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第一章 聖女転生
第34話 孤児院の現状
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キモいクビディタス司祭との細かい話を終えて、中で働く修道女のおばちゃん達と話をする。やはりおばちゃんたちも忖度しているのか端切れの悪さを感じる。
「子供達は元気ですか? 病気とかはしていませんか?」
「聖女様のおかげで皆が健康です」
「そうですか。ところで今日は子供達にプレゼントを持ってきたのですが、お渡ししてもよろしいでしょうか?」
「プレゼント?」
「そうです」
「ええ、もちろんでございます!」
俺がそう言うと、御者が馬車の後ろにつけていたトランクを外して運んできた。俺がしゃがんでそのトランクを開けると、中には小さなクマのぬいぐるみがたくさん入っていた。
「わぁ!」
「かわいい!」
「お人形さんだ!」
そう言って子供達は喜んでいた。さっきまで少し距離間のあった子供達が一気に沸き立つ。するとスティーリアが子供達に言った。
「聖女様がみんなの為に、熊さんのぬいぐるみを持ってきたのよ。ちゃんと人数分あるから並んで頂戴!」
すると修道女達が驚いて言う。
「こんな贅沢なものをよろしいのですか!」
俺がニッコリ笑って答えた。
「もちろんです。だって親が居れば、このくらい買ってもらえる事もあるのです。ただご飯を食べて、本当にたまにお菓子を食べるだけなんてつまらないでしょう?」
「あ、ありがとうございます! なんとお礼を申し上げて良いのやら」
「いいのです。つい最近、お隣の国と戦った時に功績をあげたものですから、王宮からの給金が上がったのですよ」
「それは聞き及んでおります! ですがそれは聖女様が命がけで…」
俺は修道女の言葉を制して言った。
「当たり前の事をして帰って来ただけなのです。それにこの度、聖女支援財団なんていうものが作られましてね。まあそのお金は、一旦戦後処理に充てられる事になりましたが」
俺がそう言うと、クビディタスの目がきらりと光った。
「そ、それには私も寄付をいたしました! 是非お役に立てていただければと思いまして」
「そうですか」
俺が答えたのはそれだけだった。
金、余ってんだから全額寄付しろ! キモイ!
「は、はは。とにかくお役に立つようでしたら嬉しいですな」
「はい」
そして俺は子供達に向き直って言う。
「このぬいぐるみは私が加護を与えました。一人に一つずつですので、誰にもあげないで肌身離さず持っている事! お約束です! 守れますか?」
すると子供達は手を上げて返事をした。
「「「「「「はーい!」」」」」」
そして俺はスティーリアに目配せをしてから、クビディタスに向かっていう。
「さてそろそろ…」
帰る素振りをする。
「いや! 聖女様! せっかくいらしたのですから、今日こそはお茶でもして行ってはいかがですかな!」
キタ。やっぱりそう来ると思った! いつもなら冷たくあしらって断るのだが…
「そうですね。時にはそれもよろしいかもしれませんね」
「はっ? えっ? そうですか! そうですか! ではぜひ応接の間へ!」
「そうしましょう。それではスティーリアはこちらで子供達の相手を」
「はい」
そして俺は修道女達にも言った。
「ここはスティーリアが面倒を見ましょう、出来ましたら一緒に同席していただけます?」
「わ、私達がですか!」
「そうです」
するとクビディタスが小さく舌打ちをした後で言う。
「聖女様。彼女らは仕事がございまして」
「あら、そうですか…。それでは私はここで」
「待ってください! そうですね! お前達も是非同席しておくれ!」
「「「「「は、はい!」」」」」
良し。これで子供達とスティーリアだけにすることができた。俺はクビディタスと修道女達と共に、応接室へと向かうのだった。去り際にもう一度スティーリアに目配せをする。
「いや、どう言った風の吹き回しですかな? お茶を一緒にとるなど珍しい!」
クビディタスが俺に言って来る。
「どうもこうも、今日はたまたまお時間が空いただけです。いつもいつも断っていては、失礼にあたるかと思いましてね」
