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19:男のひとのための道具※
しおりを挟むオナホールとは、男性が自慰に使う道具である。
弾力性のある筒に男性器を入れ、上下に動かして摩擦による快感を得る。道具自体の形状や大きさは様々で、中には機械と連動するものや、筒ではなく女性の下半身を模した大掛かりな物もある。
先日使ったローターはどの製品であっても概ねサイズや形状が似通っているのに対して、こちらは同じ分類であっても作りや見た目は多岐に渡る。
今回雛子が持ってきたのはその中でも至ってシンプルな品である。
淡いピンク色の柔らかな筒。挿入口も単なる切れ込み。
試作品置き場には形状こそシンプルだが挿入口だけは妙に生々しく女性器を再現したものもあったのだが、さすがにそれを持ってくる気にはならなかった。――正直なところ、たとえ系列会社の製品といえども、人体の一部だけを切り取った道具はホラーめいた怖さがあって触りたくなかった――
「これだけシンプルだと只の筒にしか見えないわね。そういえば、上の階の女の子がパソコン使う時に手首に置いたり、手が疲れた時に握ってるって言ってわ」
「オナホールがスクイーズ扱いって、どういう会社だよ……。というか、それ使うのか? 俺に?」
「そうよ。使って良いでしょ」
「……むしろなんで使いたいんだよ。どうして持ってきたんだ」
今回、颯斗から道具を持ってこいという指示は無かった。
それなのに何故と言いたいのだろう。これに対して雛子は言葉を詰まらせ、しばし考えた後「笑わない?」と尋ねた。
「笑うって、何にだよ」
「……これを持ってきた理由。笑わないなら話してあげる」
「あぁ、分かった。笑わない。だから話せよ。……あとオナホール握り続けるのやめろ」
颯斗に促され、雛子はにぎにぎしていたオナホールをそっと傍らに置いた。――握り心地が癖になりそうだ――
そうして「あのね……」と話し出した。
なぜわざわざ上の階の試作品置き場からオナホールを持ってきたのか。
それは颯斗の体力を削るためである。
ならばなぜ体力を削る必要があるのかと言えば……。
「一日中すると思ってた!? それで対策のためにわざわざこんなもん……! あ、駄目だ笑う。これは笑うなって方が無理だろ」
「笑わないって約束したでしょ!」
「いや無理だって、これは誰だって笑う話だ。でもそうか、一日中したかったのか」
「したいわけじゃない。むしろしたくないからこその対策アイテムよ」
「そうだな。くっ……、一日中するんじゃ体がもたないもんな。う、くっ……」
「……もう寝る。おやすみ。さっさとソファに戻って、寝室には二度と入って来ないで」
分かりやすく笑いを堪える颯斗に痺れを切らして布団に潜ろうとすれば、彼が腕を掴んで引き留めてきた。
「悪かった」と笑ったことを詫びてくるが、その声もどことなく震えている。
「好きに使っていいから拗ねるなよ。なぁ?」
「……使ってみて良いの?」
「長蛇の列に並ばせたんだ、それぐらいは付き合ってやるよ。俺が使ってるところを見たいって言うならそれも叶えてやるけど」
どうする? と颯斗が尋ねてくる。
こちらの欲を誘うような蠱惑的な笑み。切れ長の瞳が鋭さを増して、じっと雛子を見つめてくる。
自慰を見せる等ととんでもない事を言っているわりには、まるで今まさに雛子に襲い掛かりかねない熱い瞳だ。
「ひとがしてるところを見る趣味なんて無いわ」
つんと素っ気ない態度を取って、雛子は座り直すと共に手元に放っておいた道具を手に取った。
これは自分が使うという意思表示だ。察して颯斗が笑みを強める。「楽しみだ」という言葉には余裕が漂っている。
「その余裕の笑みもいつまでもつかしら。頼りにしてるわよ、相棒! 一緒に颯斗に目にもの見せてやりましょう!」
「それに話しかけるのは止めろ。で、どうやるんだ? 見た感じだと入れにくそうだけど」
「まず準備が必要なんだって。最初に一度洗った方がいいらしいけど、安心して、颯斗がお風呂に入ってる間にちゃんと洗っておいたから。抜かりは無いわ」
「……出来る女だな、惚れ直しそうだ」
「あとはローションを中に垂らして……」
付属されているローションの蓋を開け、筒の中に垂らして入れる。
ローションとは男女の性交時や自慰の際に使用する液体だ。――化粧用品でもローションと呼ばれるものはあるのだが、この場合そちらのローションではないのは言わずもがな――。
粘度が高く、滑りが良い。現に容器から流し入れればとろりと垂れて長い糸を引いた。
「全部入れちゃうと溢れちゃうかな。これぐらいで良いかしら」
当然だが加減など分かるわけがない。
それでも勘を頼りにローションを流し入れ、試しにと挿入口の穴に人差し指を押し入れてみた。
にゅぶっ……と音がする。
「結構きついのね。あ、でも広がる」
人差し指がローションに絡められ、オナホールのゴムにきつく締め付けられる。
それでも感覚を楽しむように人差し指を出し入れしてみる。締め付けてくるが、ローションの滑りがあるため出し入れが出来ないわけではない。
そのうえ中は締め付けの割には柔らかく、指を曲げたり動かしたりもできる。裂けそうだった挿入口もしっかりと雛子の人差し指を咥えており、それどころか中指と合わせて二本入れても丸々飲み込んだ。
指を出し入れするたびに、ぐぷっ、ぬぷっ……と音がする。
「そういえば、これって颯斗の方でも準備しておかないと……」
入れられない、と言いかけて雛子は言葉を止めた。
オナホールを使う際、挿入するために勃たせる必要が有る。
だから準備をと話しかけたのだが、颯斗は露骨にそっぽを向いていた。……胡坐をかいて股座に不自然に片手を置きながら。
押さえるというほど強くはないがさりとて不自然な片手の位置。まるで隠すかのようではないか。
雛子がじっと見つめても一向にこちらを向かず、ベッド横に置かれた間接照明をじっと見つめている。
準備をしてと伝えようとしたが、既に準備は出来ていたようだ。
つまり、ズボンの下では既に彼の熱が首をあげている。……勃った、という事だ。
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