上 下
19 / 20
第二章 新たなる出会い

19 ちょっとだけダンジョン2

しおりを挟む

同窓会の日は札幌市内のホテルに一泊し、次の日、俺は飛行機で新千歳空港から羽田空港にいった。


新宿に移動して、喫茶店で人を待っていた。
朝早くでたのに、すでに午前11時だ。あいかわらず、新宿は人でごった返していた。
喫茶店は2階の窓際にいたので人の流れを見ていた。



「おっ来たな。」



ひとり呟いた。
スキル広範囲索敵で待ち人が近づいてくるのがわかった。敵じゃないけど。



喫茶店の入り口に現れたのは、口髭の生えた大柄で見た目クマを想像させる容姿をした男が姿を現わした。
以前勤めていた会社の元同僚である五十嵐隼人先輩だ。
仕事に夢中になりすぎてバツイチ、たしか36歳だったはず。



「おう、達也。」


「お久しぶりです。五十嵐先輩。」



俺は立ち上がり、先輩を迎えた。
歩きながら先輩はウェトレスさんにコーヒーを頼み、席に着いた。
大声とその容姿から、店の客全員の注目を浴びている。
俺と違って、相変わらず存在感が半端ない。


「ほう、ずいぶんたくましくなったな。今なら俺についてこれるんじゃないか。」



クマのような顔でにやりと笑う。怖いからやめてほしい。


「ハハハ、まさか。まだまだですよ。しかし、五十嵐先輩、また焼けてますね。相変わらずですか。」


「まあな、日本に帰ってきたのも3年ぶりだ。」




俺は大学を卒業し貿易会社に入社した。
俺が勤めていた部署は、海外に宝石を買い付けに行く仕事だ。華やかに聞こえるが、内情はまさしくブラックだった。
すでに販売ルートが確立されているところではなく、いまだ未開のそれこそ荒くれた人達との商談だった。
宝石はきれいだが、現場は産地の山の中、汚い怖いつらいのなかでの原石とお金のやりとりだ。
入社してすぐに五十嵐先輩につき、あっちこっち連れまわされた。
それこそ未開の奥地にいくのも珍しくなかった。五十嵐先輩は持ち前のタフさで問題ないが、俺は食い物飲み水で体調を崩すことはよくあった。そのたびに、軟弱だと言われたが、俺は弱くもなく強くもない、いたって平凡な男だ。
自然的な危険や人為的な危険も多々あった。思い出すだけでも震えてくる。
ほんと、最悪な職場環境だった。結果的にリタイヤした。
だが、そのおかげでダンジョン探索には役に立つ道具がいくつかあったが。




「あ、これ、北海道の土産です。熊が鮭咥えている、木彫りじゃないけど、俺が作った熊の彫り物です。」



俺は、新聞紙に包んだ縦横20cmくらいの大きさのものをテーブルにのせた。
あいかわらず、大雑把がさつな人だ。先輩は包みを破りながら言った。


「おまえ、クマの木彫りって嫌みか、と、なんだこれ、金でできてんのか。」



「ハハハ、まさか、ですよ。」



嘘・だ。本当はすべて純金製だ。
もちろん、俺の【スキル錬金】で作った。金30Kgはつかっている。売れば1億はするはずだ。


「お、おう、しかし、本物の金みたいだ。手触りといい、重さと言い、よくできてるな。お前が作ったのか。」


「北海道と言ったら、これでしょう。初めてにしては上出来だと思うんですが、でも師匠プロにいわせれば未熟品だそうですよ。師匠は木彫り専門ですが。俺の初クマ彫刻、記念に先輩に渡そうと持ってきたんです。」



