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第1章 終わりの始まり
優一の夢
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百合とは保育園からの仲だ。
家も近く何かと百合は俺に世話を焼いてきた。
幼稚園の頃百合はよく俺と結婚する、とか言っていたな。
今でも本気でそう思っているみたいやが...
結婚ということがどういうことかよく分からなかった
当時の俺でも百合とはずっと一緒にいるものだと思っていた。
小学校に上がってからもあいつの世話焼きは変わらなかった。
毎休み時間俺のクラスに来ては俺の所に来ては
周りのやつに夫婦だとか揶揄われたのを今でも思い出す。
あいつは満更でもない様子だったが俺は恥ずかしかった。
そんなこんなで小学校生活を送っていたわけだが
急に百合が俺から距離を取るようになった時期があった。
小学校生活最後の夏休みが入ってからだ。
毎日俺の家に来てはその辺の公園やら駄菓子屋やら
連れ回されたものだが夏休みに入ってからピタッと
俺の前に姿を現さなくなった。
おかしいな、とは思ったんだがなんせ...
その時の俺の家の状況もややこしくてな。
正直百合が来ても百合に構ってやれる精神的余裕なんて無かった。
ん?なに、今のご時世よくあることさ。親父が
借金残して何処かへ消えちまったんだよ、笑えるだろう。
まぁ当時の俺は笑えなかったよ、本当に。
親父が出て言ってから母親も狂ったようにパチンコに
行くようになったしもう家庭なんてもんはここには無かった。
親父が出て行くまでは普通の家庭だったんやで?
いや違うな、見えなかっただけ。この家に入っていた亀裂が。
初めから狂っていたんだろう。俺の家は。
それに何に借金していたかというと別の女に貢いでたらしい。
しかも子連れのバツイチの女に、笑えるだろう?
俺たちは捨てられたって訳さ、はぁ、本当に笑えるよ。
それに加えて母親も俺に手を出すようになった。
パチンコから帰って来るやいなや俺が目に入ると俺を
部屋中引き摺り回し気がすむまで殴りやがるんだ。
怖かったし、なにより両親を憎むようになった。
何事にも期待しないようになった、すぐ諦めるようになった。
文才が無いもんでね、あまり状況が掴めなかったかも
しれないがまぁこんな風に人生に絶望してたわけさ。
そしたら夏休み最後の日だ、百合が久しぶりに俺の家に訪れた。
「ゆうくん、おる?」家のドアをノックする音。
正直出る気力も無かったが、久しぶりに百合の声を
聞いた俺は気付くと無意識に体が動いてしまっていた。
「...なに?」自分でも無愛想だと思うがこれが精一杯の返しだった
ドアを開けるとそこにはそこには白いワンピースを着た百合が居た
「...ちょっとついて来てくれへん?...いや来て」
「は?こんな暑いに日にどこに行こうっていうねん」
外を見ると太陽がこれでもかと照っており空を見上げれない程だ。
「最後かも...知れないから」
そういうと百合は俺から目を逸らし、項垂れるように俯いた。
冗談...には見えなかった。何か事情があることを
察した俺は黙ってついて行くことにしたのだった。
「おい、待てよ、なにもこんな暑いに日に外に出なくたって」
流石に我慢が出来なかった。暑すぎる、冗談抜きで。
いくらあいつになにか事情があったとしてもこの暑さは無い。
するとあいつは誕生日だから今日じゃ無いと嫌だと、
クローバーが欲しいから見つけて私にくれと逆ギレすると
また走り出した。本当に勘弁して欲しいものだ。
昼頃から探し始めたんだが全く見つからなくて
気付いたら日も暮れてもうヘトヘトになってさ。
もう帰ろうと言おうと百合の方見たらまだ諦めてなくて。
5時間ぐらい探してないんやで?普通諦めるやろ?
でも百合は諦めてなかった、だから俺も諦めなかった。
烏も鳴き始めてそろそろ暗くてなにも見えなくなるって時に
やっと、やっと、やっとのことで四つ葉のクローバーを見つけた。
「百合っ...見つけたで! 四つ葉のクローバー!!」
俺は見つけると一目散に百合の元へ駆け寄った。
「ッ...うぅ... ありがとおぉ...」
見つからない不安と暗い恐怖感で押し潰されそうだったのが
やっと見つかったことで心が緩んでしまったのか
百合はビービー泣き始めた。
「実はね、うち、引っ越しするんや...だから...ゆうくんに...」
...は?急になんや。暫く家にこうへん思ったら
いきなり私引っ越しします???え?意味がわからへん。
俺は現状が飲み込めなくて言葉を出せずにいた。
「ママがね、再婚して引っ越しすることになったの。
だからもうゆうくんとは会えなくなる...だからっ
最後の思い出にクローバーが欲しかったの...」
いやいやいや意味わからへんて。え、急すぎん?
