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シーズン2
episode4「Pain」
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「何あなた?」
女は今にも飛び降りるぞと言わんばかりに柵を飛び越えており後少しでも動けば落ちそうなぐらいにいた。
「あんた、ここで何やってんだ?まさか……」
「そうよ……そのまさかよ」
的は的中したようだ。さて次はどうやって的中した矢を回収するか。このままだと回収に行けないぞ。
「そうなら言っとくけど、辞めた方がいい」
「何よ!!あなたには関係ないでしょう!?」
よくない方向に進まないように慎重にいかないと。
「誰も喜ばないぞ」
「いいや、喜ぶわよあいつらだったら私が死んでもどうせ鼻で笑ってるのよ!!」
あいつら、話的にはいじめを受けている女が自殺をしようとしているシーンって感じか、そしてそれを助ける主人公。飛んだ大役に僕は選ばれたものだ。
「僕は喜ばないぞ」
「何言ってるのよ!当たり前でしょ!!今初めて喋ったんだから……」
何だバレてたのか、なら話は早い。
「違う、ここ僕のお気に入りの場所なんだ君が死んだら穢れるだろう」
「なんだそういうこと……やっぱり、私初めて喋った人にすら嫌われるんだ……」
彼女は本気みたいだな。
「それも違う」
「え?」
ここで言わなきゃいつ言う。僕は今度こそ本心を言った。至って平然に。
「僕は君がいるこの場所が好きなんだ。だから君が死んだら穢れるだろ……そう言うことだ」
「こんな時に何言ってるのよ……そんな言葉で私が飛び降りないとでも思った!?」
「ああ、思うさ、君は飛び降りないよ……だって、」
そう言い終えるよりも前になぜか彼女は手すりから手を離してしまい今にも落ちる様子だった。
「あっ。」
「何やってんだ!!」
俺は全速力で彼女の元へ向かい手を掴んだ。
「いやあああ!!」
叫ぶ女、それを支える僕。何だかこの光景どこかで見た気がする……。
「待ってろ今引き上げる」
予想よりも彼女は軽くあっという間に引き上がった。柵から引き上げる時に彼女は足を引っ掛けてしまい僕の方に倒れ込んできた。
「ああ、無事でよかったよ……」
「…………………」
僕を下敷きに上に覆いかぶさるように彼女は乗っていた。
「ありがとう……」
ただそれだけいい彼女は僕の首に腕を巻いてきて抱きついてきた。
「ごめんなさい、怖かったの……」
「ああ、わかった、わかったからちょっと退いてくれないか?」
少しこの状況は男としてかなり理性を保つのに難しい状況である。
「いや、まだ退きたくない。少しだけこのままがいい」
「ああそうか……」
それから彼女は僕に抱きついたまま泣いた。ずっと泣いた後にようやく僕を解放してくれた。
「あ、そういえばまだ名前聞いてなかったな……」
「確かに、私の名前はね…………………」
え?誰だこの女は?俺の能力でこんなのは初めてだ。
顔が見えない。落書きされたように鉛筆で塗りつぶされたように、顔と名前だけが見えない。
こいつは誰なんだ!?こいつは……。
・
・
・
・
・
・
「先輩……大丈夫ですか!?先輩!?」
声が聞こえる。
「あ、あああ……」
俺は混乱しているのか声にならないようなうめき声を出している。まずいストーリーに感情移入しすぎた。
「先輩!!」
しかし、ようやく樒花の声が聞こえて現実に戻ってきたことに気づく。
「え?俺は一体……」
「大丈夫ですか!?」
「ああ、またか……また持っていかれそうになったぜ……」
しかし何だ。あの違和感は……。
「何か分かりましたか?」
俺が無事なのを知ったすぐに彼女は詰め寄ってきた。
「いいや、事件には関係なさそうだ。普通に和希の記憶の一部を読み取っただけだよ」
すると彼女は俺の机に置いてた紙を手に取る。きっと俺が見過ごしていることがないか確認しているんだ。
「読んでもいいけど、途中で途切れたからあんまり有力な情報はないぞ」
「それでもいいんです」
俺は真剣に読む彼女には触れずに黙ってみておくことにした。
「どうだ?なんか見つかったか?」
「うーん、あんまりですね。というか和希にこんな思い出があるなんて、ちょっと意外です」
確かに和希は俺たちにこんな話はしたことがないため意外ではある。
「だな、まあ、ああ見えても結構いいやつだからさ。こんなの人に話せる武勇伝にもならないって思ったんだろ」
「そうですかね、あと気になるのは……彼女が誰だったのか」
「うーん、そこまで重要そうではないと思うけど、俺の能力で他人の顔が見えないなんて初めてだぜ……よほど和希はこのことを他人に話したくなかったんだろうな」
「記憶が他人に覗かれてるのを拒否しているんですか……まるで記憶が生きてるみたいですね」
なるほど、記憶が生きてるか。確かに人間は秘密を人に知られるのを拒絶する。それと同じってことか。
「じゃあ続き見てみませんか?」
そう提案してくる。
「関係あると思うか?」
「だって和希がみられるのを否定するようなことって何か気になります」
「なんだよ、やっぱり好奇心からかよ」
まあ、俺もこの能力とは数十年の付き合いだ。こんな反応は初めてなので気になる気持ちもないと言ったら嘘になる。そしてさっきから樒花の視線が痛い。
「ああ、わかったよ。俺も気になるし見てみるか」
「よし!これで事件に関連する情報が手に入れば一石二鳥ですしね!!」
すごく都合がいいことと結びつけているが、やってやるか。
俺はさっきの風景を思い出しながらまた和希の思い出を探り始めた。
