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プロローグ

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数年前、私はこの国に聖女として召喚された。
それは、もう最悪なタイミングで。

3回の転職の末、ようやく定時上がりの固定給25万円というそこそこ良い職場に巡り合えたところだった。1年にも渡る就職活動、何十回と繰り返された面接の末、ようやく出会えたところだった。そこから3か月経ち、ようやく新しい仕事にも慣れてきて、楽しくなってきたところだった。……だったのだが、仕事から帰宅して、靴を脱ぎ、スーツの上着をハンガーにかけていた時、よくわからない光に包まれたと思ったら、「うおおおおおおお!!!!」という叫び声が聞こえたと思いきや、よくわからねぇおっさんに囲まれていた時の私の心境は、一体どんなもんだったと思いますか。

ええ。まぁ、最初は困惑しましたよ。

そこそこ広い見慣れたワンルームから一変して、洋風の広間が目の前に広がっていたら、誰でも困惑しますよ。
足元では、円形に変な文様が書かれていた魔法陣らしきものが、かすかに光っていた。見渡せば、いかにも騎士ですって感じの鎧を着こんだ男たちと、顔を覆い隠すくらい大きいフードを被り、足首まである白いローブを着た人間たちがいた。

騎士たちは、こちらをじろりと睨みつけており、どう見ても友好的とは思えない。半信半疑といったような感じだろうか。怪しい人間が突然現われでもしたかのような反応だ。私から見たら、怪しいのはそちらのほうだと言いたい。そっくりそのまま、その反応を返したいくらいだ。
ローブのほうはというと、……当然ながら、表情が見えないので、反応がわかりづらい。喜んでる?落ち込んでる?……全然わからない。初対面の人間は第一印象が大事だと教わらなかったのか。なんなんだ。この白けた空気は。いたたまれなくなってきた。

右を見れば、窓があった。
私の部屋から見える空は、すっかり夕暮れのオレンジの空が、ここでは真っ青だった。時間までも違うらしい。
左を見れば、なにやら女子高生らしき、女の子が。
それもとびきりの美少女である。
紺色のブレザーに赤いストライプのリボン。胸元にちらりと見えた金色の校章は名門と名高いあの学校のものだろうか。通勤中、よく見るから、制服のデザインは、見覚えがある。
かわいそうに。すっかりこの状況におびえ切っていた。
無理もない。
私も、もしあと10年くらい若かったら、泣いていたかもしれない。
年をとっていいことは、驚かなくなることねってあのソフィーさんも言っていたし。まぁ冷静になったところで、私になにかできるわけでもないんだけど。
むしろ、こうやってダラダラ考えてる時間のほうが多くなったのは、いいことでも何でもないような気がするんだけど。
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