え?もう会えへんの?え?なんでなん、わからへんわからへん...
「20歳の今日、またここに来るから。」
そう言って笑うと百合は走って去ってしまった。
俺は何も言えなかった。行くなという言葉も。
8年後の約束のことについても、何も。
俺は次会った時は二度と百合を離さないと決めた。
その為にこのクソみたいな現実に負けず
強く生きようと心に誓った。
...俺はこの時、知らなかった。
この日渡したクローバーが持つ意味を。
この日の誓いが呪いに変わることを。
「あれから10年か...なんやかんやあっというまやったな。」
優一は目を開けると百合を見て微笑んだ。
「ふふ、ほんまやね。来てくれるって信じてたで」
百合も優一を見て微笑んだ。
「もう恥ずかしいからこの話はやめよ笑 照れるわ」
優一はそういうと百合を振りほどき布団から抜け出し
机の上にあったライターと煙草を手に取り煙草を吸い始めた。
「照れ屋さんやねんから。ほんまにありがとうな。」
百合は体を起こし優一に頭を下げた。
「いやいや俺がそうしたかっただけやから気にすんな。
それよりお前大丈夫やったん?」
「あー、大丈夫大丈夫!久しぶりに私の顔を
見たくなっただけやねんて笑
どしたん?一日合わんかっただけで寂しかった?」
百合は笑いながら優一を揶揄った。
「はいはいもうええて。急やったからもうそろそろなんかと...」
「そんな縁起でもない笑 でもまぁそろそろ覚悟せんとやな...」
先程まで笑顔だった百合も少し表情が曇りだした。
「そっか、老いだけはどうしようもないからな...
親父さんは?元気なん?」
「俊雄さん?あぁ、元気元気!!うざいくらいに笑」
『...元気か、そりゃよかった』煙草を吸い終わると
優一はもう一度百合と同じ布団に入った。
太陽が昇り始め、小鳥たちの囀りが朝を知らせてくれる。
「昼くらいまで寝るか。昼からどっかいこか」
優一は大きなあくびをすると百合の方へ向き直った。
「いいね~、久しぶりにあの河原行こうよ!!」
百合は優一の誘いが嬉しかったのか上機嫌になった。
「この歳になってけ?笑 ...まぁええか」
そう2人は笑い合うと抱き合って二度寝を決め込むのであった。
家も近く何かと百合は俺に世話を焼いてきた。
幼稚園の頃百合はよく俺と結婚する、とか言っていたな。
今でも本気でそう思っているみたいやが...
結婚ということがどういうことかよく分からなかった
当時の俺でも百合とはずっと一緒にいるものだと思っていた。
小学校に上がってからもあいつの世話焼きは変わらなかった。
毎休み時間俺のクラスに来ては俺の所に来ては
周りのやつに夫婦だとか揶揄われたのを今でも思い出す。
あいつは満更でもない様子だったが俺は恥ずかしかった。
そんなこんなで小学校生活を送っていたわけだが
急に百合が俺から距離を取るようになった時期があった。
小学校生活最後の夏休みが入ってからだ。
毎日俺の家に来てはその辺の公園やら駄菓子屋やら
連れ回されたものだが夏休みに入ってからピタッと
俺の前に姿を現さなくなった。
おかしいな、とは思ったんだがなんせ...
その時の俺の家の状況もややこしくてな。
正直百合が来ても百合に構ってやれる精神的余裕なんて無かった。
ん?なに、今のご時世よくあることさ。親父が
借金残して何処かへ消えちまったんだよ、笑えるだろう。
まぁ当時の俺は笑えなかったよ、本当に。
親父が出て言ってから母親も狂ったようにパチンコに
行くようになったしもう家庭なんてもんはここには無かった。
親父が出て行くまでは普通の家庭だったんやで?
いや違うな、見えなかっただけ。この家に入っていた亀裂が。
初めから狂っていたんだろう。俺の家は。
それに何に借金していたかというと別の女に貢いでたらしい。
しかも子連れのバツイチの女に、笑えるだろう?