シーズン2 エピソード4「痛み」
女は今にも飛び降りるぞと言わんばかりに柵を飛び越えており後少しでも動けば落ちそうなぐらいにいた。
「あんた、ここで何やってんだ?まさか……」
「そうよ……そのまさかよ」
的は的中したようだ。さて次はどうやって的中した矢を回収するか。このままだと回収に行けないぞ。
「そうなら言っとくけど、辞めた方がいい」
「何よ!!あなたには関係ないでしょう!?」
よくない方向に進まないように慎重にいかないと。
「誰も喜ばないぞ」
「いいや、喜ぶわよあいつらだったら私が死んでもどうせ鼻で笑ってるのよ!!」
あいつら、話的にはいじめを受けている女が自殺をしようとしているシーンって感じか、そしてそれを助ける主人公。飛んだ大役に僕は選ばれたものだ。
「僕は喜ばないぞ」
「何言ってるのよ!当たり前でしょ!!今初めて喋ったんだから……」
何だバレてたのか、なら話は早い。
「違う、ここ僕のお気に入りの場所なんだ君が死んだら穢れるだろう」
「なんだそういうこと……やっぱり、私初めて喋った人にすら嫌われるんだ……」
彼女は本気みたいだな。
「それも違う」
「え?」
ここで言わなきゃいつ言う。僕は今度こそ本心を言った。至って平然に。
「僕は君がいるこの場所が好きなんだ。だから君が死んだら穢れるだろ……そう言うことだ」
「こんな時に何言ってるのよ……そんな言葉で私が飛び降りないとでも思った!?」
「ああ、思うさ、君は飛び降りないよ……だって、」
そう言い終えるよりも前になぜか彼女は手すりから手を離してしまい今にも落ちる様子だった。
「あっ。」
「何やってんだ!!」
俺は全速力で彼女の元へ向かい手を掴んだ。
「いやあああ!!」
叫ぶ女、それを支える僕。何だかこの光景どこかで見た気がする……。
「待ってろ今引き上げる」
予想よりも彼女は軽くあっという間に引き上がった。柵から引き上げる時に彼女は足を引っ掛けてしまい僕の方に倒れ込んできた。
「ああ、無事でよかったよ……」
「…………………」
僕を下敷きに上に覆いかぶさるように彼女は乗っていた。
「ありがとう……」
ただそれだけいい彼女は僕の首に腕を巻いてきて抱きついてきた。
「ごめんなさい、怖かったの……」
「ああ、わかった、わかったからちょっと退いてくれないか?」
少しこの状況は男としてかなり理性を保つのに難しい状況である。
「いや、まだ退きたくない。少しだけこのままがいい」
「ああそうか……」
それから彼女は僕に抱きついたまま泣いた。ずっと泣いた後にようやく僕を解放してくれた。
「あ、そういえばまだ名前聞いてなかったな……」
「確かに、私の名前はね…………………」
え?誰だこの女は?俺の能力でこんなのは初めてだ。
顔が見えない。落書きされたように鉛筆で塗りつぶされたように、顔と名前だけが見えない。
こいつは誰なんだ!?こいつは……。
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「先輩……大丈夫ですか!?先輩!?」
声が聞こえる。
「あ、あああ……」
俺は混乱しているのか声にならないようなうめき声を出している。まずいストーリーに感情移入しすぎた。
「先輩!!」
しかし、ようやく樒花の声が聞こえて現実に戻ってきたことに気づく。
「え?俺は一体……」
「大丈夫ですか!?」
「ああ、またか……また持っていかれそうになったぜ……」
しかし何だ。あの違和感は……。
「何か分かりましたか?」
俺が無事なのを知ったすぐに彼女は詰め寄ってきた。
「いいや、事件には関係なさそうだ。普通に和希の記憶の一部を読み取っただけだよ」
すると彼女は俺の机に置いてた紙を手に取る。きっと俺が見過ごしていることがないか確認しているんだ。
「読んでもいいけど、途中で途切れたからあんまり有力な情報はないぞ」
「それでもいいんです」
俺は真剣に読む彼女には触れずに黙ってみておくことにした。
「どうだ?なんか見つかったか?」
「うーん、あんまりですね。というか和希にこんな思い出があるなんて、ちょっと意外です」
確かに和希は俺たちにこんな話はしたことがないため意外ではある。
「だな、まあ、ああ見えても結構いいやつだからさ。こんなの人に話せる武勇伝にもならないって思ったんだろ」
「そうですかね、あと気になるのは……彼女が誰だったのか」
「うーん、そこまで重要そうではないと思うけど、俺の能力で他人の顔が見えないなんて初めてだぜ……よほど和希はこのことを他人に話したくなかったんだろうな」
「記憶が他人に覗かれてるのを拒否しているんですか……まるで記憶が生きてるみたいですね」
なるほど、記憶が生きてるか。確かに人間は秘密を人に知られるのを拒絶する。それと同じってことか。
「じゃあ続き見てみませんか?」
そう提案してくる。
「関係あると思うか?」
「だって和希がみられるのを否定するようなことって何か気になります」
「なんだよ、やっぱり好奇心からかよ」
まあ、俺もこの能力とは数十年の付き合いだ。こんな反応は初めてなので気になる気持ちもないと言ったら嘘になる。そしてさっきから樒花の視線が痛い。
「ああ、わかったよ。俺も気になるし見てみるか」
「よし!これで事件に関連する情報が手に入れば一石二鳥ですしね!!」
すごく都合がいいことと結びつけているが、やってやるか。
俺はさっきの風景を思い出しながらまた和希の思い出を探り始めた。
シーズン2 エピソード4「痛み」
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