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71:ようやく一つに※

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 今まで何度も互いに触れて性的に高め合っていた。時には手で、時には道具を使って、それどころか口で、互いの秘部を擦り合わせて……。
 だが颯斗はけっして雛子のショーツを脱がすことはなく、同時に自分も脱ぐことはしなかった。

 だけど今夜は違う。颯斗の手によって雛子は裸になり、そして彼もまた全て脱いだ。

「良いんだな……」
「……うん」

 コクリと頷いて返す。だが彼がもぞと何かを手に取るのを見て、雛子は「待って!」と声を荒げた。

 
 突然の雛子の制止の言葉に、さすがにここで止められるとは思っていなかったのか颯斗の体がビシと音がしそうなほど固まった。

「……な、なんだよ。やっぱり怖いっていうなら、今ならまだギリギリで止められるけど。……かなりギリギリだからな」
「違うの……。ただ、今夜はこれを使って欲しいの」

 もそもそと動いてヘッドボードに置かれた箱を取り、中に隠しておいたものを彼に差しだす。
 颯斗が入浴している間に持ち込んで隠しておいたのだ。彼が受け取ると共に「これって」と小さく呟いた。

「この間ホテルで買ったゴムか?」

 一輪の花と注がれる星が描かれた淡いピンク色の箱。彼の記憶の通り、以前にラブホテルで買ったものだ。
『雛子の会社の道具は気持ちよく幸せになる手伝いをする』そう教えるために、彼はホテルで売っている雛子の会社のアダルトグッズを片っ端から買っていた。その中の一つだ。だがその時これだけは使わず、雛子は「これはまだ駄目」と告げてヘッドボードに置いておいた。

 これは特別なのだ。
 といっても、甘い香りもしないし味がするわけでもない。もちろん光りもしない。
 だけど……。

「これね、私が最初にデザインしたの」
「最初に?」
「そう。会社に入ってしばらくして独り立ちって言うのかな。私が任されて、私が一人でこなした、初めての仕事なの」

 箱も、中の包装も、すべて雛子がデザインして仕上げたのだ。といってももちろん先輩や上司から助言を貰ったし、他の商品や過去あったデザイン、それに売れ筋の商品も意識した。その過程は楽しさや喜びだけではなく、悩みもしたし上手くいかないジレンマもあった。
 だけどそれ以上に自分に任せて貰えた事が嬉しく、やりがいがあり、そして出来上がった商品を手にした時は感動した。箱にも中のデザインにも、ちゃんと自分の姿が見えたのだ。

「だから、初めてはこれを使いたいってずっと思ってたの……。だめ?」
「その話を聞いて断れる奴がいるかよ」
「あと出来れば着けるところも見たい」
「それは駄目」

 きっぱりと言い切り、颯斗が何かを顔に被せてくる。
 柔らかな肌触り。ベビードールにセットになっているガウンだ。

(これも透けてるんだけど……)

 そんな事を考えながら、もぞもぞと動く颯斗を薄い布越しに見つめる。
 体勢のせいと自分の足が邪魔になって見えないのが残念だが、箱を開けた彼の「中のデザインも良いな」という言葉に良しとした。
 個々のコンドームの梱包も箱に合わせており、薄いピンク色に中央に置かれた絵、あまりぎらついた印象を与えないようにとデザインした。女性が持ちやすいように、女性から差し出しやすいように……、そんな事を意識したのを今でも覚えている。

 いつかはこれで自分も……、と考えていたが、今まさに叶おうとしているとなると不思議な気持ちだ。
 願っていた事が叶う期待、それと緊張、痛いと聞く初体験への不安。それらが綯い交ぜになって鼓動を早める。落ち着かせようと胸元でぎゅうと手を握れば、準備を終えたのか颯斗がガウンを取ろうとこちらに手を伸ばし……、

 透けた布越しにバチリと目が合った。

「……覗いてたのか」
「人聞きの悪いこと言わないでよ、これ被せてきたのは颯斗でしょ。……それに、肝心の着けてるところは見えなかったわ」
「そりゃ残念だったな」

 颯斗が軽く笑う。それにつられて雛子も笑みを零した。
 緊張はまだ残っているが、それでも普段通りの会話が少しだけ気を紛らわせてくれた。
 颯斗の手がそっと足を撫でてくる。足を開かせようとしているのだろう。途端に恥ずかしさが舞い戻ってくるが、それをなんとか堪えて彼の手の動きに従った。
 ゆっくりと足を開く。……何も隠してない、何も覆われていない、露わなそこを晒す。

 颯斗がゴクリと生唾を飲んだのが分かった。彼の瞳にぎらつくような熱が宿る。
 見られていると考えるだけで言いようのないもどかしさが湧き、足を閉じたくなるが、それは手で押さえられてしまった。

「痛かったら言えよ」
「……うん」

 小さな声で返事をすれば、颯斗がぐいと身を寄せてきた。
 秘部に何かが当たり、それがゆっくりと押し入ってくる
 指とは比べものにならない、今まで感じたことのない熱量。圧迫感。それが中へ中へと進むたびに痛みを伴いだす。

