32 / 32
エピローグ
しおりを挟む
結婚式は半年後。
ふたりの思い出である、白薔薇の咲く季節にすることに決まった。
それが決まってからのノエリアは、結婚式のために忙しい日々を送ることになった。
最初に結婚式の日取りを聞いたときは、もう半年もあるのか、と思ったものだ。
けれどこうして日々忙しく過ごしていると、半年ではとても足りないと痛感した。
ドレスは何度も打ち合わせをした結果、淡いピンクのドレスに白薔薇を飾ることにした。それが決まったあとは、ドレスと白薔薇に似合う髪型を見つけるのに、とても苦労した。
アルブレヒトは忙しい合間に何度も様子を見に来たが、まだドレスは彼に見せていない。式の当日に彼に見せるつもりだった。
おかしなところはないか見てもらうため、兄には何度か仮縫いのドレス姿を披露したが、感極まった兄が、ノエリアのドレス姿を見て涙を浮かべたことには、本当に驚いた。
でも兄はノエリアと違い、すべてを覚えていたのだ。背負うものも大きかったのだろう。
「お兄様、ありがとう」
そんな兄を抱きしめて、ノエリアもまた涙を零す。
「いつでも味方になってくれるお兄様がいたから、私もここまで来ることができたの」
「アルブレヒトなら必ず、ノエリアを幸せにしてくれる」
「ええ、私も彼を幸せにするつもり」
それでもかわいい妹を攫っていくのだからと、兄は事あるごとに、ノエリアのドレス姿をアルブレヒトに自慢しているようだ。
ふたりの仲が良いのはとても微笑ましいことだが、アルブレヒトが期待しすぎているようで、当日が少しだけ怖くなってしまった。
式の前日になっても、何度も姿見でドレス姿を確認する。
金色の髪は片側に流して編み込み、そこに白薔薇の生花を飾っている。ベールにあしらっているのも、白薔薇だ。
淡いピンクのドレスは、デザインは大人っぽくシンプルにしたが、裾や袖には美しいレースをたっぷりと使っていた。
そうして胸には、母の形見の首飾り。
そんなノエリアの姿を見て、兄と、式に参列するために入国した父は、そろって瞳を潤ませていた。
「お父様、お兄様」
まだ式の前だが、ノエリアはそんなふたりに微笑んだ。
「今まで大切にしてくれて、愛してくれてありがとう。私は、とっても幸せだわ」
貴族の娘として、どんな結婚でも従うつもりだった。
すべてを諦めたこともあった。
でも最後には、ずっと愛していたアルブレヒトと、たくさんの人に祝福されて結ばれる。
ここまで至る道を考えるとつらいこともたくさんあったが、最後にこんな幸福を手にすることができた。
帰還したカミラも、ふたりの結婚式には出席してくれることになっていた。
彼女と恋人同士だったライードは今、ロイナン王国に帰還している。彼は忙しく働くことで寂しさを忘れようとしているようだった。
カミラはイースィ王国の王女であり、いずれは女王になる身である。ふたりはあれほど愛し合っているのに、このまま引き裂かれてしまうのかと思うと胸が痛んだ。
落ち込むノエリアに、心配いらないと言ったのは、兄のセリノだった。
「あのふたりのことなら、大丈夫だ。すべてを解決することができる案がある。そのうちわかる。だから落ち込まなくてもいい」
兄がそう言うなら、本当に大丈夫だろう。
だが兄は、イースィ王国の公爵家の嫡男だ。
いずれ兄とも別れなければならない。
そう思うとやはり寂しかったが、ノエリアにはアルブレヒトがいる。
彼とともに生きることが、ノエリアの望みだった。
こうして、ふたりの結婚式が盛大に行われた。
この日、初めてノエリアのウェディングドレス姿を見たアルブレヒトは、随分と長い間見惚れたあと、綺麗だと囁いてくれた。
「これほど美しい花嫁を手にすることができて、俺は幸せ者だな」
八年もの間、苦労を強いられてきた彼がそう言ってくれたことが、何よりも嬉しい。
「ありがとう。私も愛する人の妻になれて、とても嬉しいわ」
ふたりはドレスを気にしながら、そっと抱き合った。
再会したカミラはまず、イースィ王国の王女として、ロイナン王国の王妃となったノエリアに祝辞を述べた。そのあとに目を細めて、ノエリアの花嫁姿を美しいと言って褒めてくれた。
