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第47話
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急ブレーキを踏んで覆面は気が抜けたように停止していた。京哉は伊達眼鏡を外すと目を手の甲で拭ってから再び覆面を発車させた。
そこから五分とかからず保養所に辿り着いて霧島だけ助手席から降りるのを見守る。自分は降りず窓を開けて霧島に声を掛けた。
「黒塗りは本部にあるんですよね。乗り替えたら借りて行ってもいいですか?」
「何処に行く気だ?」
「官舎に戻るんです。こういう時くらい気を利かせて下さいよ」
「独りで戦おうというのか?」
「大袈裟ですよ、僕は自分の巣に逃げ込むだけです。それとあと三日有休を下さい」
軽い調子で言い、じっと見つめる霧島に京哉は笑って見せる。だがその笑みは幾らもせずに歪んでしまい目を逸らすしかなくなった。前を向いたまま言葉だけ投げる。
「ちゃんと腕の手当てをして下さい。熱もお医者さんに診て貰って下さいね」
「本当にお前は官舎に帰るんだろうな?」
「ええ。そんな心配までしなくてもいいですよ」
「何かあったら必ず連絡をしてくれ。必ずだぞ、分かったな?」
頷くと車寄せを出てロータリーを巡り坂道を下って海岸通りに乗り出した。高速を使い本部に着くと黒塗りに乗り替えて真城市方面へ。
官舎近くのコインパーキングに黒塗りを入れ、激しい雨の中を歩く。官舎の部屋に戻ると衣服を引き剥がした。
裂かれたドレスシャツはゴミ袋に突っ込む。ショルダーホルスタは空っぽ、青山の指紋がついたので証拠品として押収された。何はともあれシャワーだ。
三度、四度と髪を洗い、ボディソープもボトル半分以上を使って肌が痛くなるくらい擦り上げたが気持ち悪さが取れない。そこで腕時計が目に入って驚愕した。
「うわ、もう六時前か。あいつらに何時間……いやいや考えるな」
諦めて泡を流すとバスルームから出てバスタオルで擦り剥きそうなくらい拭く。
明るい部屋で改めて自分の躰を見下ろすと幾度も殴られ蹴られて見事にアザだらけだった。それでもクスリの影響か痛みは殆ど感じない。
幾ら繰り返しシャブを与えられたからといっても一晩で依存症になりはしない。あの快楽が忘れられずに堕ちて戻れなくなる者もいるのだろうが、京哉は行為そのものに溺れるタイプではなかった。
改めてこの自分が溺れるのは絶対的信頼を置く霧島が相手だからだと思う。
クローゼットの引き出しから下着と綿のシャツにジーンズを出して身に着けると、少しはマシな気分になった。意識せず咥えている煙草もそれなりに旨い。
だがこれもクスリの影響なのか、感覚が鋭敏で眠気の片鱗もなく食欲も湧かない。
仕方ないので冷蔵庫からウィスキーを持ち出してマグカップに注いだ。煙草を肴にちびちび飲み始める。クスリが抜けるまで飲んで寝てしまおうという作戦だ。
しかし半分くらい残っていたウィスキーを空にしても眠気はやってこなかった。
アルコールに弱いのは自覚しているので期待していたが甘かったようだ。
そこで近くのコンビニに出張って朝からウィスキー一本と缶ビールに缶チューハイを買い込む。固形物は煙草だけでカネを払い部屋に戻った。
再び飲み始めると今度はビール二缶で酔いの兆しが見えだす。すると気分がハイになるどころかバッドトリップでもしたのか嫌な記憶ばかりが蘇り始めた。
亡くなった母を見た時のことや初めて人をスナイプした時のことに、昨夜の己の痴態までがフラッシュバックの如く再現され、ビールが舌の上で苦い白濁に変わって、慌ててトイレに走って吐き戻すハメになる。
それでも携帯を弄りながら煙草を吸い、酒を飲んでは吐いた。繰り返す間も感覚は鋭敏なままで、音を消したTVの映像すら五月蠅く感じて点けていられない。
隣室は空き部屋なのに、その更に隣の話し声さえ耳について、怒鳴り出したくなっては自分を宥めるために飲む。
そんな風に一日半を過ごして夜と共にそれはやってきた。対象の分からない不安感と、これも対象不明な何かに対して切迫しているような落ち着かない気分である。
