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3章 魔獣と神々

5. イチカバチカ

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「あ”あ”…ゴ ロ ネ」

 まるで恋する乙女のような表情をしたレオンがコロネの姿を見つめ――ぽいっと舌に巻いていた、アルファーを捨てる。
 力なく落ちていくアルファーを私は受け止めた。
 魔獣レオンがコロネに夢中で、私に対する攻撃も止んだのだ。
 ファルティナからアルファーに回復魔法が飛び、一気に回復させる。 

「随分醜い姿になりましたね。
 大方、女神に騙されて魔獣と合成されてしまったという所でしょうが――」

 コロネが何か言おうとするが――レオンはそれを遮り

「ゴ、ロ、ネ ●●●!!!▲▲▲!!」

 エグイ拷問方法の単語を連発し、コロネに猛突進で突っ込んだ。

 途端


 びしぃぃぃぃ!!!

 私の張り巡らせた罠が作動した。
 魔獣レオンの身体に糸がまとわりつき、その身体を容赦なく切り刻みあらゆるところから血が吹き出す。

「い だい いだ い!!」

 のたうち回る魔獣レオン。

 うん、やべぇ。こいつ馬鹿だ。
 何の考えもなしに、突っ込むかな普通!

 そんな、のたうち廻るレオンにコロネは今まで見せたことのないほどの冷たい笑を浮かべ

「いい気味ですねレオン。
 どうですか、あれだけ小馬鹿にしたNPCごときに痛めつけられる気分は?」

「ぎ ざ、ま……っ」

「ああ、いいですね。その表情。
 それですよ……私が望んでいたのは……。

 あんな哀れみに満ちた顔で、助けを求めるみっともない表情より大分マシですよ?
 それでこそ、痛ぶりがいがあるというものです!!

 ああ、どうせ復讐するならこうでなくてはっ!!」

 コロネが手を掲げ、恍惚とした表情でレオンを見下ろす。

 ……うん?
 あれ、おかしいぞ。うちのコロネってこんな子でしたっけ?
 正直セリフだけ抜粋すればどっちがレオンでどっちがコロネかわらかないよこれ。 
 やばい。もしかしてこれドS同士の戦いなのか!?

「ぢが・・うっ!!いため・・・つけるぼ・・くっ!!」

 レオンが吠え――その口をバッと開く。

 このモーションは魔獣セファロウスの最大攻撃、吐息のブレスだ。
 途端私に抱かれていた状態のアルファーが復活の呪文の詠唱にとりかかる。

 アルファーが行動にうつったということは、どうやらここまではコロネの作戦通りらしい。

『リリ様っ!!上へ!!』

 コロネはそうリリに指示をだすと――ブレスを放とうとする、その魔獣レオンの口に――そのまま突っ込むのだった。

 
 ▲△▲△▲△

 ブレスに、コロネの身体が焼かれる。
 レベル200差のボスモンスターの最大攻撃にコロネが耐え切れるはずもなく、その身は跡形もなく消え――そして間をあけずに復活する。
 本来なら、そのまま死ぬはずだが、復活の指輪は少しの時間だけ無敵状態になる時間がある。

 コロネはそれを利用し、さらに口の奥底まで風の魔法を身にまとい突っ込んだ。

「んなっ!!」

 コロネを飲み込む形になったレオンは驚きの声をあげ……そして体内が爆発した。
 コロネの自爆魔法によって。
 最大攻撃のあとはボスは防御力が一定時間低下する。その瞬間を狙ったのだろう。

「んがぁぁぁぁぁぁあ!!」

 体内からの爆発の痛みに耐え切れなかったのか、レオンが悲鳴をあげる。

 アルファーが呪文でコロネを生き返らせ、間入れず再び自爆する。

「んががぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 魔獣の身体が、見るも無残に肉片が飛び散っていく。
 魔獣は何ども大きな爆発が体内からおき、回復が間に合わない。

 これなら行けるか!?
 私がそう思った時――自爆攻撃で精神防御まで手がまわらなくなったのかコロネの思考が念話で直に頭にはいってくる。

 あと一回、自爆魔法をすれば、心臓核にたどりつける。
 
 ……そして、どんな手段を用いても心臓核は壊せない。
 なら復帰する細胞にコロネ自らの身体を飲み込ませ――硬質化のスキルで心臓核もろとも硬質化し自分もそのまま朽ちよう。

 それが、コロネの作戦だった。

 アルファーもコロネの思考を読んだのだろう、はっと私の顔を視る。

 ……あんのやろうっ!!騙しやがったな!!
 私には心臓核を壊すとかいっておいてはじめから死ぬ気満々だったんじゃないか!!!

 私がすぐさま瞬間移動でコロネの元に行こうとするが、視界をアルファーに遮られる。

 …っちっ!!

 どうやら守護天使には話を通してあったらしい。
 私とリリが邪魔しないようにフォローするように頼んであったのだろう。
 
『ネコッ!! コロネがっ!!』

 同じく思考をダイレクトに受け取ったリリが悲鳴をあげる。
 リリの前にもファルティナがいて視界を防いでいる。
 
 くっそ!!あの馬鹿っ!! もちろん死なせはしない。
 言ったはずだ絶対守るって!!

 たとえ本人が嫌がったとしても!!

 私はイチかバチかのカケにでる。
 念話でコロネの思考をそのままうけとって――そしてスキルを行使した。



 コロネの視界での瞬間移動を。
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