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第5話(BL特有シーン・回避可)

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「だからって……ぅうん、んっ……あっふ!」

 鎖骨辺りに顔を埋めたシドに湯上がりの素肌を舐め上げられて、ハイファの文句が途端に鼻にかかった甘い声に変わる。
 唇を塞がれて口内をねぶりまわされるうちに、ハイファの思考に霧が掛かり始めた。僅かな酔いが心地良い眩暈をもたらす。

 体中を這い回る手に愛撫され、力ずくで押し倒された訳でもないのに自然とハイファの躰はシドを迎え入れるような形になっていた。膝を割ってのしかかる愛し人の背を掻き抱いている。

 シドの下腹に当たったものは既に勃ち上がって擦れ、甘く痛んでいた。だがその痛みもすぐに治まる。互いにぬめらせて滑りが良くなったのだ。

「――んっ、んんっ……はあっ」

 濃厚なキスから解放されて息がつけたと思えば着衣のまま覆い被さったシドと目が合う。ポーカーフェイスながら切れ長の目の色は真剣ハイファの鼓動が高まった。

「本当に、嫌か?」

 ここまでしておいて何て意地悪なんだろうとハイファは思う。着衣のシドと違ってこちらは躰の変化が丸見えなのだ。
 サドっ気のあるセリフを吐いたシドから顔を逸らし、唇を噛んだハイファにシドが更に耳許で囁いた。

「嫌ならやめるぜ? ここも、こっちもだ」
「あうんっ……や、ああん……やだ!」

 成長しきったものを掴まれ、胸の尖りを舐めしゃぶられて熱くなった躰が跳ねる。

「い、や……っん――」

 反応してしまう躰が恥ずかしく、せめて言葉だけでもハイファは抵抗してみせた。
 浅く速くなった呼吸を悟られまいと唇は噛んだまま長い髪を乱して首を振ると攻めが止まる。硬く瞑っていた目を開くと目の前二十センチくらいに黒い瞳があった。

「……怒ったか?」

 常日頃と変わらぬポーカーフェイスながら、その目には笑みが浮かんでいる。ハイファにだけ分かる笑みは優しく見返していた。
 だが僅かに悪戯っぽい色が混じるのをを見逃さない。からかわれていると分かりハイファは反応してしまった躰が酷く恥ずかしかった。

 それだけではない。余裕を見せつけられ、意のままにされる屈辱は耐え難く、ハイファは再び横を向いた。自分の頬が熱く紅潮しているのが分かる。
 だが首筋に舌を這わされるとハイファは非常な努力で腰が悶えるのを抑えねばならなかった。鎖骨を甘噛みされ、溜まる疼きに身を固くして堪える。

 そんなハイファの様子が酷く愛しく、シドは細い躰を確かめるように何度も手を這わせた。
 薄い肩を、鎖骨を、きつく吸い上げては自分の証しを穿ってゆく。

 そして指先で紅潮した頬から顎先を通って白い喉の隆起を辿った。ハイファはその指の感触に身を震わせる。

「なあ、怒ったのか?」
「……んっ……い、や……離してよ」

 指先ひとつで自由にできると思われるのは心外、ハイファはプライドを護ろうと横を向き続けた。試されるような真似をされ、誰より高いプライドを護ろうと必死だった。
 しかし躰は徐々にシドの指先に応え始めている。押し退けられぬでもない程度にしか重みはかけられていないが逃れられない。

 弱い処を知り尽くしたシドの愛撫は依存性のあるドラッグのようだ。甘く誘いを掛けるそれをもっと強く欲してハイファは身を捩る。

 抵抗ではなく淫らなことを口走ってしまいそうで、唇を噛んだ歯に力を込めた。

「そんなにしてると唇、血が出るぞ」

 片手で勃ち上がりきったものを扱かれ、片手の指でそっと口をこじ開けられると限界、ハイファは屈服する。全身の力を抜いた。
 覗き込んでいる端正な顔に憎らしさと愛しさが半々。口に入り込んだシドの指を含んで最後の抵抗とばかりに甘噛みする。
「……うっ……っく――」

