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あれから半年。帝国の暮らしに少し、慣れてきたところだった。

「あら。案外、持ったわね」

夢を見た。
自分が、元いた国の夢。
魔物に襲われ、強い瘴気で、ほかの国の助けも来ない孤立した国。
王が、怒り狂い、王子の腹を剣で刺している場面。
自称聖女が、魔物の群れに放り込まれ、食べられている場面。

これは、まだ起きていない出来事だが、近いうちに現実になることだろう。
あの国は、すでに冒険者もよらない辺鄙な場所。
助けるメリットもないから、無理をして助けようとする国なんて、いないだろう。
すでに聖女に見捨てられた。という噂が流れているくらいだ(流したのは、私だが)。
下手に自国の聖女に向かわせたところで、無事で帰ってくる保証もない。
聖女が、大事にされている国ほど、嫌がることだろう。

「大臣に聞いてみましょうか」



聖女には、一人一人、国のことで相談できる大臣がついている。
いわゆる相談役といったところだ。
聖女一人に大げさなと思ってしまうが、帝国は広く、敵も多い。
少しでも違和感があれば、気軽に言ってほしい。と言われていた。
元いた国は、小さい国だったし、小さいころから、よく知っている顔だったから、簡単に話せる相手ではあったが、私の話をまじめに聞いてくれる人なんて、ほとんどいなかったから、国が違えば、対応も違うのね。と驚いた。

「ごきげんよう」
「おや、第5聖女様。どうされましたか」

国を守る立場である聖女は、名前ではなく、役職で呼ぶのが、礼儀だそうだ。
だから、私も5人目の聖女ということで、他人から名前を呼ばれることは、少ない。
両親ともなかなか会えないため、ほとんど、名前で呼ばれることはない。
名前を呼ばれることが少ないのは、前の国と変わらないので、そこは少し寂しいところだ。

「はい。少しお聞きしたいことがありまして…実は、夢を見まして」
「ほう。夢ですか」

聖女が見る夢は、予知夢であることが多い。
自国の危険を感知することも多いから、大臣は途端にまじめな顔になった。
私の予知夢は、頻度が多く、はっきりとしたものが見えるため、国では「予知見の聖女」と二つ名が付いていることを知った時は、恥ずかしかったものだ。
いずれも外れていないので、信憑性も高い。
最初は、あまりにも見るものだから、疑われることも多く、「目立ちたがり屋の構われちゃん」と、馬鹿にされていたのも、懐かしい。
今では、その予知夢の力を欲しがる国から、狙われているから、気を付けるようにと、毎日注意されている。

「実は、私が昔住んでいた国のことなのですが…」
「あんな国、思い出すのはおやめなさい」
「え?」
「いい気味です。第5聖女様、あんな国、滅んで当然なのです」
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