俺たちは捨てられたって訳さ、はぁ、本当に笑えるよ。
それに加えて母親も俺に手を出すようになった。
パチンコから帰って来るやいなや俺が目に入ると俺を
部屋中引き摺り回し気がすむまで殴りやがるんだ。
怖かったし、なにより両親を憎むようになった。
何事にも期待しないようになった、すぐ諦めるようになった。
文才が無いもんでね、あまり状況が掴めなかったかも
しれないがまぁこんな風に人生に絶望してたわけさ。
そしたら夏休み最後の日だ、百合が久しぶりに俺の家に訪れた。
「ゆうくん、おる?」家のドアをノックする音。
正直出る気力も無かったが、久しぶりに百合の声を
聞いた俺は気付くと無意識に体が動いてしまっていた。
「...なに?」自分でも無愛想だと思うがこれが精一杯の返しだった
ドアを開けるとそこにはそこには白いワンピースを着た百合が居た
「...ちょっとついて来てくれへん?...いや来て」
「は?こんな暑いに日にどこに行こうっていうねん」
外を見ると太陽がこれでもかと照っており空を見上げれない程だ。
「最後かも...知れないから」
そういうと百合は俺から目を逸らし、項垂れるように俯いた。
冗談...には見えなかった。何か事情があることを
察した俺は黙ってついて行くことにしたのだった。
「おい、待てよ、なにもこんな暑いに日に外に出なくたって」
流石に我慢が出来なかった。暑すぎる、冗談抜きで。
いくらあいつになにか事情があったとしてもこの暑さは無い。
するとあいつは誕生日だから今日じゃ無いと嫌だと、
クローバーが欲しいから見つけて私にくれと逆ギレすると
また走り出した。本当に勘弁して欲しいものだ。
昼頃から探し始めたんだが全く見つからなくて
気付いたら日も暮れてもうヘトヘトになってさ。
もう帰ろうと言おうと百合の方見たらまだ諦めてなくて。
5時間ぐらい探してないんやで?普通諦めるやろ?
でも百合は諦めてなかった、だから俺も諦めなかった。
烏も鳴き始めてそろそろ暗くてなにも見えなくなるって時に
やっと、やっと、やっとのことで四つ葉のクローバーを見つけた。
「百合っ...見つけたで! 四つ葉のクローバー!!」
俺は見つけると一目散に百合の元へ駆け寄った。
「ッ...うぅ... ありがとおぉ...」
見つからない不安と暗い恐怖感で押し潰されそうだったのが
やっと見つかったことで心が緩んでしまったのか
百合はビービー泣き始めた。
「実はね、うち、引っ越しするんや...だから...ゆうくんに...」
...は?急になんや。暫く家にこうへん思ったら
いきなり私引っ越しします???え?意味がわからへん。
俺は現状が飲み込めなくて言葉を出せずにいた。
「ママがね、再婚して引っ越しすることになったの。
だからもうゆうくんとは会えなくなる...だからっ
最後の思い出にクローバーが欲しかったの...」
いやいやいや意味わからへんて。え、急すぎん?
え?もう会えへんの?え?なんでなん、わからへんわからへん...
「20歳の今日、またここに来るから。」
そう言って笑うと百合は走って去ってしまった。
俺は何も言えなかった。行くなという言葉も。
8年後の約束のことについても、何も。
俺は次会った時は二度と百合を離さないと決めた。
その為にこのクソみたいな現実に負けず
強く生きようと心に誓った。
...俺はこの時、知らなかった。
この日渡したクローバーが持つ意味を。
この日の誓いが呪いに変わることを。
「あれから10年か...なんやかんやあっというまやったな。」
優一は目を開けると百合を見て微笑んだ。
「ふふ、ほんまやね。来てくれるって信じてたで」
百合も優一を見て微笑んだ。
「もう恥ずかしいからこの話はやめよ笑 照れるわ」
優一はそういうと百合を振りほどき布団から抜け出し
机の上にあったライターと煙草を手に取り煙草を吸い始めた。
「照れ屋さんやねんから。ほんまにありがとうな。」
百合は体を起こし優一に頭を下げた。
「いやいや俺がそうしたかっただけやから気にすんな。
それよりお前大丈夫やったん?」
「あー、大丈夫大丈夫!久しぶりに私の顔を
見たくなっただけやねんて笑
どしたん?一日合わんかっただけで寂しかった?」
百合は笑いながら優一を揶揄った。
「はいはいもうええて。急やったからもうそろそろなんかと...」
「そんな縁起でもない笑 でもまぁそろそろ覚悟せんとやな...」
先程まで笑顔だった百合も少し表情が曇りだした。
「そっか、老いだけはどうしようもないからな...
親父さんは?元気なん?」
「俊雄さん?あぁ、元気元気!!うざいくらいに笑」
『...元気か、そりゃよかった』煙草を吸い終わると
優一はもう一度百合と同じ布団に入った。
太陽が昇り始め、小鳥たちの囀りが朝を知らせてくれる。
「昼くらいまで寝るか。昼からどっかいこか」
優一は大きなあくびをすると百合の方へ向き直った。
「いいね~、久しぶりにあの河原行こうよ!!」
百合は優一の誘いが嬉しかったのか上機嫌になった。
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