 温かい粘膜で包まれた指先から電流が走ったように感じられシドは思わず呻いた。僅かな言葉と愛撫とで弄んだ細い躰は更に上気して色づき、見上げてくる若草色の瞳は潤んでいる。
 その様子は妖しいまでに美しく目が離せない危うさがあった。

 ハイファのプライドが誰より高いことをシドは知っている。そのハイファが堪えきれずに目に浮かべた明らかな情欲に、シドの男としての征服欲が燃え上がらない訳がない。

 起き上がると全ての衣服を脱ぎ捨て、象牙色の肌を晒して再び躰を重ねた。

 更なる仕返しとばかりに背中を爪でガリッと引っ掻かれ、シドはポーカーフェイスを歪める。それだけでハイファは何もかもを許し、思い切りシドに抱きついていた。

「シド……愛してる……っん」
「俺もだ……ハイファ、お前だけが俺をこんなにするんだぞ」

 互いに全身を擦り合わせ存分に肌の感触を味わう。白くきめ細かな肌と象牙色の滑らかな肌がしっとりと馴染んだ。馴れた感触がこの上ない安堵をもたらす。
 きつく腕に抱き締められると、ハイファの呼吸は一層浅く速くなった。もう誰も自分にこんな思いをさせることはできないのだ。

「お願い、シド……中に、欲しいよ」

 つい先程までの羞恥も忘れて口にしていた。早く体内に迎え入れたくて堪らない。
 ポーカーフェイスを微笑みで崩したシドはハイファの胸に口づけながら、互いの先端から溢れた蜜を指に絡めて脚の間から後ろを探る。
 探り当てたハイファのそこにそっと指を挿し入れた。何の抵抗もなく受け入れた次には寒気のような快感が襲う。

「あっ……あぅん……はぁんっ!」

 増えていく指は的確に敏感な処を嬲り、擦り上げる。ハイファを傷つけないようにいつも深爪して整えた指先に優しく掻かれて悲鳴にも似た喘ぎを洩らした。

「んんっ……そこ、いい……ああんっ!」

 細い腰を浮かせて乱れるハイファの姿態と甘い喘ぎにシドも堪らなくなる。だが傷つけてしまう訳にはいかない。
 慎重に指を増やしながらハイファが自分の数指を咥え込んでいる光景に暴発させてしまいそうな想いを抑えに抑えて馴らした。

 やがてハイファの体内から淫らな水音がし始めるとシドは全ての指を抜く。

「俺も、お前が欲しい……いいか?」

 夢中で頷くハイファに張り詰めきった自分のものをあてがった。馴らしたとはいえ自分がこんな処に受け入れられるのかと、いつも心配になる。
 しかしシドももう我慢は限界だった。なるべく負担をかけぬよう、呼吸に合わせて徐々に挿入する。

 そこは柔らかくもきつかった。
 引き裂きちぎってしまうのではないかという不安は絡み付き、もっともっととばかりに奥へと誘い込んでいるかのような反応の前に消えてなくなる。

 それでもハイファは目を瞑り、指とは比べものにならないものを受け入れて、苦しげな浅く早い呼吸を繰り返していた。

「大丈夫か、ハイファ?」
「んぅ……シド、すごい……でも、平気、だから」

 言葉を裏付けるように根元まで収めたシドをハイファは幾度か締めつけてみせた。きつくも温かいその居心地にシドの理性は一気に吹きとぶ。

 急激にこみ上げた愛しさと、どう猛なまでの情欲のままに奥まで突き上げる。掻き回しては引き抜き、突き入れ貫いてはハイファの体内を擦り上げた。

「んっ……あっ、あっ……はうんっ!」
「くっ、あ、まだきつい……もっと、もっとお前をくれ!」

 力強く腰を大きくスライドさせ続けるシドは、完全に白い躰にのめり込んでいた。激しい律動でハイファを容赦なく揺らす。乱れるハイファは全身でシドを感じているようだ。

 見開いた若草色の瞳は快感に溺れて何も映していない。

 ハイファは我が身を貫く熱い楔の存在だけに思考を奪われ、シドの背に回した手に力を込めて襲う快感に堪えていた。
 勝手に浮いた腰がうねる。激しく全身を揺らされながらもシドの律動に合わせて淫らに細い腰を前後させるのを止められない。

