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第57話
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「もう僕、ノルマの半分以上はこなしましたよ!」
「わしもそろそろ三分の二じゃ!」
「計算が合わないんじゃないのか?」
徐々に移動して屋敷の車寄せまで辿り着く。観音開きの大扉を背にして霧島とシェリフが撃っている間に、京哉が更にサブマシンガンを二丁拾ってくる。物騒だが便利なのか、その逆なのかと、どうでもいいことを考えつつ京哉は撃たれる前に車寄せに駆け込んだ。
サブマシンガンを受け取りながら霧島は玄関の観音開きの大扉を軽く蹴ってみる。
「この扉も蹴り開けたいんだがな」
「何となく気持ちは分かりますけど、これは大物すぎますよ。かなり分厚いですし」
何発かぶち込んだら穴は開いたものの、確か扉の内側の閂は鋼鉄製だった筈で、手持ちの火器で破壊するのは無理と判断せざるを得なかった。ここでこれ以上の時間を掛けるのは自殺行為でもある。
三人同時突入ができずリスキーだが脇の御用口を使うしかない。
シェリフがショットガンのチューブマガジンに八発フルロードする。その時間稼ぎをする間に霧島と京哉は五人ずつ倒し、外の敵は沈黙させた。積極的にサブマシンガンを鹵獲し使用する作戦は上手くいっている。
発射速度が速いのですぐに弾薬は尽きるが、狙いを付けた精密射撃をしなくても薙げば当たるので効率がいい。
シェリフのショットガンもリロードが済むと霧島と京哉も熱いシグをフルロードにしてから、これも落ちていたサブマシンガンのマガジンの弾薬を拝借し、手持ちのサブマシンガンをフルロードにする。そしていよいよ突入だ。
京哉とシェリフが後方警戒、霧島は御用口の蝶番をフルオートで吹き飛ばす。
「行くぞ!」
扉を霧島が蹴り開け三人は屋敷内に飛び込むなり三百六十度、四方に一斉に弾をバラ撒いた。
隠れる所などありはしない。三人共に背中を預け合い霧島と京哉はフルオートで、シェリフは速射で取り囲む敵が撃つ前に薙ぎ倒すのみだ。急所を狙うヒマもなく四十五口径という大口径のマン・ストッピング・パワーにものを言わせる。
まさに命を懸けたガチンコの殴り合い、僅かでも怖じて退けば終わりだ。
瞬く間に霧島と京哉のサブマシンガンがホールドオープンする。投げ捨てる前に自前のシグ・ザウエルP226を撃ち出していた。
次にシェリフが八発を撃ち尽くす。だが六発しか入らないリボルバでは戦力にならないのは明らかで、ショットガンにリロードするしかない。芸術的とも思える手つきで素早くケースを装填、囲む敵に撃ち始める。
シェリフをカバーし身長差から上下のダブルガン状態だった二人は階段の敵にも撃ちまくった。二十九発を撃った京哉がチャンバに一発残してマグチェンジ。二本目のロングマガジンをシグに叩き込んだ。
ここで惜しんで殺られたら元も子もない。
五十人以上いたと思われる敵は、たった三人ながら隙の無いフォーメーションと確実な腕で繰り出される速射に対して精確な照準ができず、トリガすら引けずに糸の切れた操り人形の如くバタバタとその場に斃れていく。
たちまち死体の山が築かれた。だがその分、包囲網がやや広がって広範囲を狙わなければならなくなる。
次に霧島がマグチェンジした。こちらは既にロングマガジンを空にし通常マガジンである。九パラの残りが心許ないのとシグのヒートアップによる作動不良を懸念した霧島は、撃ちながらもタイミングを計った。
ごく僅かな隙を突いて足元に転がっていた敵のセミオート四十五口径を素早く拾う。同時に持ち慣れた九ミリを左手へ。
何処の国でもマフィアはフルサイズで大口径銃を振り回したがるものなのか、辺りには四十五口径が割と多く転がっている。反動がデカくて当てづらいが、何せ敵との相対距離は広がってもたったの数メートル、霧島にはこれで外す方が難しい。
