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「でも、ララさんのお母さまのお加減が、本当によくなかったら…」
「元気よ!あの親子、本当は仲が悪いのよ。娘が娘なら、母親も母親ね。二人して、いつもお金のことで喧嘩してるわ」
「そうでしたか。元気であれば、それでよいのですが」
「喧嘩するほどの元気は、ありまくってるから、大丈夫よ。それより、あなたは、自分の心配だけしてなさい。このご時世、女の子一人が、旅をするなんて危険だもの。…まぁ、私たちが守ってあげるから、大丈夫なんだけどね」
「ありがとうございます。いつも頼りにしてしまって」
「いいわよ。好きでやっていることだもの」

妖精は、基本的に自分の好きに生きています。
マリーさんの言っている言葉は、本当のことで、きっと私に興味がなくなれば、私がいくら頼んでも泣いても、きっと助けてはくれないでしょう。

「ふふ。それでも、ありがとうございます…港は、あちらのほうでしょうか?」
「そうね。この道をずっとまっすぐ行けば、着くと思うわ」
「はい」

なんだか、楽しみになってきて、私はわくわくとした気持ちで歩き始めました。
まるで、遠足の気分です。
途中で、保存食やお弁当を買っていると、ますますそんな気持ちになってきます。
これまで、ごはんは城の方が用意してくださるものだけを食べていたので、自分でこうして選んで食べるのは、初めてのことです。

「1000だよ」
「せ、…えーっと」

私、そういえばお金の数え方がわからないのでした。



一方、そのころ、城ではオリビエを追い出した王子とミアが、オリビエの部屋に入っているところだった。
今頃、オリビエの奴は、泣きながら、これからどうしたらいいのだろうと、うろついているかもしれない、と考えただけでなんだか気分が晴れ渡ってくる気持ちでいた。
部屋に引きこもるばかりで、何もしないくせに、偉そうなあの女。
父上のお気に入りで、息子の自分よりも、よほど気にかけてもらっている卑しい女。
父上が、珍しく話しかけてくれたかと思えば、いつもあの女の話題だった。
本当に煩わしくて、消えてしまえと願った存在は、あの女くらいなものだ。

「くっせ!!!」

オリビエの部屋は、絵の具の匂いが充満していた。
それに思わず、せき込み、吐き気がする。
こんなところで、暮らせるあの女の神経が信じられない。
ここは、オリビエのいわゆる作業部屋で、ベッドルームは、別にあったが、それでもこの部屋の中は、拷問部屋に匹敵するほどの悪臭に満ちていると、王子は思った。

「うわ、なんだこれ」
「きもちわるぅい」

オリビエの部屋は、そこら中に絵や札が置いてあった。
きちんと、どこに納品するものなのか、どんな用途で使うものなのかが、箱に詰められたり、整理された状態であった。
しかし、それでも量がすさまじい。
部屋の角には、奇妙な札が飾られ、奇妙な小さな家のようなものが置いてあった。
自分たちの身長より上のほうに置いてあるそれの横には、緑の葉がついた枝が左右にあり、小さな瓶やらなにやらが家の前に置いてある。
それが、どうにも不気味で、気持ち悪くて仕方ない。
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