そんな事を言いながらも俺はゲロが出そうになる。コイツと同じ空間にいて平気でいられる人間なんているはずがない。キモゲロデブの顔を見るだけで気を失いそうになる。
「そうですか! それは良かった」
そしてテーブルを囲むように、修道女達も座った。すると使用人がお茶とお茶請けを運んできて、テーブルに並べていく。
「どうですか? 子供達は何事も無く?」
「そうですな。先ほども言いましたが聖女様のおかげで病気も無く、すくすくと育っております」
「それは良かった。この孤児院を卒業した子達も元気ですか?」
すると全くためらうことなくクビディタスが答える。
「もちろんです! ここで大人になった者達は、各方面で活躍させていただいていますよ」
「なるほど。主な勤め先はどんなところです?」
すると少しだけ間が開いて、クビディタスが答えた。
「ほとんどが冒険者や、夜のお仕事に就くことが多いですかな。どうしても施設の出となると、働き先が決まっていましてな」
「というと、雇い主側があまりいないと言う事でしょうか?」
「まあそんなところです。まともな学校に通っているわけでは無いですからな! うちとしてもギリギリの資金繰りでやっているので、なかなか学校に通わせるまではいかないのです」
嘘つけ。めっちゃ金余ってるだろ。そして子供達に仕事させているって聞くぞ! まあ俺も噂と、うちの従業員からの情報でしかないから定かではないがな。そしてうっすらと公爵令嬢のソフィアからも聞いてるんだ。彼女はめっちゃ真面目で、悪い事が大っ嫌いだからそういう事にも目ざといんだよ!
「そうですか。出来れば学校に通わせてやりたいものです。彼らの意思はどんな感じでしょうかね?」
「学校など考えておらんでしょうし、はなから諦めている者ばかりです。やはり捨てられた子や親無し子など大抵はそんなものですよ。志など無く自分の身の丈を良く知っているのです」
ちゃんと皆に希望なんか聞いてねえだろ。どうせ自分の利になるようにするだけだろうからな。まあ人身売買するよりかはましだが、そんな奴隷商や盗賊のような事は出来るはずもないだろうし。お前は法ぎりぎりの所で、子供達を利用してるんだろうよ。
「そうですか。そもそも何処の孤児院も一緒なのでしょうかね?」
「まあそうでしょうな!」
いやいや…。同じ孤児院経営しているモデストスは、少なくともお前よりは真剣に子供達の進路を考えているぞ。あっちの孤児院の方が貧乏で、恵まれていないが卒業してからは自由に生きている。まあ別にモデストス司祭を贔屓しているわけではないが、あの男の方がお前よりはだいぶマシだ。
俺個人としては真面目なおっさんのモデストスも嫌いだけど。
「わかりました。それでは私はそろそろ」
俺が立ち上がると、クビディタスが慌てて制止した。
「まだよろしいのでは! お茶にもお茶菓子にもお手を付けておられないようです」
「時間がありません。申し訳ありませんが」
もう同じ空気を吸ってるのが限界なんだよ! 察しろよ!
「わ、わかりました! それでは皆! 聖女様を送って差し上げなさい!」
「「「「はい!」」」」
俺は修道女達に連れられて、子供達とスティーリアの所に戻って来る。そして俺はスティーリアに頼んでいたことが、滞りなく終わったか聞いた。
「スティーリア。どうでしょう?」
「はい。無事に」
「それは良かった。それでは次の視察に向かいます」
「はい」
そして俺達が門の方に向かって歩いて行くと、クビディタスがふうふうと息を切らしながら走ってくる。そしてなにか封筒のような物を差し出して来た。
「聖女様。何卒これを!」
俺はそれを受け取らずに、クビディタスに聞いた。
「それはなんです?」
「せめてものお心遣いです! いつもいつも子供達の為だけに来てくださっているので、せめてものお礼を」
「…あの。もしよろしければ、そのお金を子供達の本を買うための資金にして下さい」
するとクビディタスはキョトンとした顔で言った。そしてもっとグイっと封筒を差し出して来た。
「受け取ってくださるとうれしいのですが」
「私は子供達が本を読んで喜んでいるのが見たい。次の視察までに数冊の本が本棚に並ぶ事を期待していますよ」
すると汗をふきふきクビディタスが言う。