「ああっ……シド、すごい……気持ちいい、やあんっ!」
「ハイファ……俺も、メチャメチャ気持ちいい――」
「シド、もっともっと、僕を掻き回して!」
「……くっ、覚悟してろよ! 足腰立たなくなっても文句はなしだぜ」

 更にシドは腰のスライドを速くした。幾度も突き上げ、柔らかなハイファの体内を擦り上げる。腰が蕩けて混じり合ってしまうような快感を得て、ハイファはもう腰を揺らすのも限界、シドの攻めに全てを任せる。

「あぁん……シド、愛してる……はぅんっ!」
「俺も、ハイファ……まだだ、まだ良くしてやる」

 更に激しく攻められてハイファはもう言葉にならない喘ぎを絶え間なく洩らすのみだ。そんなハイファは長い金糸をシーツに乱し妖艶たる美しさで、シドは求められるままに何処までも快感を与えてやりたくなる。
 同時に月の女神の如き気高い身を汚してしまいたい思いが堪えがたく湧いていた。
 充血した粘膜を繰り返し擦っているうちに、ハイファが切れ切れに訴える。

「シド、シド……もう、だめ」
「だめだ、もう少し――」

 熱いハイファをシドはきつく握り込んだ。その間もハイファの中を掻き回すのは止めない。数度、腰の律動に合わせてハイファを扱く。そして先端を締めつけ握る。

 ベッドの軋みと二人のせわしなくも熱い吐息が寝室の温度さえ上げたような中、苦しげにハイファが悶えた。苦しげで色っぽい声を上げる。

「ああっ……シド、早く、お願い、いきたいよ!」
 途端に限界までシドが届き、堰き止められていたハイファも解放されていた。
「ああっ、はうん……シド、ああんっ!」
「……ハイファ……くっ!」

 脳内が白熱しスパークするような快感にハイファは気が遠くなる。幾度もシドに体内を濡らされながら、ハイファはシドの頬に掛かるほど勢い良く迸らせていた。

 何も考えられない刻を共有したのち、ハイファは羞恥に頬を染めながら呟いた。

「……ん、シド……ごめん」
「いや、苛めて悪かったな」

 乱れた金髪を撫でた愛し人はベッドから滑り降りるとキッチンの方へと消えて、戻ってきたときには水を湛えたグラスと湯気の立つタオルを手にしている。
 ハイファに口移しで水を飲ませ、熱いタオルで白い躰を丁寧に拭った。片や自分は雑に拭く。

 自力歩行どころか上体も起こせなくなったハイファはシドに衣服まで着せられた。

「シド、貴方も服くらい、ちゃんと着て」
「へいへい、分かりましたよっと」

 甲斐甲斐しく動き回り、やがてはやることもなくなるとシドはベッドに上がって潤んだ若草色の瞳にキスを落とし、目尻から零れそうだった雫を舐め取った。

「何か他に要るモンはねぇのか?」
「ううん、もう貴方の腕枕だけだよ」
「可愛いこと、言いやがる。前は小憎らしくて蹴り飛ばしてたのによ」

 いつも通り左腕で腕枕をしてやるとハイファは金髪頭をことんと落とし、シドの胸に寄り添って小さく欠伸を洩らす。
 長いさらさらの金髪を優しく指で梳きながらシドが胸の上に置かれたハイファのリモータを見るといつの間にか日付が変わっていた。

 自分の所業に苦笑しながら天井のライトパネルを常夜灯モードにし毛布を被せる。

「今日はハードだったしな。ご苦労さん」
「ふふん、最後のイヴェントが一番ハードだったよ」
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