もう一度君と…

海津渚

文字の大きさ
上 下
29 / 41
1-4 遠崎佳奈

ヒーローの励まし

しおりを挟む
「先輩って好きな人とかいるんですか。」
 ぼーっとしていると隣の席に座っているヒロが聞いてきた。
 朝7時20分。
 電車に乗って学校に向かっている途中。目の前の景色がコロコロ変わっていく。
 好きな人か……。莉音ちゃんのキラキラした表情がまだ頭から離れない。
「ごめん、変な質問した。」
「あ、いや、大丈夫だよ。好きな人はいないかな。」
「やっぱりそうですよね。男子に興味がないって前にも。」
「うん…ヒロはいるの?」
「います!!めちゃかわいい人っす!」
「いいねー」
 ヒロが好きって思う人だからきっと優しくてしっかりした人だろうな。そう思いながらまた変わっていく外の景色を眺める。
「先輩何か悩んでいないすか。」
「え?何もないよ~」
「そっすか……。」

 しゅんとする彼を見て私は申し訳ない気持ちになった。あのことヒロに話したいとは思う。ただ、真実を伝えること、それは彼の親友を傷つけたことを知らせるってことで…。ヒロまでも悲しい思いにさせてしまうに違いないのだ。

「まもなく、天沢国際前一天沢国際前一お出口は左側ですー」
「先輩、降りますよ。」
「あ、そうだね!!」
 急いで荷物を持ってヒロに続いて電車を降りた。

 歩いていると、ヒロは立ち止まって私の方を振り返って言った。
「最近先輩変です。部活の小林先輩も心配して俺に聞いてくるんすよ。少しでも手助けできるならしたいので良ければ教えてくれませんか?話せば気が楽になるかもしれないし!」
 ヒロも楓も心配してくれていたんだ…。概要だけ話そうかな…。私は深呼吸をして言った。
「大切な人を傷つけてしまったんだ。」

「そうっすか…。でも傷つけてしまったって反省できているなら改善できると思います!体育祭の時、瞬時に俺を助けに来てくれたじゃないすか。そんな勇気ある先輩ならなんだってできます!!1年の間から救世主って呼ばれるくらいですし。」
「改善できるかな。会う機会がなくて。」
「それは困りましたね…。」

「でも頑張ってみる。機会は作るものだし。」
「俺はいつだって応援してます。」
 その言葉を聞いて何か熱いものがこみあげてきた。
 怖い。彼に拒絶されるかもしれない。でも、ちゃんと話したい。そして謝りたい。
「ありがとうヒロ。まるでヒーローだね。」
「救世主とヒーローのコンビっていいな。」
 ヒロはにっと歯を出して笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

【完結】その約束は果たされる事はなく

かずき りり
恋愛
貴方を愛していました。 森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。 私は貴方を愛してしまいました。 貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって… 貴方を諦めることは出来そうもありません。 …さようなら… ------- ※ハッピーエンドではありません ※3話完結となります ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

処理中です...