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プロローグ

『眼』が欲しい

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精神が大人でも、身体は子供…。

体力なんて無いに等しい。前の孤児院でも家事の手伝い以外は外で遊ばず本を読んでいた。

ふらふらの身体で、道を歩いていると呼び止められた。振り返るとそこには、

「き…き…」

金髪長髪美男子!!!?
ひぇ!?
悲鳴を飲み込んだおかげで、喉から変な音が出た。
クキュ、と喉を鳴らした私に、金髪長髪美男子もとい「推し」の青年が慌てた。
青年の翡翠色の瞳が、私を見つめ、
「大丈夫かい?」
「だ、だいじょうぶれす…」
舌が…ふるえる…
混乱する。え、推し?いま、こんな時な推し!??

「少しいいかな?」
「え…」
「君の名前はなんで言うのかな?」
「エミ…です」
「エミ、ちゃんか…」
推しは、私の名前を呟く。
推しに!ちゃん付された!!!

「突然だけどね」
「はい」

主人公に向けるであろう、優しい微笑みを私に向け、

「君の『眼』が欲しい」

そう言った。


ヒュ…と、また喉がなる。
ははは…。
まさかの、

リョ、リョナ系男子ーーー!!!


私は一歩後退り、
「あ、はははははは」
子供らしく笑い声をあげ、全力で逃げた。

「あ!待って!」

待てと言われて待つ馬鹿はいない。
薬を買わなきゃなのに、
「推しビジュが憎い!!」
「何が憎いの?」
「だから推しのビジュアルが……え?」
頭上から声が聞こえた。
走っている足音は私の分だけ。え?
隣を見る。さっきの青年が足を音を立てずに走っている。え?

「自己紹介が遅れたね。私は、ライハルト・グロウ。グロウ公爵家の長子だよ、我が妹よ」

は?

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