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「ひ、人の婚約者に…婚約を申し込むなど、貴様のほうが紳士の風上にもおけないじゃないかっ!」
「なにを言っている。貴殿は、彼女に婚約破棄を叩きつけたという聞く。好いた女の相手が消え、これ好機と思わない男がどこにいる」
「は」
「きゃ~♡あつ~い」
「ま、まだ婚約破棄と決まったわけでは…」
「遅い!」
「っ!」
「元より、お前から言い出したこと。そして、それを彼女も、彼女の家族もそれを受けた。お前は、もう彼女の何でもない。わかったら、とっとと失せろ」
「… …アリシア」
「ロミオ。最初から、お伝えした通り。私たちは、利害の一致で婚約した関係。あなたから解消したいと願い出たことです。ならば、私はそれに答えるまで」
「じゃ、じゃあ、僕がまた婚約を申し込めば、君は答えてくれるんだね」
「……」

どうして、そうなるんだ。
押し問答に頭が痛くなる。
言葉が通じないのか。いや、むしろ通じないのは、常識か。

「そもそものきっかけは、あなたの浮気よ。どうして、それを許すと思えるの」
「あ、あれは、だから、そそのかされて…」
「そそのかされたら、誰にでもしっぽを振るのね。あなたという人は。…あなたに心の余裕を割いている余裕は、私にはないのよ。これ以上、騒がれたくないなら、早く私の前から消えてくださる?」
「…その言葉遣いはなんだ!僕は名家の家だぞ!」
「ならば、僕も名家だな。アルセウムの家が、彼女の盾になろう」
「ぅぐっ!アリシアっ!」
「見苦しいっ!吠えてないで、あなたは、自身の最愛と共にいなさい!もう誰もあなたを責めません!」
「アリシア…覚えてろよ」

そう言って、ロミオは学校のほうへ向かった。

「ふぅ」

疲労感が半端ない。
これから授業だというのに、すでに疲れている。

「アルセウム。どうもありがとう。おかげで助かったわ」
「驚いた。君は、きちんとお礼が言えるようだ」
「……」

アルセウムのこういうとことが嫌いなのよ。
嫌みでしか、返事できないの?

「私がお礼を言わないことがあって?」
「お礼を言われたことがないな」
「言われるようなことしたことないからでしょう」

この男、いつも会えば、嫌みか自慢しかしてこなかった。
それなのにお礼を言う女が、どこにいる。
生きていてありがとうとでも言えと?

「おあいにくさま、自慢話にお礼を言うような教育は受けてこなかったものですので」
「あら」

リリーが、口に手を当てている。

「それって、アピールしてたってことになりませんか?」
「アピール?」
「……」

アルセウムの顔が真っ赤だ。

「私と会うたびに自己PRしてたってわけ…?」
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