そんなカミラこそ、半年前よりもさらに美しくなったように思える。
でもカミラは恋人のライードと、ほぼ半年も離れて暮らしている。自分はずっと愛していた人と結ばれたのにと、ノエリアは少し罪悪感を持っていた。
だが彼女は、衝撃の事実を教えてくれた。
それはずっと兄が水面下で進めていたことだった。
「ネースティア公爵が、力になってくれたの」
「え、お父様が?」
「ええ。ライードを、公爵家の養子にしてくれたのよ。私は、そのライードと婚約する予定なの」
ならばカミラも愛する人と離れることなく、幸せになることができる。
「よかった……。本当に」
両手を祈るように組み合わせて、心からそう言う。
「ああ。それにライードには王配になるだけではなく、ネースティア公爵家も継いでもらう」
だが、続いた兄の言葉にはさすがに驚いた。
「え、お兄様? 公爵家はお兄様が」
「俺はこの国に残る」
ずっと前から決めていたのだろう。
兄は迷いのない口調でそう言うと、ノエリアを見た。
「今となってはロイナン王家の直系の血を引いているのは、アルブレヒトとノエリア。そして俺だけだ。公爵家ではなくロイナン王国の王族として生きることを、父は許してくれた」
この国に残ると言ったときから、兄はもう決めていたのだろう。
王族としての義務はもちろん、これから様々な困難に立ち向かっていかなければならないアルブレヒトを、傍で支えていく。
あの日の誓いを果たすために。
そしてライードも、取り潰された家を復興させるよりも、カミラとともにイースィ王国で生きる決意をした。
彼もかなり迷ったに違いない。
それでも最後には、カミラと生きる道を選んだ。
「お父様」
その後、様子を見に来てくれた父に、ノエリアは駆け寄った。
父はすべてを受け入れた優しい顔で、黙って頷いてくれた。
父は母を愛していた。
母の忘れ形見である兄と自分を、とても大切にしてくれた。
それでもふたりが望む方向に行けるように、自由に生きることを許してくれた。
それに父は、ひとりになるのではない。
ライードとカミラが新しい家族として、父と一緒にいてくれる。
「カミラ様。どうか父を、お願いいたします」
「もちろんよ。私の義父になるのだから」
カミラはそう言って、嬉しそうに笑った。
そうして彼女は、婚約者となるライードと、義理の父となるノエリアの父とともに、会場に戻って行った。
「……アルブレヒトは、お兄様の決定に何と言っていたの?」
そう尋ねると、兄は軽く首を傾げて笑う。
「もっとよく考えたほうがいいと言われた。だが、もう俺の心は決まっていた」
兄の決意は、ノエリアが思っていたよりもずっと固いようだ。
「私も、お兄様が一緒なら心強いわ」
だからノエリアはそれだけを兄に告げる。
「ああ。ふたりでアルブレヒトを支えて行こう」
これから新しい生活が始まる。
ノエリアはロイナン王国の王妃として、この国のために力を尽くすつもりだ。
不安もあるが、ノエリアの傍にはいつも、愛するアルブレヒトがいる。
結婚式の後。
アルブレヒトはあの山間の邸宅のように、ノエリアに本がたくさんある書斎をプレゼントしてくれた。この国の言葉で書かれている本は、今まで読んだことのないものばかりだ。
「ノエリア。君の人生が、今まで読んだ物語よりも幸せなものになるように、力を尽くそう」
そう言って抱きしめてくれる最愛の夫に、ノエリアも微笑む。
「私はあなたがいてくれるなら、いつだって幸せよ」
もう二度と、離れることはない。
たとえ長い月日が経過して、約束の白薔薇が枯れてしまうようなことがあっても、この愛が枯れることはないだろう。
【完】
ふたりの思い出である、白薔薇の咲く季節にすることに決まった。
それが決まってからのノエリアは、結婚式のために忙しい日々を送ることになった。
最初に結婚式の日取りを聞いたときは、もう半年もあるのか、と思ったものだ。
けれどこうして日々忙しく過ごしていると、半年ではとても足りないと痛感した。
ドレスは何度も打ち合わせをした結果、淡いピンクのドレスに白薔薇を飾ることにした。それが決まったあとは、ドレスと白薔薇に似合う髪型を見つけるのに、とても苦労した。