「わ、わかりました! その様に致します!」
「よろしくお願いします」
そして俺とスティーリアが乗った馬車は、クビディタスの孤児院を出発するのだった。
「子供達は元気ですか? 病気とかはしていませんか?」
「聖女様のおかげで皆が健康です」
「そうですか。ところで今日は子供達にプレゼントを持ってきたのですが、お渡ししてもよろしいでしょうか?」
「プレゼント?」
「そうです」
「ええ、もちろんでございます!」
俺がそう言うと、御者が馬車の後ろにつけていたトランクを外して運んできた。俺がしゃがんでそのトランクを開けると、中には小さなクマのぬいぐるみがたくさん入っていた。
「わぁ!」
「かわいい!」
「お人形さんだ!」
そう言って子供達は喜んでいた。さっきまで少し距離間のあった子供達が一気に沸き立つ。するとスティーリアが子供達に言った。
「聖女様がみんなの為に、熊さんのぬいぐるみを持ってきたのよ。ちゃんと人数分あるから並んで頂戴!」
すると修道女達が驚いて言う。
「こんな贅沢なものをよろしいのですか!」
俺がニッコリ笑って答えた。
「もちろんです。だって親が居れば、このくらい買ってもらえる事もあるのです。ただご飯を食べて、本当にたまにお菓子を食べるだけなんてつまらないでしょう?」
「あ、ありがとうございます! なんとお礼を申し上げて良いのやら」
「いいのです。つい最近、お隣の国と戦った時に功績をあげたものですから、王宮からの給金が上がったのですよ」
「それは聞き及んでおります! ですがそれは聖女様が命がけで…」
俺は修道女の言葉を制して言った。
「当たり前の事をして帰って来ただけなのです。それにこの度、聖女支援財団なんていうものが作られましてね。まあそのお金は、一旦戦後処理に充てられる事になりましたが」
俺がそう言うと、クビディタスの目がきらりと光った。
「そ、それには私も寄付をいたしました! 是非お役に立てていただければと思いまして」
「そうですか」
俺が答えたのはそれだけだった。
金、余ってんだから全額寄付しろ! キモイ!
「は、はは。とにかくお役に立つようでしたら嬉しいですな」
「はい」
そして俺は子供達に向き直って言う。
「このぬいぐるみは私が加護を与えました。一人に一つずつですので、誰にもあげないで肌身離さず持っている事! お約束です! 守れますか?」
すると子供達は手を上げて返事をした。
「「「「「「はーい!」」」」」」
そして俺はスティーリアに目配せをしてから、クビディタスに向かっていう。
「さてそろそろ…」
帰る素振りをする。
「いや! 聖女様! せっかくいらしたのですから、今日こそはお茶でもして行ってはいかがですかな!」
キタ。やっぱりそう来ると思った! いつもなら冷たくあしらって断るのだが…
「そうですね。時にはそれもよろしいかもしれませんね」
「はっ? えっ? そうですか! そうですか! ではぜひ応接の間へ!」
「そうしましょう。それではスティーリアはこちらで子供達の相手を」
「はい」
そして俺は修道女達にも言った。
「ここはスティーリアが面倒を見ましょう、出来ましたら一緒に同席していただけます?」
「わ、私達がですか!」
「そうです」
するとクビディタスが小さく舌打ちをした後で言う。
「聖女様。彼女らは仕事がございまして」
「あら、そうですか…。それでは私はここで」
「待ってください! そうですね! お前達も是非同席しておくれ!」
「「「「「は、はい!」」」」」
良し。これで子供達とスティーリアだけにすることができた。俺はクビディタスと修道女達と共に、応接室へと向かうのだった。去り際にもう一度スティーリアに目配せをする。
「いや、どう言った風の吹き回しですかな? お茶を一緒にとるなど珍しい!」
クビディタスが俺に言って来る。
「どうもこうも、今日はたまたまお時間が空いただけです。いつもいつも断っていては、失礼にあたるかと思いましてね」
そんな事を言いながらも俺はゲロが出そうになる。コイツと同じ空間にいて平気でいられる人間なんているはずがない。キモゲロデブの顔を見るだけで気を失いそうになる。
「そうですか! それは良かった」
