上 下
28 / 47

28

しおりを挟む
そして、手紙騒動はおしまいに思われたある日、私はまたしてもあの見覚えのある白い手紙を目にすることになる。

「あ。さっきの教室にノートを忘れてきたみたい」

教科書と一緒に持ったつもりだったのだが、ノートだけを残してしまったらしい。

「あら。では、私ここで待ってますわね」
「うん。すぐとってくるから」
「あんまり慌てますと、転びますわよ」

リリーの言葉に手を振りながら、私は教室へと走る。
そして、もちろんノートは机に置いてあった。
手紙が中に挟み込まれた状態で。

「あれ」

差出人は書いていない。
あいからず、真っ白な封筒はシンプルだ。
封を開け、手紙を確認してみると「いつも見ている」と書かれてあった。
私は、思わず周囲を確かめる。
この教室のどこかに潜んでいるような気がしたからだ。
さっきの授業で一緒だったのだろうか。
ということは、同学年…。
もしかして、私のノートは忘れたのではなくて、抜かれたのだろうか。
この手紙を見せるために?
自分がそばにいることをアピールするために……?

「おい」
「ひっ」

声をかけられて、反射的に後ろを振り返る。
いつの間にいたのだろうか。
ルドルフが、仁王立ちしている。
ま、まさかルドルフがこの手紙を?

「な、なに…」
「どうした。こんな教室に一人で。いつもの友達と一緒じゃないのか」

近づいてくるルドルフを警戒して、近づいてくる分、距離をとった。
そんな私の行動が、不審に思えたらしい。
立ち止まり、それ以上、近づいてくることはなくなったので、私は少しだけほっとした。

「もうすぐ予鈴が鳴る。次の授業の教室まで、ここは少し遠い」
「そんなことあなたに関係ある?」
「…君と僕は同じ授業をとっているから。…関係ないわけでもない」
「……」

さっきの授業は、ルドルフとは違う授業だったから、彼がこのノートを抜くのは不可能だ。
ということは、ルドルフではない?

「どうしたんだ。いったい。まるで、野生の猫だ」
「手紙が」
「手紙?」
「この手紙が、最近私に届くの」

そう言って、ルドルフに手紙の件を話した。

「どうして、別の人間に相談しなかったんだ。これは、あきらかにストーカーだろう。先生に伝えたほうが…いや。どうせ取り合ってくれないか…」
「ストーカー?」

私にストーカー?
そんなことある?

「で、でも、私にストーカーだなんて…それにあまりことを大きくしたくないの」
「だが、君は現に怯えているじゃないか。この手紙を見て、怖くなったんだろう?」
「それは…そうだけど」
「手紙をプライベートな部屋に置いていくなんて気持ちが悪い。そのハウスキーパーは、なにをしていたんだ。もっとほかに情報はないのか」
「もうとっくに減給処分されて…」
「減給処分?なまぬるい。クビでいいじゃないか。僕が代わりに言ってくる」
「そ、そんなルドルフが、行くまでのことはないんじゃないの?」
「君が平民だからとなめられているんだ。僕や僕くらいの爵位をもつ家の子息であれば、こんなことが起きた時点で、首にされてもおかしくはない。責任を問われて、賠償金問題になるかもな」
「そんな大げさな」
「おおげなわけあるか。高い身分の人間におかしなものを送り付けてくる人間は、どこにでもいる」
「……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

知らない人に「お前とは婚約破棄をする」と言われました。私の婚約者は貴方じゃありません。

あお
恋愛
エリスが学園のカフェテラスで人を待っていたら、見知らぬ男女がやってきて。 「お前と婚約破棄して、ユリアと結婚する。もう決めた事だ。ヴェラー伯爵には話をつけてある。ユリアを妻として、俺が婿養子に入るって事をな」 と婚約破棄を宣言した。 誰かとお間違えでないですか?  いや、でも女の方、面影があるわ。 お母様が亡くなった後、喪が明ける前に元父が連れ込んだ愛人の子。 ヴェラー家とは縁を切ったはずなのに、これはなんの嫌がらせかしら。 私は、アウリーデ公爵令嬢。 あなた達、こんな公衆の面前で、公爵令嬢を侮辱して、ただで済むとは思わないことね。 遅れてやって来たエリスの婚約者ルイス。 エリスを完璧にエスコートしながら、エリスに喧嘩を売った二人に格の違いを見せつけつつ誤解を解いていく。 元実家のトラブルに巻き込まれたエリスと、彼女の婚約者ルイス。愚かなお猿さんたちの話。 全7話完結。予約投稿済です。

聖女の私を追放?ちょうど私も出て行こうとしていたところです

京月
恋愛
トランプ王国で聖女として働いていたリリスをあまりよく思わない王子ガドラ。リリスに濡れ衣を着せ追放を言い渡す。ガドラ「リリス、お前はこの国から追放だ!!」(ドヤ) リリス「ちょうど私もこの国を出ようとしていたところなんですよ」(ニコ) ガドラ「……え?」

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。 完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? 第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- カクヨム、なろうにも投稿しています。

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

子爵令息だからと馬鹿にした元婚約者は最低です。私の新しい婚約者は彼ではありませんよ?

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のカミーユ・シャスカは婚約者であり、侯爵のクロッセ・エンブリオに婚約破棄されてしまう。 カミーユには幼馴染で王子殿下であるマークス・トルドイが居た。彼女は彼と婚約することになる。 マークスは子爵令息のゼラン・コルカストを常に付き人として同行させていた。それだけ信頼のある人物だということだ。 カミーユはマークスと出会う為の日時調整などで、ゼランと一緒に居ることが増えていき…… 現場を目撃したクロッセは新しい婚約者はゼランであると勘違いするのだった。

邪魔者というなら私は自由にさせてもらいますね

影茸
恋愛
 これまで必死に家族の為に尽くしてきた令嬢セルリア。  しかし彼女は婚約者を妹に渡すよう言われてしまう。  もちろん抵抗する彼女に、家族どころか婚約者さえ冷たく吐き捨てる。  ──妹の幸せを祈れない邪魔者、と。  しかし、家族も婚約者も知る由もなかった。  今までどれだけセルリアが、自分達の為に貢献してきたか。  ……そして、そんな彼女が自分達を見限ればどうなるかを。  これはようやく自由を手にした令嬢が、幸せに気づくまでの物語。 ※試験的にタイトル付け足しました。

処理中です...