それに九パラは貫通力が高いので、これだけ近いと却ってマン・ストッピングパワーのある四十五口径が有利だ。
なるべく九パラを温存しようと決め、右で四十五口径を保持して更に撃ちまくる。温存と言っても後生大事に取っておく訳ではなく、シグも使って両手撃ちだ。
積極的に狙うのは発射速度の速いサブマシンガン、京哉も脅威であるサブマシンガンの敵を積極的に潰している。それらの隙間から撃つ奴にはシェリフが散弾にものを言わせた。
息を詰めての超接近銃撃戦で、辺りは硝煙が立ちこめ視界が非常に悪くなる――。
ふと気付けば立っている敵は僅か五、六人だった。その敵も傷つき戦意喪失して手を挙げている。
圧倒的に不利ながらもこの場を制したのは信頼して背を預けられる仲間として集った、暴力を正義などとは決して認めないプライドを持つ三人だった。
けれど三人はまだ警戒を解いていない。屋敷は広く何処に敵が潜んで背後から狙ってくるか分からないのだ。それぞれに廊下の右をシェリフ、大階段を霧島、廊下左を京哉が担当し気配を探る。
しかし散発的に飛び出してくる敵を撃つのは案外造作もなかった。誰もが既に人数的にも壊滅に近いと知り怯えているか自棄だったからだ。
二人を撃ち倒して再び気配を探り、一段落ついたと判断して京哉が首を傾げた。
「で、どうするんです?」
「二階のハイラム=レアードだろう」
「正統なカチコミの作法として、本丸を落とすんですね」
ところがそう簡単にはいかなかった。階段の踊り場から震える大声が響いたのだ。
「う、う、動くな!」
見上げると男がグレネードランチャーをこちらに向けていた。三人に退路はない。
「じゅ、銃を捨てろ! 手を挙げてこっちへ来い!」
脅している男自身が竦んでしまっているのが余計に拙かった。何かの拍子にトリガを引きかねない。だが三人もここで銃を捨てる訳にはいかず数秒の膠着状態が続く。
そのたった数秒が永遠にも感じられた時、いきなり背後で爆発的な音がして今度こそは三人もビビった。
観音開きの大扉が外から破られ、人という人がなだれ込んできたのだ。
マイルズがいる。ネッドもいる。街人の援軍だった。
「わしもそろそろ三分の二じゃ!」
「計算が合わないんじゃないのか?」
徐々に移動して屋敷の車寄せまで辿り着く。観音開きの大扉を背にして霧島とシェリフが撃っている間に、京哉が更にサブマシンガンを二丁拾ってくる。物騒だが便利なのか、その逆なのかと、どうでもいいことを考えつつ京哉は撃たれる前に車寄せに駆け込んだ。
サブマシンガンを受け取りながら霧島は玄関の観音開きの大扉を軽く蹴ってみる。
「この扉も蹴り開けたいんだがな」
「何となく気持ちは分かりますけど、これは大物すぎますよ。かなり分厚いですし」
何発かぶち込んだら穴は開いたものの、確か扉の内側の閂は鋼鉄製だった筈で、手持ちの火器で破壊するのは無理と判断せざるを得なかった。ここでこれ以上の時間を掛けるのは自殺行為でもある。
三人同時突入ができずリスキーだが脇の御用口を使うしかない。
シェリフがショットガンのチューブマガジンに八発フルロードする。その時間稼ぎをする間に霧島と京哉は五人ずつ倒し、外の敵は沈黙させた。積極的にサブマシンガンを鹵獲し使用する作戦は上手くいっている。
発射速度が速いのですぐに弾薬は尽きるが、狙いを付けた精密射撃をしなくても薙げば当たるので効率がいい。
シェリフのショットガンもリロードが済むと霧島と京哉も熱いシグをフルロードにしてから、これも落ちていたサブマシンガンのマガジンの弾薬を拝借し、手持ちのサブマシンガンをフルロードにする。そしていよいよ突入だ。
京哉とシェリフが後方警戒、霧島は御用口の蝶番をフルオートで吹き飛ばす。
「行くぞ!」
扉を霧島が蹴り開け三人は屋敷内に飛び込むなり三百六十度、四方に一斉に弾をバラ撒いた。
隠れる所などありはしない。三人共に背中を預け合い霧島と京哉はフルオートで、シェリフは速射で取り囲む敵が撃つ前に薙ぎ倒すのみだ。急所を狙うヒマもなく四十五口径という大口径のマン・ストッピング・パワーにものを言わせる。
