探して聖剣を抜かないと!!」

 何やら意味不明な張り切り方をするリリちゃん。恐らく何かの漫画の影響なのだろう。

「魔王のレベルはsion様の持っていた設定集では1300と書いてありましたが、300年前の情報です。
 魔王のレベルが上がっていないという保証はどこにもありません。」

 と、ファルティナ。

 因みにレベルは私が1304 リリ 1207 コロネ 1204 だ。
 ゲーム通り、魔王のレベルが1300なら私と守護天使達の攻撃ならダメージが通る。

「確かにそうかもしれないけど、このまま手をこまねいてみても、またあの魂を抜かれる魔方陣で攻撃されたら、私達だって無事でいられるかわからない。
 寝てる時気づかずやられたらアウトだろ」

「確かにそうかもしれませんが……」

 口篭るリュート。

「もう短気決戦しかない。
 長引けば長引くほど、魂を取られて人口は減るは魔王は強くなるわでいいことなんて何もない。
 もしダメそうなら瞬間移動で逃げてくればいいだけだ。
 やれるだけやってみよう」

 私の言葉に、意を決したようにその場にいた皆が頷くのだった。
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