これは、本当だ。うちの年寄りの元大工の一人に教えを受けた。
先輩クマが熊持ってる。俺はこれが見たくて、わざわざこれを作った。


先輩は、まじまじと、俺の土産品をみている。
先輩の事だから、純金製とすぐに気が付くだろう。




「金と言えば、神崎、かなり派手に売ってるらしいな。」



クマ顔がさらに凶悪に見える笑顔をむけられた。


「さすがに、情報通ですね。まだ、日本に戻ってそんな日数立っていないですよね。」


「おう、2日だ。明後日には、また、発つ。」


「今度はどこに行くんすか。」


「タンザニアだ。」


「タフっすね。」


「それより、どうなんだ。そんなに儲かるのか牧場は。3億も売っただろう。」


「ほんと、よく知ってますね。」


「そりゃー、短期間に個人が売るにしては高額だからな。たまたま知り合いが教えてくれたんだ。」



まあ目立つだろうな。
俺は勤めていたときの販売ルートを使って、例のダンジョン産の純金を売りはらっていた。
一応、正規の販売方法なので、税金も大量に持っていかれた。日本は税金、高すぎだ。




「それについては、先輩にぜひ関西の裏の貴金属みせを紹介してほしいんですが。」


「おいおい、まだ売るのか。しかも、裏とか穏やかじゃねえな。」


「急に大金が必要になったんですよ。買った(狩った)やつ全部売りたいんですが理由わけありのやつなんで。
先輩なら詳しいと思って。」


「教えてもいいが、関西は怖いぞ。その筋と海外も絡んでやがるからな。」


「平気っすよ。たぶん。」


「あんまり気は進まないが。」




俺の、レベルは268。なんせ、人間やめている。
刃物も銃も大砲も効かない。戦車でむかってこられても対抗できるだろう。
その筋の人がきても、対応できると自負してる。
あっ、数で襲ってきたらどうしよう。怖いから変装していこう。




先輩は俺をまじまじと見て値踏みする。




「今のお前なら平気かな。メールするわ。

いつでも戻ってこいよ。じゃあな。」

「先輩も気をつけて。」



先輩は慌ただしく動きだし立ち去った。本当に忙しい人だ。
頼りになり易しいから性格的には好ましい先輩なんだが、夢中になるとクマなのにイノシシのように突っ走るのが欠点だ。


俺は、先輩と別れた。






その日の午後には、飛行機に飛び乗り、大阪の関西空港に降り立った。
飛行機の手荷物検査をどうやって通過したか。もちろん、収納魔法で大量の金を収納してある。



それを、先輩に教えてもらった貴金属店ルートでかなり買いたたかれたが売り、30億ほどの現金を手に入れた。
もちろん、そのあと、ある筋の人たちに絡まれたが、俺の相手になるような人間はいない。
なんたって、俺、神人類だし。


怖いから、かつらとサングラスとマスクをしたが、返って怪しくなった。





俺には、気になっていることがあった。それは、ダンジョンについてだ。
一つは、母ライオンが言っていたダンジョン改変についてだ。大地震がおきて、そのあと俺はダンジョンを発見した。
また地震がおきて、母ライオンたちと出会った。地震とダンジョンは関係しているのではないか。
ダンジョン改変=地震なのではないか。



地震と言えば、阪神神戸の大震災だ。
俺の推測が正しければ、ダンジョンがあるのではないか、神戸に。


大阪から神戸に移動したときには、もう夜だった。
さて、来てみたのは良いがどこから手を付ければいいんだ。


被害が大きかったのは大都市の神戸だが、大地震の震源地は海だった。
震源地にダンジョンがあるわけではないが、海の中では手が出ない。
その夜は神戸で一泊し、熊本に行くことにした。
そう、熊本地震があったからだ。




思えば、北海道から九州まで遠くに来たもんだ。



ご当地キャラの『くまえもん』いるかなと、熊本空港について探したがいなかった。
ぬいぐるみやお土産グッズではいたるところにいた。せっかく来たんだから、実物見てみたかったな。