「うっ、んぅう、いっ、いた、い……」
「きついな……。痛いなら一度抜くか?」
「……うぅん、平気」

 痛みに耐えながらもふるふると首を横に振る。
 その小さな動きさえも鈍い痛みを呼んだ。

「最初は痛いって聞いてるから、平気、我慢できる……。だから最後までしよう……」
「無理するなよ。あとで泣きごと言われてもどうしようもないからな」
「……無理はしないけど泣きごとは言うかも」
「分かった、泣きごとは全部聞く」

 雛子の情けない訴えに颯斗が苦笑を浮かべ、ゆっくりと己の熱を雛子の中へと沈めようと動き出した。
 硬い熱が再び奥へと目指して徐々に押し入ってくる。その痛みに雛子は小さく呻いてシーツを掴んだ。
 痛い。体の内側から裂けるような今まで味わったことのない痛み。
 だけど『繋がりたい』という思いが痛みを上回る。

 そうしてじんわりと汗ばむ時間を経て、颯斗が深く息を吐きながら「入ったぞ」と呟くように告げてきた。
 全部入ったという事なのだろう。まだ残る痛みに小さく呻いて荒い呼吸で返事をすれば、彼の手が伸びてきて頬に触れてきたた。人差し指でそっと目尻を軽く撫でる。
 彼の手に撫でられながら、雛子はそっと自分の下腹部へと手を伸ばした。
 いつもならば、そこには雄々しく反り立つ熱があるはずだ。手を添えて秘部と擦る事で互いを高めていた。

 だけど今日は……。

「なかにあるのが分かる、……まだ痛いけど、でも凄く嬉しい」

 吐息交じりに呟けば、颯斗がむぐと言葉を詰まらせた。
 俯いて盛大に息を吐いたかと思えば、今度は顔を上げて更には前髪を掻き上げる。じっとりとこちらを見つめてくる瞳は欲情的でいて、もどかしそうで、どういうわけか呆れの色もある。

「お前なぁ、こっちは今すぐに動きたいのを我慢してるんだぞ。そうやって煽るなよ」
「煽ってなんかないわよ。……でも、我慢しなくて良いよ」

 動いて、と告げる。
 颯斗からの返事は「そういうところだ」と手厳しいものだったが、それでも気遣うように緩やかに動き出した。

「んっ、くぅ……うぅ……」

 中に納まっていた熱がずるりと引き抜かれ、かと思えば再び押し入ってくる。
 彼の指にさえ触れられた事のない奥を擦られると、今までの経験したことのない感覚が下腹部に湧く。
 まだ痛みはある。圧迫感と異物感もある。だけどそれらが僅かにだが快感に変わっていくのが分かる。もどかしく、体の内側から滲むような痺れに似た快感。
 彼の動きに合わせていた呼吸が次第に荒くなり、息を吐く際に甘い声が混ざる。

「あっ、んぅ……ふぁ、んぅう……」
「もう少し早く動いても平気か?」
「平気……、あっんぅう!」

 破瓜の痛みが徐々に快感に変わりつつある中で、はっきりとした強い快感が走り抜けて思わず声をあげた。
 颯斗の手が秘部に触れ、親指で花芽を擦り上げたのだ。更に二度、三度、と指の腹で刺激してくる。そのたびに快感が腹部から背へと駆け抜け、無意識に腰を揺らしてしまう。

「それ、んぅう、やっ、あん……、ふぁ」
「こうした方が痛みも紛れるだろ。……と思ったけど、んっ……、締め付けがやばいな」

 颯斗の呼吸も荒れており、声にも余裕の無さがあらわれている。時に堪えるように息を詰まらせ、抜き差しする動きも次第に強さを増していく。
 激しく動き硬い熱で雛子の中を搔き乱し、それでいて花芽を擦って快感を与えようと気遣う。部屋には互いの荒い呼吸と名前を呼ぶ声、そして卑猥な水音が続き、それら全てが今の雛子には快感に変わっていた。既に破瓜の痛みは消え、敏感になった体は貪欲に快感だけを拾い上げていく。
 その快感が大きな波紋のように体中を巡っていくのを感じ、雛子は短い呼吸を繰り返しながら必死に颯斗の名をを呼んだ。無意識に求めるように彼へと手を伸ばす。

「颯斗っ、私もう……あ、あっ、もう……!」
「……俺も、もう」

 互いに限界を告げ合えば、颯斗がぐいと覆い被さるように身を寄せてきた。
 その動きにより、中に埋まっていた硬い熱がより深く押し込められる。腹の内を強く押されると雛子の中で渦巻いていた快感が嵩を増し、それが弾けるやぶわと溢れるような衝撃が駆け抜けていった。あまりに強すぎる快感の衝撃に、颯斗の体にしがみつく。

「ふぁ、んぁあ!」

 嬌声を上げて体を震わせれば、ほぼ同時に「くっ……!」と呻くような颯斗の声が耳に届き、抱きついていた彼の体も震えた。
 埋められた熱がドクンと脈打つのが分かる。体の内に響くその感覚すらも気持ち良い。


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