気分だけでなく実際じっとしていられず、部屋の中を歩き回りながら呟いた。
「うーん、クスリが効きすぎちゃってたのかなあ。んで切れかけてると」
正体不明の不安感でびっしょりと汗をかいていた。息を荒くしながらも歩き回るのをやめられない。汗が男たちから汚された記憶を蘇らせ、気持ち悪さに冷たいシャワーを何度も浴びた。
やがて食事もせず吐き続けたからか胃がキリキリ痛みだし、そのうち殴られ蹴られた痕や裂かれた粘膜まで痛み始めて幾らもせずに動けなくなる。
フローリングに這ったままベッドから毛布を引きずり下ろして躰に巻きつけた。芋虫のように床に転がり全身の痛みに耐える。
痛みを紛らわそうとアルコールにまた手を出したが、胃の痛みが急激に悪化してベッドに寝直すことすらできない。
その間も不安感がのしかかり、まるで心臓を握り潰されてでもいるようだった。
「ううう……勘弁してくれって」
呻いた声も声にならない。
胃袋が指先ほどの石ころみたいに縮んでしまった気がする。全身の汗が冷たい。そこでまた毛布に包まれ運び出される母親の姿がフラッシュバック。
あとは自分が殺してきた人間たちの血に塗れた顔。更に自分から立ち上る男たちの放った臭い。
殺す者は殺される。
もはや贖罪も叶わなくなった自分はこうして罰を受けているのだ。なるべく冷静に考えればこれで死ぬとは思えないが、こんな風に自分から死にたくなるような罰を受け続ける。罪も償わない者の宿命だろう、殺されないなら自身で自身を裁くのは。
そんな考えと痛みばかりが思考を占め続けて思わず呟く。
「つうっ……霧島警視……忍さん――」
遠くで何か聞こえた。それが繰り返されてやっとドアチャイムだと分かったが、とても玄関まで歩いて行けない。チャイムがノックに変わる。ロックが解かれた。
「京哉……京哉!」
「忍、さん……?」
何よりも安堵できる馴染んだ気配が駆け込んでくる。力強い右腕に抱き支えられた京哉はその温かさを感じた途端に意識を暗転させた。
◇◇◇◇
先日ここに呼んだ医師に直接電話して霧島は往診を頼んだ。
約十五分で迎えた医師は京哉を見るなり胃けいれんという診断を下して注射を一本射つ。胃薬を置いたロウテーブルの酒瓶と空き缶、それに吸い殻が山盛りになった灰皿を眺め、溜息をついただけで説教はせず呆れた風に頭を振りながら帰って行った。
取り敢えず胃けいれんは治まったらしく京哉は鈍く目を開けた。そこで霧島は持参してきた精神安定用の抗不安薬を水と一緒に自分で口に含み、京哉に口移しで流し込む。上手く飲み込んだようだが、その刺激で京哉ははっきりと目を覚ました。
「んっ……忍さん……つうっ!」
「どうした、何処が痛いんだ?」
「あ、いえ、何でも……何でもないですから」
「何でもない訳があるか、見せろ!」
必死で京哉はガードしたが、霧島が左手まで使って衣服を脱がせようとするに及んで、仕方なく自分で脱ぐハメになる。
約二日が経って打撲痕は派手に変色して霧島を絶句させた。京哉本人は『ただ快楽に狂っていた』と言ったが、全身のアザは抗い戦った証拠だった。
霧島は右手指でアザをひとつひとつ辿っては撫でる。
一方で大人しく撫でられる京哉の不安感は綺麗に消えて気分も悪くなかった。
医師の治療も効いただろうし治り時だったのかも知れない。霧島に飲ませて貰った薬も効いた筈だ。だが何よりも霧島が傍にいてくれる安心感が大きな効用をもたらしているのは明らかだった。
「すみません。『気を利かせろ』なんて格好つけておいて情けないです」
「お前がそれを情けないと言うのなら、私はどうすればいいんだ?」
「忍さんがどうかしたんですか?」
「京哉。私はお前が欲しくて我慢できずにここにきたんだぞ」
「えっ、あ……はあ、そうですか」
間の抜けた返事をして京哉は霧島をまじまじと見つめる。愛しい男は灰色の目に溢れ出しそうな情欲を湛えて見返していた。
だが京哉は霧島の腕の怪我が悪化するのが怖くて即座に頷いてやれない。それでも欲しくて堪らずやってきたという男の切羽詰まった表情と切ないような息づかいに触れたが最後、京哉は折れるしかないのだ。
