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第3章「星を追った。ツキはなかった。花は咲いた」
第37話「ぶんどりものをエンヤラヤ」
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華々しいファンファーレも見送りもない中、馬車が街を出て行く。歓声はあれど、自身に向けられるものではない。
背後の歓声は、あくまでも領主を討った事に対する住民の喜びだ。
旅芸人の出立など、殆どはこういう寂しいものになる。
「精剣を宿す機会は、一人につき一度だけだ」
手綱を握る男が独り言つ。
「鞘に二口の剣は収まらないし、宿した精剣を取り替える事もできない。その一度で宿した精剣がLレアだから幸運……と思わない方が少数派か」
ハハッと嗤う男だが、その笑い声は乾いているとしかいい様がなかった。
「何が宿っているのか? デュアルスキル? 範囲も威力も極大の攻撃スキルと、バフか? もしくはデバフと防御系か? まぁ、Lレアなんていくつも見た事がないから、トリオスキルかも知れないか?」
乾いた笑いと共に発している言葉だけに、口調にはどこか嘲りめいたものが混じっている。
ただ次の一言に嘲りはない。
「しかし精剣は格じゃない。格ばっかり追ってる奴は、絶対に最後まで守ってくれねェぞ」
男が目を向ける先には、一口に精剣。
その宝石のような刀身に差しているのは沈みかけた陽光であるのに、虹色の輝きを宿しているのだから、その格も推して知るべし、だ。
Lレア――それしかない。
その精剣に向かって、男は続けていた。
男は冷たい目で一度、馬車が離れていく街を振り向いた。姿が見える訳ではないが、そこにはエリザベスを連れたパトリシアがいるはずだ。
「大事なのは、誰に宿ったか、だ」
パトリシアにとって精剣はエリザベスに宿ったものだけをいう。Hレアが宿っているという理由だけで連れている訳ではない。
そしてパトリシアとエリザベス以上に、精剣の格ではないという二人がいる。
「ファンが非時こそ最高だといっているのは、エルに宿った精剣だからだ」
騎士爵の息子は平民であり、そんな相手に精剣を宿そうという女性が現れる事は希だ。
ふんと男は鼻を鳴らした。
「精々――」
視線は前方へ戻し、精剣には一瞥くれてやるだけだった。それはLレアという最上級の精剣に対するものではない。
「精々、役に立って下さい」
嗤う。
「元領主様」
嘲笑だ。
嘲笑を発するのは――、
「このセーウン・ヴィー・ゲクランが、非時を手に入れるまで」
ヴィーはククッと喉を鳴らしながら、向けていない視線であるのに、その視界に非時を宿すエルを見ていた。
背後の歓声は、あくまでも領主を討った事に対する住民の喜びだ。
旅芸人の出立など、殆どはこういう寂しいものになる。
「精剣を宿す機会は、一人につき一度だけだ」
手綱を握る男が独り言つ。
「鞘に二口の剣は収まらないし、宿した精剣を取り替える事もできない。その一度で宿した精剣がLレアだから幸運……と思わない方が少数派か」
ハハッと嗤う男だが、その笑い声は乾いているとしかいい様がなかった。
「何が宿っているのか? デュアルスキル? 範囲も威力も極大の攻撃スキルと、バフか? もしくはデバフと防御系か? まぁ、Lレアなんていくつも見た事がないから、トリオスキルかも知れないか?」
乾いた笑いと共に発している言葉だけに、口調にはどこか嘲りめいたものが混じっている。
ただ次の一言に嘲りはない。
「しかし精剣は格じゃない。格ばっかり追ってる奴は、絶対に最後まで守ってくれねェぞ」
男が目を向ける先には、一口に精剣。
その宝石のような刀身に差しているのは沈みかけた陽光であるのに、虹色の輝きを宿しているのだから、その格も推して知るべし、だ。
Lレア――それしかない。
その精剣に向かって、男は続けていた。
男は冷たい目で一度、馬車が離れていく街を振り向いた。姿が見える訳ではないが、そこにはエリザベスを連れたパトリシアがいるはずだ。
「大事なのは、誰に宿ったか、だ」
パトリシアにとって精剣はエリザベスに宿ったものだけをいう。Hレアが宿っているという理由だけで連れている訳ではない。
そしてパトリシアとエリザベス以上に、精剣の格ではないという二人がいる。
「ファンが非時こそ最高だといっているのは、エルに宿った精剣だからだ」
騎士爵の息子は平民であり、そんな相手に精剣を宿そうという女性が現れる事は希だ。
ふんと男は鼻を鳴らした。
「精々――」
視線は前方へ戻し、精剣には一瞥くれてやるだけだった。それはLレアという最上級の精剣に対するものではない。
「精々、役に立って下さい」
嗤う。
「元領主様」
嘲笑だ。
嘲笑を発するのは――、
「このセーウン・ヴィー・ゲクランが、非時を手に入れるまで」
ヴィーはククッと喉を鳴らしながら、向けていない視線であるのに、その視界に非時を宿すエルを見ていた。
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