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城につくと、兵士を襲っていた魔物たちがこちらに気づき、攻撃してくるが、外に比べると弱い。術師の光魔法であっさりと消えた。
兵士たちが、呆然とこちらを見ている。
死んだ人間を見たら、あんな顔をするのではないかと思う。

「……聖女?」
「中はどうなってますか」

さすがに城の中は結界がまだ残っているようだ。
崩れかかってはいるし、重傷者はたくさん見えるが。
私は、結界を張り直し、少しだけ漂う瘴気を払った。
それから、私と殿下、術師、で手分けして、怪我を治していると、ようやく状況を把握したのか、兵士たちが口々に騒ぎ始めた。
瘴気が払われ、結界を張りなおしたおかげで、気力も回復したのだろう。
ずいぶんと元気だった。

「なんでもっと早くに来ないんだ!私たちを見下しに来たのか!?」
「そんなんじゃありません。それに私も、もっと早くに来たかったのですが、あなた方の王がそれを許さなかったのです」
「そんなの今までみたいに無視すればよかっただろう!」
「あんたはいつもそうだな!すました顔で、関係ない顔をする!あんたのせいで、この国は壊れた!アンタのせいだ!」

その言葉を皮切りにあちこちから、

「聖女?」「おい!聖女がいるぞ!」「なんで今さら」「あんたがもっと早くに来たら、仲間たちは死なずに済んだのに!」「お前が死ねばよかったんだ」

という言葉が飛び交う。
この感じ、久しぶりだな。
他責思考は変わらないらしい。
やっぱりこの土地は好きだけど、国民は好きじゃないな。それから、この国を飛び出して、正解だな、と私は間違っていなかったことを再確認した。
兵士が、淡々とほかの人の怪我を治療しているのが気に食わなかったらしい。
私の胸倉をつかむと、こぶしをあげ、そのまま、

「助けに来たのに、なんだその言い方は」

殿下が切れた。
殴りかかろうとした兵士を、殿下が殴った。

「帰ろう」
「いやいや。ここまで来て帰れません」
「失礼すぎる。なんだ、この連中は!おまけに助けに来たのに、殴ろうとするとは、とても人のやることとは思えない!」
「そういう人たちなので」
「どういう環境で育ったら、こうなるんだっ!?」

殿下には分からないかもしれませんが、この国では私の責任にすると、すべて丸く収まるという教育がされていたんですよ。洗脳ともいうかもしれませんが。

「もう責務は果たした。結界も張り、瘴気も払った。土地神も力を取り戻した。もうすることはない」
「まぁ、そうなんですけど」
「おい。聖女は置いて行けよ」
「そうだそうだ」「俺たちの聖女だぞ」「こっちの持ち物を勝手に盗んだのはそっちだろ」「そのせいで俺たちは苦労することになったんだ」「賠償金請求するからな」

「黙れ!」

殿下は、普段と違って怒りまくっている。

「まぁまぁ。落ち着いてください」
「リラ!なぜ、そう落ち着いている!」
「この国を出る前に、ちょっと顔だけ見たい人がいるんです」
「顔?…まさか」


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