「我慢……できませんか?」
「ああ、もう無理だ。お前がだめでなければ頼む」
そこから五分とかからず保養所に辿り着いて霧島だけ助手席から降りるのを見守る。自分は降りず窓を開けて霧島に声を掛けた。
「黒塗りは本部にあるんですよね。乗り替えたら借りて行ってもいいですか?」
「何処に行く気だ?」
「官舎に戻るんです。こういう時くらい気を利かせて下さいよ」
「独りで戦おうというのか?」
「大袈裟ですよ、僕は自分の巣に逃げ込むだけです。それとあと三日有休を下さい」
軽い調子で言い、じっと見つめる霧島に京哉は笑って見せる。だがその笑みは幾らもせずに歪んでしまい目を逸らすしかなくなった。前を向いたまま言葉だけ投げる。
「ちゃんと腕の手当てをして下さい。熱もお医者さんに診て貰って下さいね」
「本当にお前は官舎に帰るんだろうな?」
「ええ。そんな心配までしなくてもいいですよ」
「何かあったら必ず連絡をしてくれ。必ずだぞ、分かったな?」
頷くと車寄せを出てロータリーを巡り坂道を下って海岸通りに乗り出した。高速を使い本部に着くと黒塗りに乗り替えて真城市方面へ。
官舎近くのコインパーキングに黒塗りを入れ、激しい雨の中を歩く。官舎の部屋に戻ると衣服を引き剥がした。
裂かれたドレスシャツはゴミ袋に突っ込む。ショルダーホルスタは空っぽ、青山の指紋がついたので証拠品として押収された。何はともあれシャワーだ。
三度、四度と髪を洗い、ボディソープもボトル半分以上を使って肌が痛くなるくらい擦り上げたが気持ち悪さが取れない。そこで腕時計が目に入って驚愕した。
「うわ、もう六時前か。あいつらに何時間……いやいや考えるな」
諦めて泡を流すとバスルームから出てバスタオルで擦り剥きそうなくらい拭く。
明るい部屋で改めて自分の躰を見下ろすと幾度も殴られ蹴られて見事にアザだらけだった。それでもクスリの影響か痛みは殆ど感じない。
幾ら繰り返しシャブを与えられたからといっても一晩で依存症になりはしない。あの快楽が忘れられずに堕ちて戻れなくなる者もいるのだろうが、京哉は行為そのものに溺れるタイプではなかった。
改めてこの自分が溺れるのは絶対的信頼を置く霧島が相手だからだと思う。
クローゼットの引き出しから下着と綿のシャツにジーンズを出して身に着けると、少しはマシな気分になった。意識せず咥えている煙草もそれなりに旨い。
だがこれもクスリの影響なのか、感覚が鋭敏で眠気の片鱗もなく食欲も湧かない。
仕方ないので冷蔵庫からウィスキーを持ち出してマグカップに注いだ。煙草を肴にちびちび飲み始める。クスリが抜けるまで飲んで寝てしまおうという作戦だ。
しかし半分くらい残っていたウィスキーを空にしても眠気はやってこなかった。
アルコールに弱いのは自覚しているので期待していたが甘かったようだ。
そこで近くのコンビニに出張って朝からウィスキー一本と缶ビールに缶チューハイを買い込む。固形物は煙草だけでカネを払い部屋に戻った。
再び飲み始めると今度はビール二缶で酔いの兆しが見えだす。すると気分がハイになるどころかバッドトリップでもしたのか嫌な記憶ばかりが蘇り始めた。
亡くなった母を見た時のことや初めて人をスナイプした時のことに、昨夜の己の痴態までがフラッシュバックの如く再現され、ビールが舌の上で苦い白濁に変わって、慌ててトイレに走って吐き戻すハメになる。
それでも携帯を弄りながら煙草を吸い、酒を飲んでは吐いた。繰り返す間も感覚は鋭敏なままで、音を消したTVの映像すら五月蠅く感じて点けていられない。
隣室は空き部屋なのに、その更に隣の話し声さえ耳について、怒鳴り出したくなっては自分を宥めるために飲む。
そんな風に一日半を過ごして夜と共にそれはやってきた。対象の分からない不安感と、これも対象不明な何かに対して切迫しているような落ち着かない気分である。
気分だけでなく実際じっとしていられず、部屋の中を歩き回りながら呟いた。
「うーん、クスリが効きすぎちゃってたのかなあ。んで切れかけてると」
