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そうして私は、寮に帰ると買った本を読んだ。
ルームメイトが、私の買った本が推理小説だということを、目ざとく見つけて、「あんな平民と一緒にいたら、こちらの格が下がる」などということを寮母に伝えて、部屋替えをされたのだった。
「…そんなこともあったな」
「思い出したのか」
私は、こくりとうなずき、そして、一つの疑問があった。
あれから、ルドルフをあの本屋で見かけたことはなかった。
「これは、僕が一週間考えて、作ったオリジナルの紙袋だよ!」
「へー」
「で、これがカバー」
「へぇ…紙のブックカバー…おもしろいですね。かわいいし。本も汚れないで済むし、なにより紙だから、汚れたら手軽に捨てられますし」
紙のブックカバーなんて、初めて見た。
この国には、大小さまざまな本屋があるが、紙のブックカバーなんてものがあるのは、ここだけなのではないだろうか。
「そうだろう!画期的なんだ!僕は、これを季節ごとに変えようと思っている!カバーを集めても楽しいよ」
「よく、こんなアイデアを思いつきましたね」
「極東の国で、これを見かけてね。発見したときは、世紀の大発明に驚いたよ。それからというもの、時折極東の国に訪れては、この紙のブックカバーを集めるのが、趣味になっているんだ。あそこは、神の国だよ。どこの本屋でもそこのオリジナルのものが、無料でもらえるんだから…」
「へえ。それは、少し気になります。行ってみたいですね」
「そうかい!じゃあ、今度一緒に行こうか」
「お互いのスケジュールが合いましたらね」
そうして、喜々として自身が集めた紙のブックカバーコレクションなるものを見せられたなぁ。確かに、あれは集めるのも楽しくなるだろう。
そういえば。
時折、ルドルフを見かけたときは、あのお店のブックカバーを付けた本を読んでいる姿を見かけることがある。女子生徒に「なんの本を読んでいるの?」なんて、話しかけられた際は、慌てた様子で、「なんでもない。ただの参考書だ」なんて、本をしまっていたから、もしかして、見られたら困る本を読んでいたのかもしれない。詮索はしないけど。
そう思うと、確かに紙のブックカバーは、便利だ。細かいサイズ調整も紙を折れば、手軽に変えられるし、何を読んでいるか見られる心配もない。
私もあの時、していればよかったかしら。
まぁ。あの女子生徒とは、もともと気が合わなかったし、リリーと会えたから結果オーライだけど。
「ルドルフもあの店に通っているのね」
「そ、そうだ…」
「そういえば、よくあの店を見つけられたわね。あそこ、あんまり場所が良くないじゃない。前から、知っていたというわけでもなさそうだし」
「そ、それは… …」
もにょもにょと、ルドルフは、言葉を濁している。
ルームメイトが、私の買った本が推理小説だということを、目ざとく見つけて、「あんな平民と一緒にいたら、こちらの格が下がる」などということを寮母に伝えて、部屋替えをされたのだった。
「…そんなこともあったな」
「思い出したのか」
私は、こくりとうなずき、そして、一つの疑問があった。
あれから、ルドルフをあの本屋で見かけたことはなかった。
「これは、僕が一週間考えて、作ったオリジナルの紙袋だよ!」
「へー」
「で、これがカバー」
「へぇ…紙のブックカバー…おもしろいですね。かわいいし。本も汚れないで済むし、なにより紙だから、汚れたら手軽に捨てられますし」
紙のブックカバーなんて、初めて見た。
この国には、大小さまざまな本屋があるが、紙のブックカバーなんてものがあるのは、ここだけなのではないだろうか。
「そうだろう!画期的なんだ!僕は、これを季節ごとに変えようと思っている!カバーを集めても楽しいよ」
「よく、こんなアイデアを思いつきましたね」
「極東の国で、これを見かけてね。発見したときは、世紀の大発明に驚いたよ。それからというもの、時折極東の国に訪れては、この紙のブックカバーを集めるのが、趣味になっているんだ。あそこは、神の国だよ。どこの本屋でもそこのオリジナルのものが、無料でもらえるんだから…」
「へえ。それは、少し気になります。行ってみたいですね」
「そうかい!じゃあ、今度一緒に行こうか」
「お互いのスケジュールが合いましたらね」
そうして、喜々として自身が集めた紙のブックカバーコレクションなるものを見せられたなぁ。確かに、あれは集めるのも楽しくなるだろう。
そういえば。
時折、ルドルフを見かけたときは、あのお店のブックカバーを付けた本を読んでいる姿を見かけることがある。女子生徒に「なんの本を読んでいるの?」なんて、話しかけられた際は、慌てた様子で、「なんでもない。ただの参考書だ」なんて、本をしまっていたから、もしかして、見られたら困る本を読んでいたのかもしれない。詮索はしないけど。
そう思うと、確かに紙のブックカバーは、便利だ。細かいサイズ調整も紙を折れば、手軽に変えられるし、何を読んでいるか見られる心配もない。
私もあの時、していればよかったかしら。
まぁ。あの女子生徒とは、もともと気が合わなかったし、リリーと会えたから結果オーライだけど。
「ルドルフもあの店に通っているのね」
「そ、そうだ…」
「そういえば、よくあの店を見つけられたわね。あそこ、あんまり場所が良くないじゃない。前から、知っていたというわけでもなさそうだし」
「そ、それは… …」
もにょもにょと、ルドルフは、言葉を濁している。
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