まさに命を懸けたガチンコの殴り合い、僅かでも怖じて退けば終わりだ。
瞬く間に霧島と京哉のサブマシンガンがホールドオープンする。投げ捨てる前に自前のシグ・ザウエルP226を撃ち出していた。
次にシェリフが八発を撃ち尽くす。だが六発しか入らないリボルバでは戦力にならないのは明らかで、ショットガンにリロードするしかない。芸術的とも思える手つきで素早くケースを装填、囲む敵に撃ち始める。
シェリフをカバーし身長差から上下のダブルガン状態だった二人は階段の敵にも撃ちまくった。二十九発を撃った京哉がチャンバに一発残してマグチェンジ。二本目のロングマガジンをシグに叩き込んだ。
ここで惜しんで殺られたら元も子もない。
五十人以上いたと思われる敵は、たった三人ながら隙の無いフォーメーションと確実な腕で繰り出される速射に対して精確な照準ができず、トリガすら引けずに糸の切れた操り人形の如くバタバタとその場に斃れていく。
たちまち死体の山が築かれた。だがその分、包囲網がやや広がって広範囲を狙わなければならなくなる。
次に霧島がマグチェンジした。こちらは既にロングマガジンを空にし通常マガジンである。九パラの残りが心許ないのとシグのヒートアップによる作動不良を懸念した霧島は、撃ちながらもタイミングを計った。
ごく僅かな隙を突いて足元に転がっていた敵のセミオート四十五口径を素早く拾う。同時に持ち慣れた九ミリを左手へ。
何処の国でもマフィアはフルサイズで大口径銃を振り回したがるものなのか、辺りには四十五口径が割と多く転がっている。反動がデカくて当てづらいが、何せ敵との相対距離は広がってもたったの数メートル、霧島にはこれで外す方が難しい。
それに九パラは貫通力が高いので、これだけ近いと却ってマン・ストッピングパワーのある四十五口径が有利だ。
なるべく九パラを温存しようと決め、右で四十五口径を保持して更に撃ちまくる。温存と言っても後生大事に取っておく訳ではなく、シグも使って両手撃ちだ。
積極的に狙うのは発射速度の速いサブマシンガン、京哉も脅威であるサブマシンガンの敵を積極的に潰している。それらの隙間から撃つ奴にはシェリフが散弾にものを言わせた。
息を詰めての超接近銃撃戦で、辺りは硝煙が立ちこめ視界が非常に悪くなる――。
ふと気付けば立っている敵は僅か五、六人だった。その敵も傷つき戦意喪失して手を挙げている。
圧倒的に不利ながらもこの場を制したのは信頼して背を預けられる仲間として集った、暴力を正義などとは決して認めないプライドを持つ三人だった。
けれど三人はまだ警戒を解いていない。屋敷は広く何処に敵が潜んで背後から狙ってくるか分からないのだ。それぞれに廊下の右をシェリフ、大階段を霧島、廊下左を京哉が担当し気配を探る。
しかし散発的に飛び出してくる敵を撃つのは案外造作もなかった。誰もが既に人数的にも壊滅に近いと知り怯えているか自棄だったからだ。
二人を撃ち倒して再び気配を探り、一段落ついたと判断して京哉が首を傾げた。
「で、どうするんです?」
「二階のハイラム=レアードだろう」
「正統なカチコミの作法として、本丸を落とすんですね」
ところがそう簡単にはいかなかった。階段の踊り場から震える大声が響いたのだ。
「う、う、動くな!」
見上げると男がグレネードランチャーをこちらに向けていた。三人に退路はない。
「じゅ、銃を捨てろ! 手を挙げてこっちへ来い!」
脅している男自身が竦んでしまっているのが余計に拙かった。何かの拍子にトリガを引きかねない。だが三人もここで銃を捨てる訳にはいかず数秒の膠着状態が続く。
そのたった数秒が永遠にも感じられた時、いきなり背後で爆発的な音がして今度こそは三人もビビった。
観音開きの大扉が外から破られ、人という人がなだれ込んできたのだ。
マイルズがいる。ネッドもいる。街人の援軍だった。
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