上 下
38 / 47

38

しおりを挟む
「わかった。今度、聞いてみよう」
「そうしてみて。そしたら、もう少し乙女心がわかるようになると思うから」
「…ちなみに君のおすすめはあるか?」
「私は、あんまり恋愛小説は読まないわね…。どちらかというと、冒険小説が好きなの。あと、ファンタジー。最近は、児童文学なんかも読むようになったわ。やっぱり子ども向けに書かれているだけあって、面白いの」
「…そうか。残念だ…。君が惚れるような男を勉強してみたかったんだが」
「私は、恋愛小説を読むと、なんだか気恥ずかしくなってしまうのよね…」
「君らしい」

恋愛小説を読むのが、恥ずかしいのが、私らしいってどういうことかしら。

「君は、ほかの女性と比べて身だしなみを気にしていないようだし」
「む。一応、気は使っているわよ」
「そうか?香水や化粧品の類の匂いがしたことがないから、てっきりしないのかと」
「香水は、確かにつけないわね…お化粧も特別な時以外はしないし…。そういえば、ここの学校の令嬢たちは、気合入っている子が多いものね。そういう子たちと比べると、確かにお金も時間も使ってないといえるかもしれないわ」
「…この手紙。指紋の類はついていなかった」
「あら、そう。…拭ったのかしら」
「一応、気を付けていたらしいな。だが、少しだけ匂いが残っている」

そう言って、ルドルフが手紙を私に渡してくる。
匂い?
私の部屋に置いてあった手紙は、においなんかついていなかったような…。
…思い出せない。あの時は、あまり気にしていなかったから、においなんて、嗅ごうとも思わなかったから。

ルドルフから手紙を受け取り、においをかいでみると、確かに手紙から、香水のほのかに甘い香りがした。
… …この香り、どこかで嗅いだことがある…どこかしら。
とっても嗅ぎなれた匂いなのは間違いないんだけど…。

「手紙に匂いが残るなんて、ずっと手元に置いていたのかしら…。だめ。思い出せないわ」
「本当か?」
「え?」

ルドルフが、私をじっと私を見つめてくる。
なんのことかわからず、私は、困ってルドルフを見つめた。

「どういうこと?」
「この匂い、君の親友がいつもつけている香水の香りだろ」
「え?」

もう一度、手紙の匂いを嗅いでみる。
…確かにリリーがいつも気に入ってつけている百合の香水だ。
確かに嗅ぎなれた匂いなのは、納得できる。毎日、嗅いでいるのだから。

「この匂いが市販品であれば、犯人はわからないがな」
「…特注なの」
「…そうか」

特注で作ってもらった思い出の香水だと、自慢していた彼女の顔を思い出す。
世界に一つだけだと言っていたから、この匂いを持っているのは、リリー以外にいないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約なんてするんじゃなかった——そう言われたのならば。

ルーシャオ
恋愛
ビーレンフェン男爵家次女チェリーシャは、婚約者のスネルソン伯爵家嫡男アンソニーに振り回されていた。彼の買った時代遅れのドレスを着て、殴られたあざを隠すよう化粧をして、舞踏会へ連れていかれて、挙句にアンソニーの同級生たちの前で「婚約なんてするんじゃなかった」と嘲笑われる。 すでにアンソニーから離れられやしないと諦めていたチェリーシャの前に現れたのは、長い黒髪の貴公子だった。

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。 「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」 「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」  私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。  そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。  でも――。そんな毎日になるとは、思わない。  2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。  私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

幼馴染は不幸の始まり

mios
恋愛
「アリスの体調が悪くなって、申し訳ないがそちらに行けなくなった。」 何度目のキャンセルだろうか。 クラリッサの婚約者、イーサンは幼馴染アリスを大切にしている。婚約者のクラリッサよりもずっと。

罪なき令嬢 (11話作成済み)

京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。 5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。 5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、 見る者の心を奪う美女だった。 ※完結済みです。

わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず
恋愛
 ランファーズ子爵令嬢、エミリー。彼女は我が儘な妹マリオンとマリオンを溺愛する両親の理不尽な怒りを買い、お屋敷から追い出されてしまいました。  自分の思い通りになってマリオンは喜び、両親はそんなマリオンを見て嬉しそうにしていましたが――。  マリオン達は、まだ知りません。  それから僅か1か月後に、エミリーの追放を激しく後悔する羽目になることを。お屋敷に戻って来て欲しいと、エミリーに懇願しないといけなくなってしまうことを――。

婚約破棄って、貴方誰ですか?

やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。 何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。 「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」

国王陛下に激怒されたから、戻って来てくれと言われても困ります

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のアンナ・イグマリオはルード・フィクス公爵から婚約破棄をされる。 理由は婚約状態で身体を差し出さないなら必要ないという身勝手極まりないもの。 アンナは彼の屋敷から追放されてしまうが、その後はとんでもないことが起きるのだった。 アンナに片想いをしていた、若き国王陛下はルードに激怒した。ルードは恐怖し、少しでも国王陛下からの怒りを抑える為に、アンナに謝罪しながら戻って来て欲しいと言うが……。 運命の歯車はこの辺りから正常に動作しなくなっていく。

今更何の御用でしょう? ウザいので止めて下さいませんか?

ノアにゃん
恋愛
私は3年前に幼馴染の王子に告白して「馬鹿じゃないの?」と最低な一瞬で振られた侯爵令嬢 その3年前に私を振った王子がいきなりベタベタし始めた はっきり言ってウザい、しつこい、キモい、、、 王子には言いませんよ?不敬罪になりますもの。 そして私は知りませんでした。これが1,000年前の再来だという事を…………。 ※ 8/ 9 HOTランキング 2位 ありがとう御座います‼ ※ 8/ 9 HOTランキング  1位 ありがとう御座います‼ ※過去最高 154,000ポイント  ありがとう御座います‼

処理中です...