上 下
5 / 41

しおりを挟む
「200万って、どういうことですか」
「このお守りを買えば、運が開くって言ってたよな。だから、俺は買ったんだよ」
「そうですか」
「このお守りを持っていれば、富くじ1等が当たるっていうから、俺は買ったんだよ」
「富くじ!?そんなこと言ってません」
「福を招くお守りだって、お前が言ったんじゃねーか!嘘ついてたのか!なら、やっぱりお前は詐欺師だ!」
「いやいやいや…私が説明したのは、このお守りを持っていれば、自分の進みたいと思っている道が、少しだけ進みやすくなる、そのお手伝いをしてくれるというものです。富くじ一等は…当たる人もいるかもしれませんが、絶対ではありませんよ」
「嘘つきだ!この女嘘つきやがった!俺から、大金をだましとりやがった」
「それで、200万ってどういうことですか」
「あんたのお守りを買ってから、不幸なことばかり起きる。この前は、楽に稼げるからっていうもんで買った商材が、インチキだった。そのせいで、俺は丸々200万とられた」
「それで、200万ですか…」
「なぁ…返せよ…俺に200万…あんたのお守りのせいで、俺は運が開くどころか、落とし穴に落ちた。全身複雑骨折だ…あんたのお守りのせいだ」
「それは、私のお守りのせいじゃありませんよ」
「だが、運が開けなかったのは、確かだ」
「それは… …」

私のお守りのせいで、不幸になった人がいる…。
でも、これは、この人のせいであって、お守りのせいじゃない。…と思いたい。

「だが、ここから買ったお守りで、俺は金を少し取り戻せたんだ」
「え。ど、どうやって…」
「このお守りは、金運アップのお守りでな。これを買ってすぐに、道端に1万が落ちていた。
次の日もだ」
「は、はぁ…」

それは、純粋にすごい。

「それから、奇跡が起きた。俺の家に商材を売りに男がやってきた。さすがに俺も馬鹿じゃねーから、最初は信用しなかった。だが、無料お試しで、やってもいいって言われたもんだから、こいつを売り始めてた。… …そしたら、なんと50万の稼ぎだ」
「そ、そうですか…」
「男に聞いたら、最初に稼いだお金は、もらってもいいってことで、実質ただで50万が手に入ったもんだ。どうだ!これが本物のお守りの効果だ。あんたのところとは、力が違う」
「そんな…」

そんなことが、実際にあるのだろうか。
なんだかもうお守りのせいなんだか、助けなんだかよく分からない。

「他にも貴方のお守りのせいで不幸になった方。私のお守りで幸福になった方がおります。その方たちの話も聞きますか?」
「いえ。別に結構です」
「では、認めますか?貴方のお守りが、偽物であることを。貴方は、詐欺師であることを」
「み、認めるわけないじゃないですか」
「ですが、判決はもう決まっています。…そうですよね?」

と偉そうにおっさんは、自身の勝ちを決めつけていたが、意外なことに証拠不十分ということで、私は罪を免れた。
とんだ、茶番である。
だが、この事件をきっかけに、私はこの国を出ざるを得ない状況に陥ることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【完結保証】あれだけ愚図と罵ったんですから、私がいなくても大丈夫ですよね? 『元』婚約者様?

りーふぃあ
恋愛
 有望な子爵家と婚約を結んだ男爵令嬢、レイナ・ミドルダム。  しかし待っていたのは義理の実家に召し使いのように扱われる日々だった。  あるパーティーの日、婚約者のランザス・ロージアは、レイナのドレスを取り上げて妹に渡してしまう。 「悔しかったら婚約破棄でもしてみろ。まあ、お前みたいな愚図にそんな度胸はないだろうけどな」  その瞬間、ぶつん、とレイナの頭の中が何かが切れた。  ……いいでしょう。  そんなに私のことが気に入らないなら、こんな婚約はもういりません!  領地に戻ったレイナは領民たちに温かく迎えられる。  さらには学院時代に仲がよかった第一王子のフィリエルにも積極的にアプローチされたりと、幸せな生活を取り戻していく。    一方ロージア領では、領地運営をレイナに押し付けていたせいでだんだん領地の経営がほころび始めて……?  これは義両親の一族に虐められていた男爵令嬢が、周りの人たちに愛されて幸せになっていくお話。  ★ ★ ★ ※ご都合主義注意です! ※史実とは関係ございません、架空世界のお話です! ※【宣伝】新連載始めました!  婚約破棄されましたが、私は勘違いをしていたようです。  こちらもよろしくお願いします!

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
 宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

処理中です...