実は、ネットで陸上自衛隊 高野原分屯地と熊本地震の関係が載っていたのを見つけた。
阿蘇山あたりも何かと騒がしいので怪しいのだが、どうしたものか。



俺はなんとなくだが自衛隊の駐屯地にいった。
駐屯地の近くの喫茶店に入り、本当はいけないだろうが、【スキル広範囲索敵】を使った。
対象はレベル2の人間の索敵だ。


陸上自衛隊には、なかなかの人数がいるんだな。
いた、レベル2以上の人間の反応がある。
通常、普通なら人はレベルは1である。レベル2には、魔物を倒さないと上がらない。
やはり自衛隊の中には、魔物を倒したことがある隊員がいたのだ。


今度は、レベル持ちの人間の索敵をおこなった。120名近くいた。
ほとんとが、レベル2だが、40名だけレベル3、10名がレベル4、5名がレベル5だった。
レベル6以上はいなかった。
しかも、40名くらいが一か所に集中している。
レベル持ちの確認が目的だったが、もしかして駐屯地内にダンジョンがあるのかもしれない。




とにかくレベル2の人間がいるのがわかった。やはり、ダンジョンがあるにちがいない。




自衛隊もしくは政府はダンジョンがある事を隠している。
ダンジョンは、俺んち(北海道)熊本のように大地震の起きた場所の近くにあり、もしかして阪神、東北、新潟などにもあるかもしれない。
レベル6以上のものはここにはいない。
最高がレベル5なのか、もしくはここ以外の場所にいるかもしれないが、探索者は存在する。
隊員がレベル上げしている。



おっと、ダンジョンがあるかどうかは【広範囲索敵】で1階層魔物を探せばわかると思い使ってみた。



驚いた。

熊本ダンジョンはあり、しかもレベルが10から15もある、種族ゴボルト、コブリン、オークとでてきた。
1階層でこれほど強い魔物がでるなんて。俺んちでは1階層はレベル1か2のスライムだったのに。
しかも種族が人型モンスターだ。
うちでは見たことがない。これから、でてくるのか。




俺んちと熊本ダンジョンの違いはどこだ。

俺は一人で探索しているが、ここは自衛隊という集団で探索している。魔物が10点持っているとすると、俺は一人だから10点もらえる。だが、自衛隊員は最低でも5人で探索していると、10点÷5人で2点しかもらえないとするとどうだろう。レベルアップには時間がかかる。


それとも、ダンジョンによって出てくる魔物とレベルが違うのか。


ダンジョンに探索する人数に応じて魔物のレベルが決まるのか。


ああ、母ライオンの知識があれば、悔やまれる。
考えることがいろいろ増えた。



あれ、俺ってば防衛機密に触れていないか。テロ対策なんたら法で罪に問われるのかな。
うん、証拠がないから大丈夫。



結論、いくら考えても俺みたいな凡人男には、一生理解できないだろう。
俺は土産を買い、家路に向かった。




空港にはご当地キャラ・くまえもん、いなかった。
そういえば、『くまえもん』は移動の時どうしているんだろう。
俺みたいに収納魔法があれば簡単だが、結構大きいから荷物になるよな。
飛行機の座席を占有して座っている姿を想像してひとりニヤけてしまった・・・






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

ギフトで復讐![完結]

れぷ
ファンタジー
皇帝陛下の末子として産まれたリリー、しかしこの世はステータス至上主義だった為、最弱ステータスのリリーは母(元メイド)と共に王都を追い出された。母の実家の男爵家でも追い返された母はリリーと共に隣国へ逃げ延び冒険者ギルドの受付嬢として就職、隣国の民は皆優しく親切で母とリリーは安心して暮らしていた。しかし前世の記憶持ちで有るリリーは母と自分捨てた皇帝と帝国を恨んでいて「いつか復讐してやるんだからね!」と心に誓うのであった。 そんなリリーの復讐は【ギフト】の力で、思いの外早く叶いそうですよ。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...