アルブレヒトは忙しい合間に何度も様子を見に来たが、まだドレスは彼に見せていない。式の当日に彼に見せるつもりだった。
おかしなところはないか見てもらうため、兄には何度か仮縫いのドレス姿を披露したが、感極まった兄が、ノエリアのドレス姿を見て涙を浮かべたことには、本当に驚いた。
でも兄はノエリアと違い、すべてを覚えていたのだ。背負うものも大きかったのだろう。
「お兄様、ありがとう」
そんな兄を抱きしめて、ノエリアもまた涙を零す。
「いつでも味方になってくれるお兄様がいたから、私もここまで来ることができたの」
「アルブレヒトなら必ず、ノエリアを幸せにしてくれる」
「ええ、私も彼を幸せにするつもり」
それでもかわいい妹を攫っていくのだからと、兄は事あるごとに、ノエリアのドレス姿をアルブレヒトに自慢しているようだ。
ふたりの仲が良いのはとても微笑ましいことだが、アルブレヒトが期待しすぎているようで、当日が少しだけ怖くなってしまった。
式の前日になっても、何度も姿見でドレス姿を確認する。
金色の髪は片側に流して編み込み、そこに白薔薇の生花を飾っている。ベールにあしらっているのも、白薔薇だ。
淡いピンクのドレスは、デザインは大人っぽくシンプルにしたが、裾や袖には美しいレースをたっぷりと使っていた。
そうして胸には、母の形見の首飾り。
そんなノエリアの姿を見て、兄と、式に参列するために入国した父は、そろって瞳を潤ませていた。
「お父様、お兄様」
まだ式の前だが、ノエリアはそんなふたりに微笑んだ。
「今まで大切にしてくれて、愛してくれてありがとう。私は、とっても幸せだわ」
貴族の娘として、どんな結婚でも従うつもりだった。
すべてを諦めたこともあった。
でも最後には、ずっと愛していたアルブレヒトと、たくさんの人に祝福されて結ばれる。
ここまで至る道を考えるとつらいこともたくさんあったが、最後にこんな幸福を手にすることができた。
帰還したカミラも、ふたりの結婚式には出席してくれることになっていた。
彼女と恋人同士だったライードは今、ロイナン王国に帰還している。彼は忙しく働くことで寂しさを忘れようとしているようだった。
カミラはイースィ王国の王女であり、いずれは女王になる身である。ふたりはあれほど愛し合っているのに、このまま引き裂かれてしまうのかと思うと胸が痛んだ。
落ち込むノエリアに、心配いらないと言ったのは、兄のセリノだった。
「あのふたりのことなら、大丈夫だ。すべてを解決することができる案がある。そのうちわかる。だから落ち込まなくてもいい」
兄がそう言うなら、本当に大丈夫だろう。
だが兄は、イースィ王国の公爵家の嫡男だ。
いずれ兄とも別れなければならない。
そう思うとやはり寂しかったが、ノエリアにはアルブレヒトがいる。
彼とともに生きることが、ノエリアの望みだった。
こうして、ふたりの結婚式が盛大に行われた。
この日、初めてノエリアのウェディングドレス姿を見たアルブレヒトは、随分と長い間見惚れたあと、綺麗だと囁いてくれた。
「これほど美しい花嫁を手にすることができて、俺は幸せ者だな」
八年もの間、苦労を強いられてきた彼がそう言ってくれたことが、何よりも嬉しい。
「ありがとう。私も愛する人の妻になれて、とても嬉しいわ」
ふたりはドレスを気にしながら、そっと抱き合った。
再会したカミラはまず、イースィ王国の王女として、ロイナン王国の王妃となったノエリアに祝辞を述べた。そのあとに目を細めて、ノエリアの花嫁姿を美しいと言って褒めてくれた。
そんなカミラこそ、半年前よりもさらに美しくなったように思える。
でもカミラは恋人のライードと、ほぼ半年も離れて暮らしている。自分はずっと愛していた人と結ばれたのにと、ノエリアは少し罪悪感を持っていた。
だが彼女は、衝撃の事実を教えてくれた。
それはずっと兄が水面下で進めていたことだった。
「ネースティア公爵が、力になってくれたの」
「え、お父様が?」
「ええ。ライードを、公爵家の養子にしてくれたのよ。私は、そのライードと婚約する予定なの」
ならばカミラも愛する人と離れることなく、幸せになることができる。
「よかった……。本当に」
両手を祈るように組み合わせて、心からそう言う。