正体不明の不安感でびっしょりと汗をかいていた。息を荒くしながらも歩き回るのをやめられない。汗が男たちから汚された記憶を蘇らせ、気持ち悪さに冷たいシャワーを何度も浴びた。
やがて食事もせず吐き続けたからか胃がキリキリ痛みだし、そのうち殴られ蹴られた痕や裂かれた粘膜まで痛み始めて幾らもせずに動けなくなる。
フローリングに這ったままベッドから毛布を引きずり下ろして躰に巻きつけた。芋虫のように床に転がり全身の痛みに耐える。
痛みを紛らわそうとアルコールにまた手を出したが、胃の痛みが急激に悪化してベッドに寝直すことすらできない。
その間も不安感がのしかかり、まるで心臓を握り潰されてでもいるようだった。
「ううう……勘弁してくれって」
呻いた声も声にならない。
胃袋が指先ほどの石ころみたいに縮んでしまった気がする。全身の汗が冷たい。そこでまた毛布に包まれ運び出される母親の姿がフラッシュバック。
あとは自分が殺してきた人間たちの血に塗れた顔。更に自分から立ち上る男たちの放った臭い。
殺す者は殺される。
もはや贖罪も叶わなくなった自分はこうして罰を受けているのだ。なるべく冷静に考えればこれで死ぬとは思えないが、こんな風に自分から死にたくなるような罰を受け続ける。罪も償わない者の宿命だろう、殺されないなら自身で自身を裁くのは。
そんな考えと痛みばかりが思考を占め続けて思わず呟く。
「つうっ……霧島警視……忍さん――」
遠くで何か聞こえた。それが繰り返されてやっとドアチャイムだと分かったが、とても玄関まで歩いて行けない。チャイムがノックに変わる。ロックが解かれた。
「京哉……京哉!」
「忍、さん……?」
何よりも安堵できる馴染んだ気配が駆け込んでくる。力強い右腕に抱き支えられた京哉はその温かさを感じた途端に意識を暗転させた。
◇◇◇◇
先日ここに呼んだ医師に直接電話して霧島は往診を頼んだ。
約十五分で迎えた医師は京哉を見るなり胃けいれんという診断を下して注射を一本射つ。胃薬を置いたロウテーブルの酒瓶と空き缶、それに吸い殻が山盛りになった灰皿を眺め、溜息をついただけで説教はせず呆れた風に頭を振りながら帰って行った。
取り敢えず胃けいれんは治まったらしく京哉は鈍く目を開けた。そこで霧島は持参してきた精神安定用の抗不安薬を水と一緒に自分で口に含み、京哉に口移しで流し込む。上手く飲み込んだようだが、その刺激で京哉ははっきりと目を覚ました。
「んっ……忍さん……つうっ!」
「どうした、何処が痛いんだ?」
「あ、いえ、何でも……何でもないですから」
「何でもない訳があるか、見せろ!」
必死で京哉はガードしたが、霧島が左手まで使って衣服を脱がせようとするに及んで、仕方なく自分で脱ぐハメになる。
約二日が経って打撲痕は派手に変色して霧島を絶句させた。京哉本人は『ただ快楽に狂っていた』と言ったが、全身のアザは抗い戦った証拠だった。
霧島は右手指でアザをひとつひとつ辿っては撫でる。
一方で大人しく撫でられる京哉の不安感は綺麗に消えて気分も悪くなかった。
医師の治療も効いただろうし治り時だったのかも知れない。霧島に飲ませて貰った薬も効いた筈だ。だが何よりも霧島が傍にいてくれる安心感が大きな効用をもたらしているのは明らかだった。
「すみません。『気を利かせろ』なんて格好つけておいて情けないです」
「お前がそれを情けないと言うのなら、私はどうすればいいんだ?」
「忍さんがどうかしたんですか?」
「京哉。私はお前が欲しくて我慢できずにここにきたんだぞ」
「えっ、あ……はあ、そうですか」
間の抜けた返事をして京哉は霧島をまじまじと見つめる。愛しい男は灰色の目に溢れ出しそうな情欲を湛えて見返していた。
だが京哉は霧島の腕の怪我が悪化するのが怖くて即座に頷いてやれない。それでも欲しくて堪らずやってきたという男の切羽詰まった表情と切ないような息づかいに触れたが最後、京哉は折れるしかないのだ。
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