そしてテーブルを囲むように、修道女達も座った。すると使用人がお茶とお茶請けを運んできて、テーブルに並べていく。
「どうですか? 子供達は何事も無く?」
「そうですな。先ほども言いましたが聖女様のおかげで病気も無く、すくすくと育っております」
「それは良かった。この孤児院を卒業した子達も元気ですか?」
すると全くためらうことなくクビディタスが答える。
「もちろんです! ここで大人になった者達は、各方面で活躍させていただいていますよ」
「なるほど。主な勤め先はどんなところです?」
すると少しだけ間が開いて、クビディタスが答えた。
「ほとんどが冒険者や、夜のお仕事に就くことが多いですかな。どうしても施設の出となると、働き先が決まっていましてな」
「というと、雇い主側があまりいないと言う事でしょうか?」
「まあそんなところです。まともな学校に通っているわけでは無いですからな! うちとしてもギリギリの資金繰りでやっているので、なかなか学校に通わせるまではいかないのです」
嘘つけ。めっちゃ金余ってるだろ。そして子供達に仕事させているって聞くぞ! まあ俺も噂と、うちの従業員からの情報でしかないから定かではないがな。そしてうっすらと公爵令嬢のソフィアからも聞いてるんだ。彼女はめっちゃ真面目で、悪い事が大っ嫌いだからそういう事にも目ざといんだよ!
「そうですか。出来れば学校に通わせてやりたいものです。彼らの意思はどんな感じでしょうかね?」
「学校など考えておらんでしょうし、はなから諦めている者ばかりです。やはり捨てられた子や親無し子など大抵はそんなものですよ。志など無く自分の身の丈を良く知っているのです」
ちゃんと皆に希望なんか聞いてねえだろ。どうせ自分の利になるようにするだけだろうからな。まあ人身売買するよりかはましだが、そんな奴隷商や盗賊のような事は出来るはずもないだろうし。お前は法ぎりぎりの所で、子供達を利用してるんだろうよ。
「そうですか。そもそも何処の孤児院も一緒なのでしょうかね?」
「まあそうでしょうな!」
いやいや…。同じ孤児院経営しているモデストスは、少なくともお前よりは真剣に子供達の進路を考えているぞ。あっちの孤児院の方が貧乏で、恵まれていないが卒業してからは自由に生きている。まあ別にモデストス司祭を贔屓しているわけではないが、あの男の方がお前よりはだいぶマシだ。
俺個人としては真面目なおっさんのモデストスも嫌いだけど。
「わかりました。それでは私はそろそろ」
俺が立ち上がると、クビディタスが慌てて制止した。
「まだよろしいのでは! お茶にもお茶菓子にもお手を付けておられないようです」
「時間がありません。申し訳ありませんが」
もう同じ空気を吸ってるのが限界なんだよ! 察しろよ!
「わ、わかりました! それでは皆! 聖女様を送って差し上げなさい!」
「「「「はい!」」」」
俺は修道女達に連れられて、子供達とスティーリアの所に戻って来る。そして俺はスティーリアに頼んでいたことが、滞りなく終わったか聞いた。
「スティーリア。どうでしょう?」
「はい。無事に」
「それは良かった。それでは次の視察に向かいます」
「はい」
そして俺達が門の方に向かって歩いて行くと、クビディタスがふうふうと息を切らしながら走ってくる。そしてなにか封筒のような物を差し出して来た。
「聖女様。何卒これを!」
俺はそれを受け取らずに、クビディタスに聞いた。
「それはなんです?」
「せめてものお心遣いです! いつもいつも子供達の為だけに来てくださっているので、せめてものお礼を」
「…あの。もしよろしければ、そのお金を子供達の本を買うための資金にして下さい」
するとクビディタスはキョトンとした顔で言った。そしてもっとグイっと封筒を差し出して来た。
「受け取ってくださるとうれしいのですが」
「私は子供達が本を読んで喜んでいるのが見たい。次の視察までに数冊の本が本棚に並ぶ事を期待していますよ」
すると汗をふきふきクビディタスが言う。
「わ、わかりました! その様に致します!」
「よろしくお願いします」
そして俺とスティーリアが乗った馬車は、クビディタスの孤児院を出発するのだった。
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