「ああ。それにライードには王配になるだけではなく、ネースティア公爵家も継いでもらう」
だが、続いた兄の言葉にはさすがに驚いた。
「え、お兄様? 公爵家はお兄様が」
「俺はこの国に残る」
ずっと前から決めていたのだろう。
兄は迷いのない口調でそう言うと、ノエリアを見た。
「今となってはロイナン王家の直系の血を引いているのは、アルブレヒトとノエリア。そして俺だけだ。公爵家ではなくロイナン王国の王族として生きることを、父は許してくれた」
この国に残ると言ったときから、兄はもう決めていたのだろう。
王族としての義務はもちろん、これから様々な困難に立ち向かっていかなければならないアルブレヒトを、傍で支えていく。
あの日の誓いを果たすために。
そしてライードも、取り潰された家を復興させるよりも、カミラとともにイースィ王国で生きる決意をした。
彼もかなり迷ったに違いない。
それでも最後には、カミラと生きる道を選んだ。
「お父様」
その後、様子を見に来てくれた父に、ノエリアは駆け寄った。
父はすべてを受け入れた優しい顔で、黙って頷いてくれた。
父は母を愛していた。
母の忘れ形見である兄と自分を、とても大切にしてくれた。
それでもふたりが望む方向に行けるように、自由に生きることを許してくれた。
それに父は、ひとりになるのではない。
ライードとカミラが新しい家族として、父と一緒にいてくれる。
「カミラ様。どうか父を、お願いいたします」
「もちろんよ。私の義父になるのだから」
カミラはそう言って、嬉しそうに笑った。
そうして彼女は、婚約者となるライードと、義理の父となるノエリアの父とともに、会場に戻って行った。
「……アルブレヒトは、お兄様の決定に何と言っていたの?」
そう尋ねると、兄は軽く首を傾げて笑う。
「もっとよく考えたほうがいいと言われた。だが、もう俺の心は決まっていた」
兄の決意は、ノエリアが思っていたよりもずっと固いようだ。
「私も、お兄様が一緒なら心強いわ」
だからノエリアはそれだけを兄に告げる。
「ああ。ふたりでアルブレヒトを支えて行こう」
これから新しい生活が始まる。
ノエリアはロイナン王国の王妃として、この国のために力を尽くすつもりだ。
不安もあるが、ノエリアの傍にはいつも、愛するアルブレヒトがいる。
結婚式の後。
アルブレヒトはあの山間の邸宅のように、ノエリアに本がたくさんある書斎をプレゼントしてくれた。この国の言葉で書かれている本は、今まで読んだことのないものばかりだ。
「ノエリア。君の人生が、今まで読んだ物語よりも幸せなものになるように、力を尽くそう」
そう言って抱きしめてくれる最愛の夫に、ノエリアも微笑む。
「私はあなたがいてくれるなら、いつだって幸せよ」
もう二度と、離れることはない。
たとえ長い月日が経過して、約束の白薔薇が枯れてしまうようなことがあっても、この愛が枯れることはないだろう。
【完】
30
お気に入りに追加
1,238
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」
先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。
「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。
だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。
そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。
悪役王女に転生しました。でも、パパは何故か私を溺愛してきます。
下菊みこと
恋愛
父親からの激しい虐待の末死に至った少女、空道伶奈は大好きだった乙女ゲームの世界に異世界転生!しかし転生したのは悪役王女で!?あれ、なんで私を毛嫌いするはずのパパが私を溺愛してるの?
これは愛されなかった少女が愛されまくるよくある?異世界転生の話。
小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる